デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

カルシニューリン阻害外用薬でリンパ腫リスクがわずかに上昇

 カルシニューリン阻害外用薬(TCI)の発がんリスクを系統的レビューとメタ解析で検討。TCI(タクロリムスやpimecrolimusなど)と発がんの関連性を非活性対照薬(nonactive comparator control)または外用コルチコステロイド対照薬と比較した観察研究11件のデータを対象とした。

 その結果、非活性対照薬との比較でTCIとがん全体との関連性は見られなかった(相対リスク1.03、95%CI 0.92-1.16)。リンパ腫では、非活性対照薬との比較(同1.86、1.39-2.49)および外用コルチコステロイド対照薬との比較(同1.35、1.13-1.61)でTCI使用と発症リスクの上昇が見られた。黒色腫および角化細胞がんでは、TCIと発症リスクに有意な関連性は見られなかった。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

新薬4製品を審議、承認了承 JAK阻害薬リンヴォックの乾癬適応など 薬食審・第二部会

 厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は4月21日、新薬4製品の承認可否を審議し、いずれも承認することを了承した。この中には、JAK阻害薬オルミエント錠(一般名:バリシチニブ)に中等症以上の新型コロナウイルスによる肺炎の適応を追加すること(21日夜に既報。記事はこちら)や、JAK阻害薬リンヴォック錠(ウパダシチニブ水和物)の関節症性乾癬の適応追加が含まれる。リンヴォックは乾癬の適応を持つ初のJAK阻害薬となる。


▽リンヴォック錠7.5mg、同15mg(ウパダシチニブ水和物、アッヴィ):「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余期間(令和10年1月22日まで)。

 JAK阻害薬で、JAKファミリー(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)のうち、主にJAK1を阻害する。JAK阻害薬として初の乾癬の適応を持つ薬剤となる。「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」の効能・効果に対する新規作用機序の低分子化合物として、初の経口治療薬となる。海外では関節症性乾癬に対して、21年1月に欧州で承認された。

▽オルミエント錠2mg、同錠4mg(バリシチニブ、日本イーライリリー):「SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余期間(令和7年7月2日まで)。

 選択的JAK1及びJAK2阻害薬。JAK依存性サイトカインは多くの炎症性及び自己免疫疾患の病因と関連していることが示唆されており、JAK阻害の作用により効果を発揮すると考えられている。現在は既存治療で効果不十分な関節リウマチやアトピー性皮膚炎を適応としている。

 新型コロナによる肺炎の用法・用量は、「通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、継続投与期間は14日間までとする」となった。経口投与できない患者に対しては、同剤を粉砕・懸濁して、胃瘻や経鼻移管などで使用する。

 海外では21年2月時点で、SARS-CoV-2による感染症に係る効能・効果で承認されていないが、20年11月19日に米国で緊急使用許可を得ている。

 

コメント:

実際リンヴォックがPsAに処方できるようになるのは、5月末~6月のようです。

処方制限も5/1に解除されるので、最初から長期処方が可能ですね。

 

オルミエント、SARS-CoV-2による肺炎に対する適応追加が承認

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www.chemicaldaily.co.jp

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審議から1週間足らずで承認とは、思ったよりも早かったですね。

 

中和抗体カクテル療法で症候性COVID-19発症リスクが81%減/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は4月12日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染者との家庭内での濃厚接触者を対象に、中和抗体カクテル療法によるCOVID-19発症リスクおよび負担軽減を評価した第III相臨床試験(REGN-COV 2069試験)において、良好な結果を確認したと発表した。casirivimabとimdevimabの皮下投与により、試験開始時に感染していなかった人の症候性感染の発症リスクが81%減少したことが示されたという。

 REGN-COV 2069試験は、SARS-CoV-2感染者との家庭内における濃厚接触者への症候性感染予防を目的に、casirivimabおよびimdevimabの有効性と安全性を評価する複数コホートからなる二重盲検ランダム化プラセボ対照試験で、ロシュ社が米国・国立アレルギー・感染症研究所と共同で実施したもの(日本は不参加)。過去4日以内にSARS-CoV-2陽性と判定された人と同居し、ベースラインでSARS-CoV-2に感染しておらず、casirivimab+imdevimab(1,200mg)またはプラセボを単回皮下投与した1,505例が対象。主要評価項目は、29日間の評価期間におけるSARS-CoV-2の症候性感染が生じた人の割合とした。その結果、casirivimab+imdevimab群において症候性感染の発症リスクがプラセボ群に比べ81%減少(p<0.0001)したことが示された。

 本試験ではさらに、新規感染の無症候性患者204例について、casirivimab+imdevimab(1,200mgの単回皮下投与)またはプラセボに無作為に割り付け、抗体カクテル療法を評価した。その結果、casirivimabとimdevimabは、症候性COVID-19に進行するリスクを全体で31%減少させた。

 また、casirivimabとimdevimabによる治療を受けたものの症候性COVID-19感染を発症した人では、平均1週間以内に症状が消失したのに対し、プラセボ群では症状が消失するまでに3週間を要した。新たな、あるいは重大な安全性シグナルは認められなかった。

 casirivimabとimdevimabによる抗体カクテル療法の国内開発は、中外製薬が実施している。

 

MSD 経口投与の軽症新型コロナ治療薬MK-4482 4月中に日本含む第3相試験開始

MSD日本法人は4月20日に開いた年次会見で、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症治療薬として開発中の経口抗ウイルス薬・MK-4482(開発コード、一般名:molnupiravir)について、4月中に日本を含む国際共同第3相試験を開始すると発表した。同社の白沢博満・上級副社長(グローバル研究開発本部長)は会見で、前期第2相試験結果について、「非常に限られた症例数の探索的試験のため、結論を導くのに注意が必要」と強調した上で、「5日間の投与で感染性のあるウイルスは100%消失した」と説明した。第3相試験の最終データは今年9~10月に得られる見込み。良好なデータが得られた場合、各国の規制当局と相談の上、承認申請する。

MSDの親会社の米メルクが米国で実施した多施設共同前期第2相試験の中間結果を発表している。入院していない成人患者202例にMK-4482またはプラセボを投与し、安全性、忍容性、ウイルスを排除する効果について検討した。鼻咽頭または口咽頭スワブにより採取したSARS-CoV-2をPCR検査により解析した。その結果、MK-4482投与群の投与5日目のウイルス培養陽性率は0%(47例中、陽性0例)、プラセボ群の同陽性率は24%(25例中、陽性6例)だった(P=0.001)。

MK-4482は経口投与可能なリボヌクレオシドアナログ。新型コロナウイルス感染症を引き起こすSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)など様々なRNAウイルスの複製を阻害するという。

上沢上級副社長によると、すでに多くの政府からMK-4482の引き合いがある状態で、開発動向を踏まえつつ、同時並行で生産体制も整備していく方針を示した。国内生産するかどうかについては「製造所は開示していない」と述べた。

新規経口抗ウイルス薬MK-4482、ハムスターモデルで検証

 新型コロナウイルスSARS-CoV-2)感染の予防および治療に新規経口抗ウイルス薬が有効な可能性が、米国立衛生研究所(NIH)の研究グループによる研究から示唆されている。新型コロナウイルスSARS-CoV-2)感染ハムスターモデルで、開発中の抗ウイルス薬MK-4482をSARS-CoV-2感染12時間前または感染から12時間後までに投与することによって、肺組織中のウイルス量と肺病変が有意に減少したという。この結果は、「Nature Communications」4月16日オンライン版に発表された。

 今回の試験では、ハムスターモデルをSARS-CoV-2曝露前、曝露後の治療群と未治療の対照群の3群に分けてMK-4482の有効性を比較した。治療群にはいずれもMK-4482を12時間ごとに3日間経口投与した。その結果、両治療群では、対照群に比べて肺組織中に検出されるウイルス量が100分の1へと有意に減少し、肺病変も有意に少なかった。

 MK-4482の投与量は、SARS-CoV-1感染およびMERS-CoV感染マウスモデルを用いた過去の研究に基づいて決定した。なお、この研究では、MK-4482によるウイルス複製阻止効果が認められた。単独投与のほか、別の治療薬との併用投与も可能だと考えられる。

 MK-4482は、米エモリー大学の研究グループが米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の助成を受けて開発したインフルエンザ治療薬。現在、メルク社とRidgeback Biotherapeutics社が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として共同開発しており、第II相および第III相臨床試験が進行中だ。

www.nih.gov

臨床ニュース アトピー性皮膚炎、IL-31産生抑制の低分子化合物を開発 九大ほか、研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載

IL-31の産生に転写因子EPAS1が重要な役割

 九州大学は4月15日、アトピー性皮膚炎の主要なかゆみ惹起物質IL-31の産生を抑制する低分子化合物を世界に先駆けて開発したと発表した。この研究は、同大生体防御医学研究所の福井宣規主幹教授、宇留野武人准教授、國村和史特任助教、同大大学院医学系学府の上加世田泰久大学院生、同大大学院医学研究院の古江増隆教授、東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。

 アトピー性皮膚炎は国民の7~15%が罹患しているとされ、そのかゆみをコントロールするための創薬ニーズは高い。これまで、かゆみ研究はヒスタミンを中心に進んできたが、アトピー性皮膚炎のかゆみの多くは抗ヒスタミン剤(H1ヒスタミン受容体遮断薬)では抑制されないことから、別のかゆみ物質の存在が示唆されてきた。

 このような中、アトピー性皮膚炎と関連した新しいかゆみ物質として注目されているのがIL-31だ。IL-31は主にヘルパーT細胞から産生され、末梢神経と脊髄を介して脳にかゆみ感覚を伝えるが、IL-31の産生制御機構そのものは不明だった。

 先行研究より、福井主幹教授らは、分子DOCK8がないヒトやマウスにおいてIL-31の産生が亢進し、重篤アトピー性皮膚炎を自然発症することに着目。そのヘルパーT細胞で発現する遺伝子を解析することで、IL-31の産生に転写因子EPAS1が重要な役割を演じることを明らかにした。EPAS1は転写因子ARNTと会合して低酸素応答を制御することが知られているが、EPAS1によるIL-31の産生誘導にARNTは必要なく、SP1という別の転写因子が関与していた。以上より、EPAS1はIL-31の産生を抑制するための創薬標的になると考えられた。
ヘルパーT細胞IL-31産生を選択的に抑制する「IPHBA」

 今回の研究では、東京大学創薬機構より提供された9,600個の化合物を対象にEPAS1-IL-31経路を標的としたスクリーニングを実施。その結果、4個のヒット化合物のうちIPHBAと命名した化合物では、T細胞の生存性を損なうことなく、2.5μMという比較的低用量でDOCK8欠損マウスのヘルパーT細胞におけるIL-31の遺伝子発現を抑制した。

 一方、IPHBAは、低酸素応答やIL-2/IL-4といった他のサイトカインの遺伝子発現には影響しなかった。同様の結果は、IL-31とIL-2の産生をタンパク質レベルで測定した場合にも認められた。以上より、IPHBAはヘルパーT細胞におけるIL-31産生を選択的に抑制する化合物であることが明らかとなった。
マウスへIPHBA投与、ヘルパーT細胞の移入による掻破行動を抑制

 IL-31タンパク質を大量に産生することができるヘルパーT細胞をマウスに移入すると、掻破行動(引っかき行動)が惹起される。このマウスにIPHBAを100mg/kgで経口投与すると、ヘルパーT細胞の移入による掻破行動が抑制された。

 次に、IPHBAの作用機序を突き止めるためクロマチン免疫沈降法を用いて解析。EPAS1を含む一部の転写因子は、タンパク質複合体を形成することでDNA上のプロモーター領域に結合し、転写活性を調節することが知られている。そこで、EPAS1とSP1の両転写因子に着目したところ、IPHBAを添加するといずれの転写因子もIL-31プロモーター領域への結合が弱まることを見出した。

 また、EPAS1とSP1は複合体を形成するが、IPHBAはその会合を濃度依存的に抑制することもわかった。これらのことから、IPHBAはEPAS1とSP1の会合を抑制することで、IL-31プロモーター領域への両転写因子のリクルートメント(動員)を阻害し、IL-31の遺伝子発現を抑制していることが示唆された。
アトピー性皮膚炎患者のヘルパーT細胞、IPHBA添加でIL-31産生抑制

 以上の結果はマウスモデルを使った実験であるため、ヒトにも応用できるかどうか検証する必要がある。そこで研究グループは、アトピー性皮膚炎患者の協力を得て、血液からヘルパーT細胞を単離し、IPHBAの評価を実施。アトピー性皮膚炎を発症していない人に比べ、アトピー性皮膚炎患者のヘルパーT細胞は大量にIL-31を産生していたが、IPHBAの添加によってその産生が抑制されることを確認した。IPHBAは、免疫応答全般に重要なIL-2の産生には影響を与えなかったことから、免疫抑制作用の少ない治療薬シーズになり得ることが示唆された。

 最後に、IPHBAの構造をベースに約200の類縁化合物を合成し、それらの構造活性相関を取得。その結果、IL-31の遺伝子発現をより強く抑える化合物の開発に成功したという。
アトピー性皮膚炎のかゆみを根元から絶つ新規治療薬に期待

 IL-31の発見に伴い、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢も広がりつつある。今回、研究グループは、ヘルパーT細胞によるIL-31の産生を選択的に抑制できる低分子化合物として、IPHBAを発見した。

 IPHBAをリード化合物として開発を進めることで、アトピー性皮膚炎のかゆみを根元から絶つ新たな治療薬となることが期待される、と研究グループは述べている。

 

 

オマリズマブ、免疫チェックポイント阻害薬および抗HER2薬のそう痒症を改善/Ann Oncol

 IgE阻害薬オマリズマブ(商品名:ゾレア)はアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などのそう痒症に有効である。がん領域におけるそう痒関連皮膚有害事象(paCAE)は、免疫チェックポイント阻害薬や抗HER2薬で多くみられる。これらの薬剤による難治性paCAEを伴うがん患者に対してオマリズマブを評価する多施設後ろ向き研究の結果が発表された。

・対象:免疫チェックポイント阻害薬または抗HER2薬によるGrade2〜3の掻痒を有し、局所ステロイドと1つ以上の全身療法に抵抗性の患者
・介入:オマリズマブを月1回投与
・主要評価項目:paCAEのGrade0〜1への改善

 主な結果は以下のとおり。

・34例(女性50%、年齢中央値67.5歳)、がん治療関連paCAE(免疫チェックポイント阻害薬71%、抗HER2薬29%)に対するオマリズマブ投与を受けた。
・対象は、すべて固形腫瘍(乳房29%、泌尿生殖器29%、肺15%、その他26%)で、64%に蕁麻疹が認められた。
・オマリズマブの奏効は34例中28例(82%)に認められた。
・paCAEの支持療法として経口コルチコステロイドを投与された患者の割合は、50%から9%に減少した(P<0.001)。
・皮膚毒性のために腫瘍治療を中断した患者は31%(32例中10例)であった。
・オマリズマブに関連するアナフィラキシーまたは過敏反応の報告は認められなかった。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov