デルマニアのブログ

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白斑に対する局所治療薬、2件の臨床試験で有望な結果 約半数の対象者が1年後に顔で75%以上、全身で50%以上の色素を取り戻す

 皮膚の色素が失われる疾患である尋常性白斑(以下、白斑)に罹患した何百万人もの人にとって、外用薬のルキソリチニブクリーム(商品名Opzelura)がゲームチェンジャーとなりつつある。2件の第3相臨床試験により、このクリーム剤を使用した白斑患者の約半数が、使用から1年後に、顔面で75%以上、全身で50%以上の色素を取り戻したことが確認された。米タフツ医療センター皮膚科部門のDavid Rosmarin氏らによるこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine」10月20日号に掲載された。

 白斑は、皮膚の一部の色素が抜け落ちてしまう疾患。体のどの部位にでも生じ得るが、特に顔面と手に好発する。ルキソリチニブは、白斑の発症と進行に関与する分子であるヤヌスキナーゼ(JAK)を標的とするJAK阻害薬で、2022年7月には、非分節型の尋常性白斑における色素再沈着のための局所治療薬として米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。

 今回の2件の臨床試験〔Topical Ruxolitinib Evaluation in Vitiligo Study 1(TRuE-V1)および2(TRuE-V2)〕は、北米と欧州で、総体表面積に占める色素脱失の割合が10%以下の12歳以上の患者674人を対象に実施された(TRuE-V1:330人、TRuE-V2:344人)。対象者は2対1の割合で、24週間1日に2回、ルキソリチニブクリーム1.5%を顔面と体の全患部に塗布する群とプラセボを塗布する群(溶媒対照群)に割り付けられた。25週目以降は、全ての患者が52週目までルキソリチニブ1.5%を塗布できるものとした。主要評価項目は、24週時点での顔面の白斑面積スコア指標(F-VASI)の試験開始時から75%以上の改善(F-VASI75)とした。F-VASIは0~3点でスコア化し、高スコアほど色素脱失の面積が広いことを表す。主な副次項目は、全身白斑重症度指標(T-VASI)での50%以上の改善(T-VASI50)など5項目であった。

 その結果、24週目の時点でF-VASI75を達成した患者の割合は、TRuE-V1ではルキソリチニブ群で29.8%、溶媒対照群で7.4%であり(相対リスク4.0、95%信頼区間1.9~8.4、P<0.001)、TRuE-V2では同順で30.9%と11.4%であった(同2.7、1.5~4.9、P<0.001)。また、52週にわたってルキソリチニブを塗布した患者のうち、F-VASI75を達成した患者の割合は、TRuE-V1では52.6%(173人中91人)、TRuE-V2で48.0%(177人中85人)、T-VASI50を達成した患者の割合は、TRuE-V1で53.2%(173人中92人)、TRuE-V2で49.2%(177人中87人)であった。

 52週にわたってルキソリチニブを塗布した患者では、TRuE-V1で54.8%、TRuE-V2で62.3%の患者に有害事象が生じた。最も頻繁に生じた有害事象は、塗布部位のざ瘡(にきび、同順で6.3%、6.6%)、鼻咽頭炎(5.4%、6.1%)、塗布部位の掻痒(5.4%、5.3%)だった。

 Rosmarin氏は、「ルキソリチニブクリームは、FDAが白斑患者での色素再沈着のための治療薬として承認した初めての薬であり、この結果は画期的な出来事と言ってよい」と話す。同氏は、「白斑の罹患歴が30年以上に及ぶ患者でさえ、この薬剤により改善を見込める」としている。

 米ヘンリー・フォード病院の皮膚科医であるIltefat Hamzavi氏は、ルキソリチニブクリームが白斑患者にとって重大事であることに同意を示す。同氏は、「白斑は、慢性喘息のように、生活の質(QOL)に影響を及ぼす極めて重大な心理社会的な疾患の一つであり、抑うつを抱える白斑患者の割合は一般人口での割合よりもはるかに高い」と指摘。「これまで、何らかの薬剤が大規模な白斑患者集団でどれほどの効果を示すのか、また、どの程度安全であるのかは不明だった。承認された治療法がない疾患にとって、この状況は乗り越えるのが極めて困難な障害となるが、今回の研究で、われわれはついにその情報を手に入れることができたのだ」と話している。

 

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2118828?query=featured_home