デルマニアのブログ

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バリシチニブでアトピー改善効果が長期持続 ヘルペス感染症、治療要する皮膚感染症の増加見られず

 米・George Washington University School of MedicineのJonathan I. Silverberg氏らは、ステロイド外用薬で効果不十分な中等症~重症アトピー性皮膚炎の成人患者を対象に、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブの長期有効性を第Ⅲ相多施設二重盲検ランダム化比較試験BREEZE-AD3で検討した結果、投与開始後68週の時点でも有効性が持続していたとJAMA Dermatol2021年5月12日オンライン版)に発表した。さらに、投与16週から32週まで痒みの改善は安定して維持されていた他、長期治療に伴うヘルペス感染症抗生物質の治療を要する皮膚感染症の増加は確認されず、長期投与による安全性も示された。

16週間単剤投与の奏効・部分奏効例を対象に検討

 アトピー性皮膚炎に対するバリシチニブの長期的な有効性はまだ検討されていない。そこで、Silverberg氏らは、同薬について中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対する長期的治療の選択肢になる可能性について検証した。

 BREEZE-AD3試験はバリシチニブ単剤の16週間投与によりプラセボと比べてアトピー性皮膚炎の有意な改善が確認されたBREEZE-AD1試験およびBREEZE-AD2試験の長期延長試験。16週間のBREEZE-AD1/BREEZE-AD2試験を完遂した中等症~重症アトピー性皮膚炎の成人患者1,081例のうち、バリシチニブの奏効例および部分奏効例と判定された患者221例を対象に治療を継続した。

 奏効例は、BREEZE-AD1/-AD2の試験期間中にレスキュー療法を受けたことがなく、主治医による重症度の総合評価Validated Investigator Global Assessment for Atopic Dermatitis(vIGA-AD)でスコア0または1(0/1)を達成した患者と定義。部分奏効例は、同様にvIGA-ADスコア2を達成した患者と定義した。

日本や欧州などの患者でバリシチニブの治療継続

 今回の解析では、奏効/部分奏効例のうちバリシチニブ4mg群に70例(平均年齢36.7歳、男性60%)および2mg群に54例(平均年齢32.8歳、男性51.9%)が割り付けられた。4mg群の患者の67.1%が白人、25.7%がアジア人(日本から6例が参加)、1.4%が黒人、その他の人種が5.7%で、2mg群は83.3%が白人、13.0%がアジア人(日本から1例が参加)、その他の人種が3.7%だった(それ以外の人種は含まない)。

 主要評価項目は、投与開始後36週、52週、68週(BREEZE-AD3試験の16週、36週、52週)時点でのvIGA-ADスコア0/1達成率とした。副次評価項目は、アトピー性皮膚炎重症度指数(EASI)における75%以上の改善(EASI-75)達成率、瘙の数値評価尺度(NRS)の4ポイント以上の改善とした(BREEZE-AD1/-AD-2)の試験のベースラインとの比較)。

EASI-75達成率は68週時に55.7%、痒みの改善も安定して持続

 解析の結果、バリシチニブ4mg群では、vIGA-ADスコア0/1達成率は投与開始後16週(BREEZE-AD3試験のベースライン)→68週で45.7%→47.1%と安定していたのに対し、EASI-75達成率は同期間で70.0%→55.7%とやや低下した(図1)。バリシチニブ2mgでは、vIGA-ADスコア0/1達成率は投与開始後16週→68週で46.3%→59.3%、EASI-75達成率は同期間で74.1%→81.5%と、いずれもやや上昇した。

図1.バリシチニブ4mg群の投与68週時までの有効性

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 また、患者の自己評価による痒みNRSで4ポイント以上の瘙痒の改善が得られた患者の割合は、バリシチニブ4mgでは投与開始後16週→32週で52.5%→45.9%と比較的安定していた。また、同薬3mg群でも投与開始後16週→32週で44.2%→39.5%と維持されていた。痒みによる睡眠障害は時間の経過とともに変動が小さくなった(図2)。

図2.バリシチニブ(2mg群、4mg群)の痒み、皮膚疼痛、睡眠への影響に関する患者の自己評価結果

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(図1、2とも論文より抜粋)

長期治療に伴うヘルペスウイルスの増加は確認されず

 バリシチニブに伴う一般的な有害事象として、内咽頭炎、頭痛、クレアチンキナーゼ値の上昇、下

痢が報告された。一方、投与16週目までにプラセボと比べて単純ヘルペス感染症の明らかな増加が報告されたが、長期の治療に伴うヘルペス感染症抗生物質による治療を必要とする皮膚感染症の増加は確認されず、また有害な主要な心血管イベントや結膜障害の増加も見られなかった。

 以上の結果を踏まえ、Silverberg氏らは「中等症~重症アトピー性皮膚炎の成人患者において、バリシチニブ4mgおよび2mgは最長68週間の長期有効性を示した。今回の結果は、バリシチニブが中等症~重症アトピー性皮膚炎に対する長期の治療選択肢となりうることを裏付けるものである」と結論している。