デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

慢性手湿疹患者におけるデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏®)の有効性

 慢性手湿疹の治療管理は依然として課題があり、効果的な局所治療はステロイド外用薬に限られている。

 ドイツ、カナダ、デンマークの研究チームは、ヤヌスキナーゼ(Janus kinase:JAK)阻害薬であるデルゴシチニブ軟膏の慢性手湿疹患者における有効性と安全性を評価した。

 このランダム化二重盲検基剤対照群間比較第IIa相試験において、慢性手湿疹患者にデルゴシチニブ軟膏30mg/gまたは軟膏基剤を8週間投与した。

 主要評価項目は、8週時の奏効率[医師総合評価(Physician's Global Assessment:PGA)で2ポイント以上の改善を伴う皮膚病変が消失/ほぼ消失した患者の割合]。副次評価項目には、HECSI(Hand Eczema Severity Index)の変化、およびPaGA(Patient’s Global Assessment of disease severity)においての奏効率が含まれた。

 慢性手湿疹患者91例がランダムに割り付けられた。デルゴシチニブ軟膏を塗布された患者(46%)の方が、軟膏基剤を塗布された患者(15%)よりも8週時の奏効率は高かった[オッズ比4.89、95%信頼区間1.49-16.09;P=0.009]。8週時の調整平均HECSIは、デルゴシチニブ軟膏(13.0)の方が軟膏基剤(25.8)よりも低かった(調整平均差-12.88、95%信頼区間-21.47~-4.30;P=0.003)。PaGAにおける奏効率は、軟膏基剤よりもデルゴシチニブ軟膏を投与された患者の方が多かったが、統計学的には差がなかった。有害事象の発生率は、デルゴシチニブ軟膏と軟膏基剤で同程度であったが、デルゴシチニブ軟膏投与群では投与中止に至った有害事象は認められなかった。

 デルゴシチニブ軟膏は有効性が高く、忍容性も良好であった。8週投与で有効性のプラトーは認められなかったため、治療期間を長くすることで有効性が高まる可能性があると考えられるが、それを確認するためには慢性手湿疹患者を対象とした更なる臨床試験が必要である。多くの慢性手湿疹患者が負担を抱えているが、慢性手湿疹患者における現在の治療法を評価したランダム化比較試験はほとんど行われておらず、臨床での意思決定に役立つデータは限られている。現在、慢性手湿疹患者に対する効果的で忍容性の高い外用治療法の選択肢が求められている。デルゴシチニブ軟膏はJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2のすべてを阻害し、免疫細胞の活性化を抑制する。デルゴシチニブ軟膏を局所塗布することで、治療開始8週時に対照群より多くの慢性手湿疹患者で寛解が得られた。この概念実証臨床試験の結果から、デルゴシチニブ軟膏は、ステロイド外用薬に十分な反応を示さない慢性手湿疹患者に治療上の有益性をもたらす可能性があることが示唆された。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.go

 

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コメント:

慢性手湿疹に対する治験中のコレクチム軟膏ですが、第2相試験の結果がいい感じですね。

その他にコレクチム軟膏が治験中の疾患は下記の記事に載せています。

dermania.hatenablog.com