デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

急性心筋梗塞の自己注射薬、臨床第3相試験を開始 臨床第3相試験を開始

 急性心筋梗塞AMI)に対する自己注射型のP2Y12阻害薬(selatogrel)の国際共同臨床第3相試験(Selatogrel Outcome Study in suspected Acute Myocardial Infarction: SOS-AMI)が開始される。同薬を開発するスイスのIdorsia社が明らかにした。

 

大腿部または腹部に自己注射

 AMI発症時の薬物療法としてP2Y12阻害薬の経口投与や静脈内持続投与が行われているが、効果発現や投与までに時間を要することが課題だった。また、病院前治療や専門施設への転送前の治療として、アスピリンをかみ砕いて服用することが推奨されている。

 Selatogrelはチカグレロルやカングレロルとは異なる機序でP2Y12受容体と可逆的結合する新規クラスのP2Y12阻害薬。AMIが疑われる症状が発生した際、自己注射で大腿部または腹部に皮下投与する。

投与後15分の奏効率91%

 これまでに慢性冠症候群(CCS)患者229例を対象とした二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)において、投与30分で薬剤の血漿中濃度がピークに達した他、P2Y12阻害作用が8時間以上持続し、24時間以内に投与前のレベルに戻ることが確認された。忍容性は良好で、全体の7%に呼吸困難が発生していた(Eur Heart J. 2020; 41: 3132-3140)。

 また、AMI患者47例を対象としたオープンラベルのRCT(selatogrel 8mg群または16mg群に割り付け)では、単回投与30分時点で両群ともに90%以上の奏効率を認め、16mg群では投与15分時点で91%の奏効率を確認した。AMIのタイプや年齢、性別と独立した効果が見られた他、重大な出血性合併症はなく、忍容性良好であったことが報告されている(J Am Coll Cardiol. 2020; 75: 2588-2597)。2020年12月には、AMI既往を有する成人患者のAMIが疑われる症状の治療薬として、FDAのファストトラック指定を取得している。

1万4000例のAMI既往患者が参加予定

 SOS-AMI試験では標準治療+selatogrel(16mg)自己注射の有用性と安全性を検証する。主要評価項目は自己注射後の全死亡、非致死性MIの発生で、登録予定症例はAMI再発高リスクの患者1万4000例、30カ国250施設が参加する見通し。

 

新型コロナ抗体薬bamlanivimab、単剤投与で発症予防効果/JAMA

 介護付き有料老人ホームの入居者と職員を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「BLAZE-2試験」において、bamlanivimab単剤療法は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生を低下させることが認められた。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のMyron S. Cohen氏らが報告した。介護福祉施設でCOVID-19が発生した場合、入居者および職員をCOVID-19から守るために予防的介入が必要である。モノクローナル抗体薬のbamlanivimabは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19発症に対し速やかな予防効果を発揮することが期待されていた。JAMA誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。

bamlanivimab単剤のCOVID-19発症予防効果をプラセボと比較

 研究グループは2020年8月2日~11月20日の期間に、SARS-CoV-2感染例が1例以上確認された米国の介護付き有料老人ホーム74施設の入居者および職員を登録し、計1,175例をbamlanivimab 4,200mg単剤静脈内投与群(588例)またはプラセボ群(587例)に無作為に割り付けた。全参加者が試験開始から57日目に達した2021年1月13日にデータベースがロックされた。

 主要評価項目は、無作為化後8週間以内のCOVID-19累積発症率であった。COVID-19発症は、RT-PCR検査によるSARS-CoV-2検出、かつ検出後21日以内の疾患重症度が軽度以上と定義した。

 有効性の解析対象は、ベースラインでRT-PCRおよび血清学的にSARS-CoV-2陰性の966例(職員666例、入所者300例)であった(平均年齢53.0歳[範囲:18~104]、女性722例[74.7%])。

bamlanivimab群vs.プラセボ群でCOVID-19発症率は8.5% vs.15.2%

 bamlanivimab群はプラセボ群と比較して、COVID-19発症率が有意に低下した(8.5% vs.15.2%、オッズ比:0.43[95%信頼区間[CI]:0.28~0.68]、p<0.001、絶対リスク差:-6.6%[95%CI:-10.7~-2.6])。投与開始後57日間におけるCOVID-19による死亡は5例報告され、すべてプラセボ群であった。

 安全性解析対象集団1,175例において、有害事象の発現率はbamlanivimab群20.1%、プラセボ群18.9%であった。主な有害事象は、尿路感染症(bamlanivimab群2%、プラセボ群2.4%)、高血圧症(bamlanivimab群1.2%、プラセボ群1.7%)であった。

 著者は、「さらなる研究で、モノクローナル抗体薬の併用療法について、現在のウイルス株に対する予防効果を評価する必要がある」とまとめた。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

抗PD-1抗体による甲状腺副作用の発症メカニズムをマウスで明らかに 名大、研究成果は、「Science Translational Medicine」に掲載

免疫チェックポイント阻害薬治療によるirAEsの発症機序は不明だった

 名古屋大学は5月13日、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体による甲状腺副作用の発症メカニズムをマウスで明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院糖尿病・内分泌内科の安田康紀医員、岩間信太郎講師、同大医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の有馬寛教授らの研究グループと、同大医学系研究科分子細胞免疫学の西川博嘉教授らの研究グループとの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Science Translational Medicine」に掲載されている。

 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対する免疫反応を高めることで抗がん作用を示すがん免疫治療薬。日本では悪性黒色腫肺がん腎がん頭頸部がんホジキンリンパ腫胃がん尿路上皮がん乳がん等で近年保険が適用され、使用が拡大している。

 一方、免疫反応の活性化が自己の臓器で発生した際の副作用「irAEs」が問題となっている。irAEsは肺、消化管、皮膚、神経・筋、内分泌器官など、全身のさまざまな部位で認められる。このうち甲状腺の副作用は約10%と頻度が高く、一過性の甲状腺ホルモン上昇とその後の低下を伴う破壊性甲状腺炎の臨床像を呈するが、その発症機序は明らかにされていなかった。

破壊性甲状腺炎マウスでCD4陽性T細胞が増加、細胞障害作用を示唆するグランザイムBが発現

 研究グループは、甲状腺特異的なタンパクであるサイログロブリンをマウスに皮下投与し、2か月半後に抗PD-1抗体を投与することで、著明な炎症細胞浸潤を伴う破壊性甲状腺炎を呈するマウスモデルを確立した。同マウスモデルの頸部リンパ節および甲状腺におけるPD-1とそのリガンドであるPD-L1の発現を解析した結果、PD-1は主にCD4陽性T細胞において、PD-L1はマクロファージなどの炎症細胞において発現が認められた。

 抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎発症時にマウスの頚部リンパ節をフローサイトメトリーで解析した結果、CD4陽性のエフェクターモリーT細胞およびセントラルメモリーT細胞の増加が認められた。このマウスにおいて、CD4陽性T細胞はサイログロブリンに特異的に反応することおよび細胞傷害作用を示すタンパク「グランザイムB」を発現することが示された。

抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎において、CD4陽性T細胞が発症に必須と判明

 次に、あらかじめCD4、CD8、CD20陽性リンパ球をそれぞれ除去した後に抗PD-1抗体を投与して、破壊性甲状腺炎の発症を解析。その結果、CD4陽性T細胞を除去した場合に抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎の発症が完全に抑制され、CD8陽性T細胞の除去では破壊性甲状腺炎の発症は部分的に抑制された。さらに、抗PD-1抗体により破壊性甲状腺炎を発症したマウスのリンパ節からCD4陽性T細胞を抽出して別のマウスへ移植した結果、レシピエントマウスの甲状腺濾胞構造の破壊が認められた。また、抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎発症者6人と非発症者7人の血液中のリンパ球をフローサイトメトリーで解析した結果、発症者では非発症者と比べ、細胞傷害性CD4陽性T細胞の割合の増加が認められた。以上のことから、サイログロブリンの免疫によって生じたCD4陽性メモリーT細胞が抗PD-1抗体の投与により活性化し、細胞傷害作用を示すことで直接的に破壊性甲状腺炎の発症に関与することが示された。

 今回の研究により、抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎の発症には細胞傷害作用を示すCD4陽性T細胞が必須の役割を果たしていることが明らかになった。同結果は、現在広く使用されている抗PD-1抗体による副作用の機序の解明およびその予防法の確立につながる成果と考えられる。

irAEsの新たな治療法と予防法の確立につながる可能性

 免疫チェックポイント阻害薬は細胞傷害作用を有するCD8陽性T細胞の活性化を介して抗腫瘍作用を発揮すると考えられているが、irAEsのひとつである破壊性甲状腺炎では、細胞傷害性CD4陽性T細胞が重要な役割を果たしていることが示された。「本研究成果はirAEsの新たな治療法および予防法の確立につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

 

トルツ皮下注に重大副作用を追記 厚生労働省、「間質性肺炎」で

 厚生労働省は6月15日、乾癬脊椎炎に用いる「イキセキズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:トルツ皮下注80 mgオートインジェクター、同注80 mgシリンジ)の使用上の注意に対し、重大な副作用の項に「間質性肺炎」の追記を求める改訂指示を出した。国内症例の集積などを受けた措置で、医薬品医療機器総合機構PMDA)が改訂情報を伝えた。

 直近3年度の国内症例では、間質性肺炎関連症例が8例報告されており、このうち4例で因果関係が否定できていないという。発現機序の点などから同薬剤と当該事象の関連は必ずしも明確ではないとしながらも、国内症例の評価に基づき、専門委員の意見も踏まえて改訂が必要と判断した。

 

米FDAが進行全身性肥満細胞症にavapritinib承認 稀な血液疾患に分子標的薬

 米国食品医薬品局(FDA)は6月16日、侵襲的全身性肥満細胞症(ASM)、関連する血液腫瘍を伴う全身性肥満細胞症(SM-AHN)、マスト細胞性白血病(MCL)を含む成人の進行全身性肥満細胞症(AdvSM)に、キナーゼ阻害薬avapritinib(商品名Ayvakit、Blueprint Medicines社)を承認した。

 avapritinibの有効性は、AdvSM患者を対象とした多施設共同単群非盲検臨床試験EXPLORER」および「PATHFINDER」で検証されている。有効性の主要評価項目は、修正 IWG-MRT-ECNM(国際作業部会-骨髄増殖性腫瘍の研究と治療および肥満細胞症に関する欧州競争ネットワーク)基準に基づいて中央委員会が判定した全奏功率(ORR)に規定し、奏効期間(DOR)、奏効までの期間なども評価項目に規定した。この試験では被験者53例に対しavapritinibを最大200mgまで毎日投与した。

 試験2件で効果判定が可能だった53例の被験者全体のORRは57%で、完全寛解が28%、部分寛解が28%で得られた。奏効期間の中央値は38.3カ月で、奏効までの期間の中央値は2.1カ月だった。

 AdvSM患者によく見られた有害反応(20%以上)は浮腫下痢嘔吐倦怠感/無力感だった。avapritinibは、血小板数が50×109/L未満のAdvSM患者には推奨されない。なお、今回の承認申請は、FDAによる優先審査、画期的新薬、オーファンドラッグの指定を受けた。

 

www.fda.gov

米FDAが熱傷治療に再生皮膚組織StrataGraft承認 深達性部分層熱傷が適応

 米国食品医薬品局(FDA)は6月15日、外科的治療が適応となる成人の深達性部分層熱傷の治療に再生皮膚組織「StrataGraft」(Mallinckrodt社)を承認した。

 StrataGraftは、2種類のヒト皮膚細胞(ケラチノサイト細胞と真皮線維芽細胞)を共培養して作製した2層構造コンストラクト(細胞の足場)による他家皮膚組織だ。熱傷創部位に移植すると、時間の経過とともに患者自身の皮膚細胞が増殖し、熱傷によって失われた皮膚細胞を補うようになる。このほか、熱傷治療に培養皮膚を用いることで移植に必要な健康な皮膚の採取量を減らせる便益もある。

 StrataGraftの有効性と安全性は、深達性部分層熱傷を負った成人患者計101例を対象とした2件の無作為化比較試験で検証されている。熱傷の面積と深度が同程度の患者ペアを組み、一方をStrataGraft移植群、もう一方を自家移植群に無作為に割り付けた。その結果、StrataGraft移植群の方が完全創傷閉鎖率が高く、自家移植の必要性が有意に減少した。

 StrataGraftによく見られた副作用に、移植部位のそう痒感、水疱肥厚性瘢痕、治癒不全があった。紅斑、腫れ、局所の熱感、創部感染など創傷関連イベントに関する安全性に関する特徴は自家移植と同程度だった。臨床試験では拒絶反応は報告されなかった。

 StrataGraftは、米国保社会福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)と共同で開発されたもので、FDAは、StrataGraftを先進的な再生医療(regenerative medicine advanced therapy:RMAT)、優先審査、希少医薬品に指定している。

www.fda.gov

ドボベットフォーム発売開始 2021年6月18日

ドボベットフォームが本日発売開始となりました。

dovobet.jp

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