デルマニアのブログ

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透析患者の痒み、新薬候補で有意に改善 選択的κ-オピオイド受容体作動薬difelikefalin

 新潟大学腎・膠原病内科学分野教授の成田一衛氏らは、日本人血液透析患者における中等度~重度瘙痒症の新たな治療選択肢として期待される選択的κ-オピオイド受容体作動薬difelikefalinの有効性と安全性を第Ⅱ相ランダム化比較試験で検討。difelikefalin 0.5μg/kgを週3回、8週間にわたり静脈内投与した群では、プラセボ群に比べて有意な瘙痒の改善が認められたとJAMA Netw Open2022 ;5 :e2210339)に発表した。

0.5μg/kg以上で有意な痒みスコア改善

 同試験では、2019年2月1日~10月22日に国内94施設において、中等度~重度そう痒症〔24時間で最も強く感じた痒みの評価尺度(NRS)の週間平均スコア4点以上、スコア範囲0(痒みなし)~10(最も強い痒み)〕を有する血液透析患者247例(平均年齢64.5歳、男性75%)を登録。プラセボ群(63例)、difelikefalin 0.25μg/kg群(61例)、同薬0.5μg/kg群(61例)、同薬1.0μg/kg群(62例)に1:1:1:1でランダムに割り付けて8週間治療した(週3回、透析終了時に透析回路から静脈内投与)。主要評価項目は週間平均NRSスコアの治療開始後8週間の変化量とした。

 解析の結果、主要評価項目の調整後平均変化量はプラセボ群で-2.86〔標準誤差(SE)0.29〕、difelikefalin 0.25μg/kg群で-2.97(同0.29)、0.5μg/kg群で-3.65(同0.30)、1.0μg/kg群で-3.64(同0.30)だった。プラセボ群と比べ、difelikefalin 0.5μg/kg群(調整後平均差-0.80、95%CI -1.55~-0.04、P=0.04)、1.0μg/kg群(同0.78、-1.54~-0.03、P=0.04)で有意な改善が認められた。

痒み関連QOLなども改善

 治療開始後8週時点の副次評価項目についても、difelikefalin 0.5μg/kg群と1.0μg/kg群で有意な改善が認められた。

 週間平均NRSスコアが3点/4点以上改善した患者の割合は、プラセボ群の50%/36%に対しdifelikefalin 0.25μg/kg群で53%/34%、0.5μg/kg群で60%/51%、1.0μg/kg群で57%/43%だった。

 白取の重症度基準に基づく痒みスコア(24時間の日中および夜間の痒みの程度をスコア0~4で評価、高スコアほど強い痒み)は、プラセボ群と比べてdifelikefalin 0.5μg/kg群(調整後平均差-0.31、95%CI -0.60~-0.02、P=0.04)、1.0μg/kg群(同-0.31、-0.60~-0.02、P=0.03)で有意に低下した。

 痒み関連QOLの評価では、治療開始後8週時点におけるSkindex-16 Scale(スコア範囲0~6、高スコアほど重度のQOL低下)の調整後週間平均スコアがdifelikefalin 0.5μg/kg群で-27.79(SE 2.05、95%CI -31.83~-23.74)、1.0μg/kg群で-22.69(同2.04、-26.71~-18.68)。同時点の5-D Itch Scale〔痒みの5要素(持続期間、程度、経過、発生部位、痒みによる障害)を評価〕の調整後週間平均スコアがdifelikefalin 0.5μg/kg群で-6.5(SE 0.4、95%CI -7.2~-5.8)、1.0μg/kg群で-6.8(同0.3、-7.5~-6.2)だった。

 また、患者の全般印象評価(PGIC)で最上位の「極めて改善」と評価した患者の割合も、プラセボ群(17.7%)と比べてdifelikefalin 0.5μg/kg群(37.3%)、1.0μg/kg群(31.7%)で多かった。

有害事象の大半は軽度で早期回復

 有害事象の発現率は用量依存性に上昇し、プラセボ群の67%と比べてdifelikefalin 0.25μg/kg群で72%、0.5μg/kg群で77%、1.0μg/kg群で85%だった。ほとんどの有害事象は軽度で治療の比較的早期に発生し、投与中断・中止に至ることなく改善した。また、difelikefalinへの依存性は認められなかった。

 傾眠やめまいなどの中枢神経系の有害事象は、プラセボ群の5%に対し、difelikefalin 1.0μg/kg群で10%と高頻度に見られた。なお、0.25μg/kg群では3%、0.5μg/kg群で5%とプラセボ群と同等だった。また、薬物に関連した重篤な有害事象として、0.5μg/kg群で意識状態の変化、1.0μg/kg群で小腸閉塞が報告されたが、これらの例はいずれも投与中止後に回復した。

 以上を踏まえ、成田氏らは「difelikefalin 0.5μg/kgは日本人血液透析患者における中等度~重度瘙痒症をプラセボに比べて有意に改善した。0.25μg/kgでは十分な効果が認められず、臨床推奨用量は0.5μg/kgとすべきである」と結論している。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov