デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

ミューズ細胞による表皮水疱症治験で主要評価項目達成

 三菱ケミカルホールディングス傘下の生命科学インスティテュート(東京都)は29日、再生医療製品「Muse(ミューズ)細胞」を表皮水疱症の治療に用いる臨床試験で、主要な評価項目を達成できたと発表した。安全性に問題はなく、設定した有効性目標もクリアした。ただ、当初計画通りに2020年度中に承認申請に持ち込めるかは医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議次第になりそう。

 表皮水疱症は皮膚に軽い力が加わるだけで水ぶくれや潰瘍ができる指定難病。皮膚層の遺伝子変異が原因とされ、国内患者は約500~1000人いるが、有効な治療法はない。

 臨床試験では患者5人にミューズ細胞を一回投与。52週までの安全性に問題はなく、潰瘍などで傷ついた皮膚面積の縮小効果なども確認できた。

 ただ、比較対照群を設けていないシングル・アームの臨床試験だった点が承認申請での課題。日本の再生医療製品の早期承認を海外学術誌が批判し、JCRファーマの同「テムセル」が表皮水疱症の承認申請を昨年取り下げたのは、対照群のない治験結果のためとの指摘もある。このため生命科学インスティテュートは承認申請できないケースも想定し、さらに有効性を検証する臨床試験も検討する方針。

 ミューズ細胞は多様な細胞に分化する特徴があり、傷ついた組織や血管を修復する働きを持つ。脳梗塞の治験は偽薬と比較して安全性や有効性が確認され、20年度の申請を目指している。

 

ソース:

化学工業日報 2020年07月31日