世界保健機関(WHO)が11日、欧米を中心に患者が相次いだエムポックス(サル痘)の「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を終了すると発表した。
「エムポックスがもはや『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』ではないと宣言することをうれしく思います」
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は11日の会見でそう述べた。
WHOには昨年1月~今年5月に計8万7千人以上の感染と140人の死亡が111カ国から報告されてきた。テドロス氏は、直近3カ月の患者数が前の3カ月と比べて、ほぼ9割減になったことを紹介し、「アウトブレークを制御することについての着実な進歩を確認した」と述べた。
ただし、テドロス氏は「これで仕事が終わったわけではない」とも強調。引き続き、詳細な感染経路がわかっていないアフリカを含む、全ての地域に影響を及ぼしており、忍耐強い対処が必要になると訴えた。
サル痘はウイルスをもつ動物との接触で感染し、ヒトからヒトへの感染はまれとされる。ただ、患者の体液や、皮膚の病変に触れることなどでも感染する。性的接触や患者が使った寝具などでも感染するため、誰でも感染する可能性はある。
従来はアフリカ中部や西部で時々流行する感染症だったが、昨年5月以降、欧米を中心に感染が拡大。発熱やリンパ節の腫れ、全身に広がる発疹などが主な症状とされるが、今回の流行では発疹が性器周辺にとどまったりするなど、従来と異なる症状が報告されている。患者の多くは軽症で2~4週間で自然に治るが、まれに重症化する例もある。
WHOによると、今回の流行で報告されている患者の96%は男性で、その多くは男性間による性的接触があった人だった。
日本国内では同年7月、初めて患者が確認された。世界的には患者数は減っているが、国内では今年に入り、患者の報告が増えている。厚生労働省によると、5月7日時点で135人で、全員男性で、死者は報告されていない。
当初は患者が発生している地域から入国した人が感染した例が多かったが、多くの人に海外渡航歴がない。厚労省は「国内で感染が拡大している状況と考えられる」として、疑われる症状があれば最寄りの医療機関に相談するよう呼びかけている。
WHOがサル痘の名称を「mpox」と推奨したのを受け、厚労省は今後、国内での名称をエムポックスに変更する方針。(米田悠一郎、ロンドン=金成隆一)