デルマニアのブログ

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炎症性腸疾患患者で乾癬リスク増加 逆因果関係は認められず

 ドイツ・University of AugsburgのDennis Freuer氏らは、炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)と、乾癬および乾癬性関節炎との関連の評価を目的に、ゲノムワイド関連研究(GWAS)のデータを解析。IBDは乾癬および乾癬性関節炎の危険因子だが逆因果関係はなく、特にCDが乾癬および乾癬性関節炎に強く関連していることをJAMA Dermatol2022年9月14日オンライン版)に報告した。

UCは乾癬および乾癬性関節炎との関連は認められず

 これまでの観察研究により、IBDが乾癬の原因または乾癬がIBDの原因である可能性が示唆されているが、現時点では両者の因果関係や因果の方向性は不明である。

 Freuer氏らは、欧州のGWASのデータを用いて双方向メンデルランダム化(MR)解析を実施。曝露と転帰の双方にIBD、CD、UC、および乾癬・乾癬性関節炎を用いて、これらの関連を検討した。

 対象はIBDの発見コホートが1万2,882例(対照2万1,770例)で検証コホートが7,045例(同45万6,327例)、CDは5,956例(同1万4,927例)、UCは6,968例(同2万464例)、乾癬は5,621例(同25万323例)、乾癬性関節炎は2,063例(同25万323例)が含まれた。これらのコホートにおける女性の割合は48~56%だった。

 単変量解析では、遺伝的に予測された発見コホートIBDは乾癬〔オッズ比(OR)1.09、95%CI 1.04~1.15、P=0.001〕および乾癬性関節炎(同1.09、1.01~1.17、P=0.03)のリスクと正の関連が認められ、いずれも検証コホートにより確定された(それぞれ同1.14、1.03~1.26、P=0.01、同1.16、1.02~1.33、P=0.03)。

 固定効果モデルによる統合メタ解析でも、IBDと乾癬(統合OR 1.10、95%CI 1.05〜1.15、P<0.001)および乾癬性関節炎(同1.11、1.04〜1.18、P=0.003)の両方で有意な関連が見られた。

 またIBDのうち、CDは乾癬(OR 1.16、95%CI 1.12〜1.20、P<0.001)および乾癬性関節炎(同1.13、1.06〜1.20、P<0.001)の有意な危険因子であったが、UCはいずれも関連がなかった(それぞれ同1.03、0.98〜1.08、P=0.30、同1.02、0.96〜1.08、P=0.56)。逆因果関係は、いずれの組み合わせにおいても認められなかった。

多変量解析でも同様の結果

 多変量解析では、CDは乾癬(OR 1.16、95%CI 1.10〜1.23、P<0.001)および乾癬性関節炎(同1.12、1.04〜1.21、P=0.002)と有意な関連を示したのに対し、UCはいずれも関連がなかった(それぞれ同0.98、0.92〜1.04、P=0.41、同0.98、0.91〜1.07、P=0.70)。

 多変量解析における直接効果は、単変量解析の総合効果よりもさらに強力だった。また多変量解析でも、遺伝的に予測される逆因果関係は観察されなかった。

 これらの知見を踏まえ、Freuer氏らは「IBD患者における潜在的な乾癬リスクについて臨床医やプライマリケア医の認識を高めることは、患者の系統的な診断や、学際的で早期の個別化治療に寄与する可能性があり、今回の研究結果は極めて重要」と結論。「今後の基礎研究により、IBD患者における乾癬発症の病態生理学的機序の解明が求められる」と付言している。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov