デルマニアのブログ

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9価HPVワクチン、来年4月1日から定期接種へ

 厚生労働省厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会は、2022年11月8日、9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種を2023年4月1日から開始する方針を了承した。

 9価HPVワクチンは、2022年10月4日の同部会にて定期接種化が了承されていたが、具体的な開始時期は決まっていなかった(関連記事:9価HPVワクチンの定期接種化を了承)。その後、製造販売を行うMSDへのヒアリングにより、2023年4月の時点で定期接種を開始するだけの十分な供給量が確保できることが明らかになったことから、今回、定期接種の開始時期を2023年4月1日とする事務局案を提示。委員の了承を得た。今後のスケジュールとしては、今月中に予防接種実施規則の改正案要綱について予防接種・ワクチン分科会に諮問し、パブリックコメントの募集を経て2023年4月1日の施行を目指す(図1)。

図1 9価HPVワクチン定期接種化に向けたスケジュール
(出典:第50回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料)

 このほか、同日の部会では(1)既に2価、4価ワクチンを1回または2回接種している場合に残りの接種を9価ワクチンで完了する「交互接種」、(2)キャッチアップ接種における9価ワクチンの取り扱い、(3)9価ワクチンの接種回数──についても論点に挙がり、引き続き同部会で議論することとなった。

 これらに対して事務局は、(1)の交互接種に関しては、一定程度の免疫原性と安全性が示されたエビデンスが存在することに加え、諸外国やWHO(世界保健機関)では、基本的には同じ種類のワクチンでの接種を推奨しつつも、2、4価ワクチン未完了の者が9価ワクチンで接種を完了することを可能としている点を踏まえ、医師と相談の上で交互接種を認める、(2)のキャッチアップ接種については、医師と相談の上で残りの接種を9価ワクチンで完了できる、(3)の接種回数については、9価ワクチンの2回接種の製造販売承認が申請中であることから、承認後、速やかに同部会で定期接種への導入を議論する──という案を示した。なお、海外では2回接種が広く実施されているが、現在、我が国では2、4価ワクチンと同様に3回接種が求められる。

 委員からは、「交互接種についてはエビデンスが限られているので最終判断は医師に任せるといったニュアンスは避け、現場の医師に責任を押しつけるような形にならないよう、リーフレットなどの書き方を工夫してほしい」(川崎市健康福祉局医務監の坂元昇氏)。「2回接種の承認も来年の4月に間に合うよう、迅速化すべきではないか」(順天堂大学革新的医療技術開発研究センター特任教授の伊藤澄信氏)などの発言があった。

 こうした意見を受け、事務局は「2回接種については既に9価ワクチンのファクトシートに記載されているため、承認後は迅速に本部会で議論を行えるものと考えている」と述べた。