デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

乾癬のbDMARD治療でPsAリスク低下

 中等症ないし重症の尋常性乾癬患者で、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)を5年以上処方した患者およびナローバンドUVB(nb-UVB)光線療法を3回以上実施した計464例(bDMARD群234例、nb-UVB群230例)を対象に、乾癬性関節炎(PsA)の発症率を後ろ向き非無作為化試験で検討。bDMARD群1584人年、nb-UVB群1478人年を追跡し、リウマチ専門医がPsA発症を評価した。

 その結果、PsAの年間発症率は100人年当たりbDMARD群1.20、nb-UVB群2.17だった(ハザード比0.29、95%CI 0.12-0.70、P=0.006)。PsAリスク上昇と独立の関連を示した変数に、高齢(調整ハザード比1.04、1.02-1.07)、爪乾癬(同3.15、1.63-6.06)、乾癬罹患期間10年超(同2.02、1.09-3.76)があった。bDMARD治療にPsA発症リスクが低下した(同0.27、0.11-0.66)。


pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

J&J製コロナワクチンでギラン・バレー症候群リスク上昇 FDA報告

 米国食品医薬品局(FDA)は、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)グループが開発した新型コロナウイルスワクチンの製品情報を更新し、接種後にギラン・バレー症候群の発症リスクがあることを警告した。ただ、頻度は低く、ワクチン接種を推奨する方針は変えていない。

 米国でJ&J製ワクチンが約1250万回接種された時点で、接種後にギラン・バレー症候群を発症した症例が100件報告された。うち95例は入院が必要な重症例で、死亡も1例あった。ギラン・バレー症候群は、ウイルス感染などがきっかけで起きる末梢神経障害の疾患。FDAは同ワクチンの製品情報を改訂し、ギラン・バレー症候群に関する警告を追加した。接種後に手足のしびれや脱力感などがあった場合は医師に相談するよう促している。

 英アストラゼネカ(AZ)のコロナワクチンも、欧州医薬品審査庁(EMA)がギラン・バレー症候群との因果関係を調査し始めた。J&J、AZ製ワクチンは、ともにウイルスベクター技術を使ったワクチン。血小板減少をともなう血栓症症候群のリスク上昇も指摘されている。

 FDAによると、米ファイザー/独ビオンテック製、米モデルナ製コロナワクチンでは、ギラン・バレー症候群の有害事象報告は出ていないという。

 

新型コロナに抗体カクテル療法が特例承認 NEWS◎抗ウイルス作用を持つ抗体2成分を1製剤にした「ロナプリーブ」

 中外製薬は2021年7月19日、国内では同社が開発していた抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ点滴静注セット」について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して厚生労働省から特例承認を取得したと発表した。

 同社は本製剤について政府と供給契約を交わしており、政府が買い取って医療機関に供給する。必要とする医療機関の依頼に応じて同社から配送する。7月20日厚生労働省が事務連絡を発出し、医療機関から依頼する方法が示される予定だ。

 ロナプリーブは、SARS-CoV-2のスパイク蛋白質の受容体結合部位を標的とするカシリビマブとイムデビマブの2成分を含む製剤。抗体2成分がそれぞれスパイク蛋白質の別の部位に結合して、スパイク蛋白質のヒトACE2受容体への結合を阻害する。2成分をそれぞれ300mgずつ配合したロナプリーブ点滴静注セット300と、1332mgずつ配合した同セット1332の2規格がある。抗体2成分を1製剤とした同剤は抗体カクテル療法と呼ばれている。効能および効果は「SARS-CoV-2による感染症」で、用法・用量は、「通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブおよびイムデビマブとしてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注する」となっている。

 添付文書には、
臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと」
「高流量酸素または人工呼吸器管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある」
「本剤の中和活性が低いSARS-CoV-2変異株に対しては本剤の有効性が期待できない可能性があるため、SARS-CoV-2の最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討すること」
SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与すること。臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない」
と注意書きがある。

 中外製薬によれば、非臨床薬理試験では、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株などに対する中和活性を持つと示唆されるデータが得られている。

 特定の背景を有する患者に関する注意として、妊婦については「妊婦または妊娠している可能性がある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。生殖発生毒性試験は実施していない。一般にヒトIgGは胎盤を通過することが知られている」、授乳婦については「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。本薬のヒト乳汁への移行性については不明であるが、一般にヒトIgGは乳汁中へ移行することが知られている」、小児等については「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」、高齢者については「患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している」と付記されている。

 副作用については、重大な副作用として重篤な過敏症(頻度不明)、infusion reactionが0.2%と示されている。

 カシリビマブとイムデビマブは、米Regeneron Pharmaceuticals社が創製した抗体で、スイスRoche社がRegeneron社と共同開発・販売契約を締結していた。2020年12月、中外製薬は日本における開発および独占的販売権をRoche社から取得し、中外製薬が国内開発を進めていた。

 ロナプリーブについては、海外で臨床試験が進められていたが、2020年11月に米食品医薬品局(FDA)から、入院をしていない、軽度から中等度のCOVID-19の症状を呈するハイリスク患者に対して緊急使用許可を得ていた。

 今年3月には、Roche社が、入院をしていないリスク因子を1つ以上有するCOVID-19患者4567人を対象にした第3相試験(REGN-COV 2067試験)で、プラセボに比べてカシリビマブ/イムデビマブは入院または死亡のリスクを70%(1200mg静注)および71%(2400mg静注)有意に低下させたと発表していた(イベント発現数は、1200mg静注群736人中7、プラセボ群748人中24、2400mg静注群1355人中18、プラセボ群1314人中62)。副次評価項目の1つである症状の持続期間を14日から10日(中央値)に短縮することも確認された。登録患者の年齢(中央値)は50歳(範囲18歳~96歳)、登録時に酸素飽和度が93%以上、リスク因子としては肥満58%、50歳以上が51%、高血圧を含む心血管疾患36%だった。他にリスク因子として試験の登録基準では、喘息を含む慢性肺疾患、1型または2型糖尿病、透析患者を含む慢性腎障害、慢性肝疾患、免疫抑制状態などが示されている。無作為化前の7日以内に発症した、入院をしていない成人患者で、無作為化前の72時間以内に抗原検査もしくはRT-PCR検査によってSARS-CoV-2への感染が確認されたものの、COVID-19に対する治療は受けていない患者を対象としている。

 

先天性巨大色素性母斑、皮膚再生臨床試験で皮膚再生と母斑再発なしを確認 京大ほか、研究成果は、「Plastic and Reconstructive Surgery」のオンライン版に掲載

悪性腫瘍発生と整容面の問題から早期の母斑組織完全切除が望ましい

 京都大学は7月1日、先天性巨大色素性母斑に対する世界初の皮膚再生治療を実施し、皮膚の再生が可能で、母斑の再発もないことを確認したと発表した。この研究は、同大医学研究科の森本尚樹教授、国立循環器病研究センター研究所の山岡哲二部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Plastic and Reconstructive Surgery」のオンライン版に掲載されている。

 色素性母斑は、小さいものは一般に「ほくろ」と呼ばれる黒褐色のあざであり、母斑真皮中に存在する母斑細胞がメラニン色素を産生して黒褐色となっている。先天性巨大色素性母斑は、成人になったときに直径20cm以上(新生児では体部で直径6cm以上、頭部で9cm以上)の母斑で出生2万人に1人程度の発生があるとされている。先天性巨大色素性母斑は、母斑から悪性黒色腫が数%程度で発生すると報告されており、外観上の問題とともに生命予後に関しても問題となる。悪性黒色腫の発症は若年者に多く、発症する患者の70%が思春期までに発症するとも報告されており、悪性腫瘍の発生、および整容面の問題からも乳児期も含めたできるだけ早期に母斑組織を完全に切除することが望ましいと考えられている。

面積が大きいため植皮は困難、自家培養表皮は真皮がないと生着率不良

 巨大色素性母斑の治療上の問題は、母斑を切除した際に生じる大きな皮膚欠損の再建方法になる。巨大な皮膚欠損の再建は、患者自身から採取した自家皮膚移植(植皮)で行われるのが一般的だ。しかし、巨大色素性母斑の治療では、母斑が巨大であるほど植皮に利用できる健常な皮膚が少なく、母斑が完全には切除できないことが多く経験される。

 この先天性巨大色素性母斑の治療成績を向上させる目的で、自家培養表皮(ジェイス(R):株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)が2016年より保険適用となり、日本全国で先天性巨大色素性母斑の治療に使用できるようになった。自家培養表皮は2009年に重症熱傷に保険適用となった日本初の細胞使用製品(当時は医療機器として承認)で、患者の皮膚を1~2cm2採取すると、1か月程度で患者の全身を覆うことができる大きさの自家培養表皮が作製可能。ただし、自家培養表皮のみで治療が可能となったわけではない。皮膚は100~200μm程度の厚さの表皮と1~2mm程度の厚みのある真皮から構成される。自家培養表皮は真皮の上には良好に生着するが、真皮が欠損した創、つまり脂肪や筋膜、肉芽とよばれる結合組織の上にはほとんど生着しない。これは熱傷治療においても同じであり、真皮の再建のためにスキンバンクから提供される同種皮膚(屍体より採取した皮膚)や人工真皮(コラーゲンスポンジを主成分、国内に5製品あり)を用いた真皮の再構築が試みられているが、いまだに真皮再構築方法は確立されていない。

高圧処理で全細胞を死滅させた母斑組織そのもので真皮を再建

 そこで、研究グループは、母斑組織の細胞成分を不活化(殺細胞処理)し、残された真皮成分を再移植することで患者自身の真皮を再構築する新規治療方法の開発を行ってきた。母斑組織を用いて真皮再構築ができれば母斑切除部に移植するための皮膚を採取する必要がなくなり、より大きな母斑でも切除できるようになると考えられる。

現在、ある組織の細胞をすべて取り除く「脱細胞化処理」という概念があり、海外では脱細胞化皮膚が医療機器として市販されている。脱細胞化をする代表的な方法として、界面活性剤を用いて洗浄し、組織中の細胞成分をすべて取り除く方法がある。ただし、脱細胞化組織は毛細血管網がなくなっており、移植した場合の生着が悪くなってしまうこと、また他人の組織であるため、一旦生着しても徐々に吸収されてしまうという課題があり、いままで熱傷治療や母斑治療に広く用いられていなかった。

 そこで、研究グループが注目したのは高圧処理による殺細胞処理だ。高圧処理は食品加工分野で応用されており、食品のもつ風味や食感等を失うことなく殺菌、加工する方法として使われている。高圧処理は「加熱処理や薬剤処理と異なり、組織の深部まで均一に処理でき、また組織の構造を破壊しないやさしい処理」という特徴がある。研究グループは基礎検討の結果、200MPa(2000気圧)で10分間高圧処理を行えば、母斑組織中の全細胞が死滅するものの、真皮の構造は保たれることを確認した。また、母斑のメラニン色素も母斑細胞が死滅すれば徐々に吸収されることも確認した。今回の研究で実施のした高圧処理による殺細胞処理は脱細胞化処理と異なり、細胞そのものは除去しない。

9例全員で移植1年後に母斑細胞の残存なし、黒い色は徐々に消失

 これらの基礎研究の結果を受けて、関西医科大学附属病院で2016年2月~2018年8月までに10例の患者で同治療法を用いた世界初の臨床試験が実施された。この試験では、1回目の手術で対象部位の母斑を切除し、手術室の中で高圧処理による殺細胞処理を行い、再移植した。2~3週間後に2回目の手術を行い、自家培養表皮を生着した高圧処理母斑の上に移植。その後、最初の手術から1年後まで経過を観察した。1例の患者は試験途中で脱落となったが、残り9例全員で、移植1年後の組織生検の結果、母斑細胞の残存がないこと、黒い色は徐々に消えていくことが確認された。

 課題としては、不活化した母斑組織の生着が一定ではないこと、再建した皮膚が拘縮あるいは肥厚性瘢痕を生じることがあり、術後半年くらいまでは強くみられることが観察された。このような課題はあるものの、この治療法を行えば、母斑組織と自家培養表皮を用いて母斑切除後の皮膚欠損を治療できることが明らかになった。これは、いままでの同種皮膚や人工真皮を用いた治療では得られなかった結果だ。

高圧殺細胞装置の医師主導治験へ

 この治療法は腫瘍組織である母斑組織を圧力という物理的な方法を用いて殺細胞処理を行った後に自家皮膚の再建に用いる画期的な方法。同じ考えの治療法として、整形外科分野では、悪性腫瘍のために切除した骨を液体窒素に20分つける殺細胞処理を行った後に自分の骨の再建に用いる手技があり、2019年度から保険適用されている。高圧処理は10分間というさらに短時間で処理が可能で、硬い組織である骨でも組織の内部まで均一に殺細胞処理できるという特徴がある。同治療法を保険適用された治療法とするためには、まずは、高圧処理装置が医療機器として承認を取得する必要がある。現在、研究グループは2021年度に京都大学医学部附属病院で承認取得のための医師主導治験を開始することを目標に、準備を行っているという。また、さらに基礎研究を行い、母斑だけではなく、皮膚の悪性腫瘍、あるいは骨や軟骨、神経などの悪性腫瘍の組織に対しても同治療法が有効であることを確認する予定だとしている。

 同治療法を用いた「腫瘍組織の再利用」が広く行われるようになれば、今までのように再建手術のために健康な自家組織を採取する必要がなくなり、手術を受ける患者のQOL向上に寄与すると予想される。ただし、細胞を死滅させた組織の移植になり、生きている組織と比べると生着が悪いため、今後は移植方法の検討、あるいは細胞を組み込む工夫などが必要になると考えられるという。

 近年、再生医療が注目されているが、ほとんどの再生医療は細胞治療にとどまっており、ある程度の大きさの組織や臓器の再生は実現されていない。動物実験レベルの基礎研究では皮膚の再生が確認されているものもあるが、ヒトのきれいな皮膚を再生させることはまだまだ不可能だ。研究グループは、「われわれの成果がさらに発展し、完全な皮膚再生ができる日まで研究を続けたいと考えている」と、述べている。

 

科研製薬 熱傷焼痂除去剤「KMW-1」を承認申請 深達性II度、III度熱傷の壊死組織を除去

 科研製薬は6月28日、熱傷焼痂除去剤「KMW-1」(開発コード)を日本で承認申請したと発表した。入院が必要な重症熱傷を指す深達性II度又はIII度熱傷を対象とした外用薬。熱傷部位に塗布して4時間後に除去することで、健常な組織を温存したまま、焼痂と呼ばれる壊死組織を選択的に簡便かつ速やかに除去できるとしている。申請に用いた国内第3相臨床試験結果の詳細は現時点では開示されていない。

 KMW-1はイスラエルのメディウンド社の創製品で、科研は日本の独占的な開発販売権を持つ。KMW-1は厚労省から希少疾病用医薬品に指定されている。

 熱傷部位では焼痂とよばれる壊死組織が生じる。重症熱傷の治療は、できるだけ早期に焼痂を除去することが臨床的に重要な第一歩と考えられており、現在の標準的治療では外科的に焼痂を除去している。

 KMW-1はパイナップル茎由来のタンパク質分解酵素を有効成分とする外用の酵素製剤。KMW-1凍結乾燥品と混合用ゲルを混合し、用時調製したKMW-1製剤を対象創に塗布する。塗布開始4時間後に除去すると、壊死組織が選択的に除去される。国内第3相試験の適格基準は、▽入院患者▽深達性II度又はIII度熱傷の総熱傷面積が3%TBSA以上の患者▽浅達性II度、深達性II度又はIII度熱傷の総熱傷面積が30%TBSA以下の患者――とし、目標症例数は36例として実施した。主要評価項目は壊死組織が完全除去された被験者の割合とした。

 科研は、「外科的な除去と比較して健常な組織に障害を与えることなく壊死組織を簡便かつ速やかに除去することから、医療関係者や患者さんの負担軽減に寄与することが期待される」としている。

 

コメント:

ブロメラインのような薬剤ですね。

 

SJS/TEN発症に関わる新規分子「lipocalin-2」「LL-37」を同定 山梨大ほか、研究成果は、「Science Translational Medicine」に掲載

SJS/TEN患者の血液・皮膚における好中球を観察

 山梨大学は7月1日、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)の新規発症メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院皮膚科学講座の木下真直助教、小川陽一講師(責任著者)、川村龍吉教授と新潟大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の濱菜摘講師、阿部理一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Translational Medicine」に掲載されている。

 SJS/TENは、薬剤を使用することによって全身の皮膚や粘膜が壊死してしまい、診断・治療が遅れれば死に至る疾患で、厚生労働省の定める指定難病だ。これまでSJS/TENは、原因となる薬剤に特異的な細胞傷害性T細胞の産生する分子によって皮膚や粘膜が傷害されると考えられてきた。一方、SJS/TEN患者では時に血液中の好中球が減少する。このことから研究グループは、好中球に何らかの異常があるのではないかと考え、SJS/TEN患者の血液・皮膚における好中球を観察した。

SJS/TENに関わりがないと思われていた好中球が発症・増悪に関与

 まず、SJS/TEN患者の血液中の好中球を、健康な人や命に関わらないタイプの薬剤アレルギーの患者の好中球と比較。その結果、明らかな形態異常が存在することがわかった。また、この形態異常は好中球のneutrophil extracellular traps(NETs)の形成によるものであることがわかった。

 NETsは、好中球が細菌などの侵入に際して、自身の細胞内にあるタンパク質を細胞外に放出し、細菌を捕捉・死滅させるための機構。SJS/TEN患者の皮膚に好中球は存在しないとこれまで信じられてきたが、実際には発症早期から好中球が侵入することがわかった。

 具体的には、皮膚に侵入した好中球は、同様に皮膚に侵入した原因薬剤に特異的な細胞傷害性T細胞の産生する分子lipocalin-2の作用によってNETsを形成する。NETsの中に含まれる分子LL-37が、表皮細胞に受容体formyl peptide receptor1(FPR1)の発現を誘導。FPR1を発現する表皮細胞は、単球が産生する分子annexin A1の作用によってネクロプトーシスという細胞死に陥る。ネクロプトーシスに陥った表皮細胞は、さらにLL-37を産生し、周囲の表皮細胞にFPR1発現を誘導。連続的に、表皮細胞死のループが発動することがわかったという。

 LL-37は、lipocalin-2と同様に、好中球や上皮細胞が産生するとされる抗菌作用のあるタンパク質だ。今回の研究から、これまでSJS/TENに関わりがないと思われていた好中球が、SJS/TEN発症・増悪に関与することが明らかとなった。

SJS/TEN早期確定診断ができる可能性

 SJS/TENの死亡率の高さは、早期診断の難しさが原因の1つだ。今回、SJS/TEN発症に関与する新しい分子(lipocalin-2、LL-37)が発見されたことで、これらを測定し、SJS/TEN診断を早期に確定できるようになる可能性がある。

 また、lipocalin-2、LL-37機能を抑制する薬剤が開発できればSJS/TENの新規治療薬となることが期待される、と研究グループは述べている。

 

開発段階のヘルペス治療薬、動物実験で有望な結果 再発リスクが抑えられる可能性も示される

 開発段階にある薬剤が、口唇ヘルペス性器ヘルペスなどを引き起こす単純ヘルペスウイルス(HSV)の活動性感染だけでなく、再発リスクも抑える可能性のあることが、動物を用いた研究で示された。研究の詳細は、同薬を開発しているInnovative Molecules GmbH(ドイツ)のCEOであるGerald Kleymann氏らにより、「Science Translational Medicine」6月16日号に発表された。

 HSVには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)があり、感染者数は極めて多い。Kleymann氏によると、男女を問わず2人中1人以上がHSV-1に、ほぼ4人に1人がHSV-2に感染していると推定されている。HSV感染症の主な症状は、唇や目、皮膚、性器などに現れる痛みを伴う水ぶくれである。

 Kleymann氏は、「口唇ヘルペスによる唇の水ぶくれには社会的スティグマがあり、性器ヘルペスは性生活に支障をきたす」と指摘。また、「母親から新生児に感染すると、新生児の命に関わる可能性がある。眼への感染は視力障害の原因となり得るほか、免疫力の低下した臓器移植患者では、感染により死亡リスクが高まる。さらにまれなケースでは、ヘルペス脳炎を発症することもある」と説明する。

 最も厄介なのは、これらのウイルスに感染すると、生涯にわたって体内の神経細胞の中でウイルスが生き続け、何度も再発を繰り返す可能性があることだ。Kleymann氏らによると、体内に潜むHSVは、患者の約30%に再発を引き起こすと推定されている。

 HSV感染症に対しては、ゾビラックス(一般名アシクロビル)やバルトレックス(一般名バラシクロビル)、ファムビル(一般名ファムシクロビル)などの治療薬があるが、これらは症状を緩和するだけだ。これに対して、今回報告された薬剤のIM-250は、疾患を完全に治すことを目指している。では、どのようにして治癒に至るのか。IM-250はヘリカーゼ・プライマーゼ複合体阻害薬である。ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体はHSV由来の酵素で、ウイルスのDNA複製に必須である。本薬剤は、この酵素の活性を阻害することにより、HSVの増殖を阻止することを目的としている。

 今回、Kleymann氏らは、HSV-1感染マウスおよびHSV-2感染モルモットを用いて、この薬剤の効果を検証した。その結果、致死性の感染症を起こしたマウスでは、IM-250投与により、用量依存的に体内のウイルス量が減少しただけでなく、生存期間の延長も確認された。一方、性器ヘルペスを想定してHSV-2に感染させたモルモットを使った実験では、急性期での治療効果と、潜伏感染に対する治療効果の双方が検証された。その結果、IM-250は症状の重症化を有意に抑制しただけでなく、再発リスクも低下させることが示された。また、この再発リスクの抑制効果は、治療を終えた後も持続していた。さらに、IM-250は現行の標準的な治療薬に抵抗性を示すHSV感染例にも有効である可能性が示された。

 今回のKleymann氏らの報告を受け、この研究には関与していない米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのAmesh Adalja氏は、「有望な結果だ」と評価する。同氏は、「現行の治療薬は感染症の重症度を低下させることはできるが、神経細胞に潜伏感染したウイルスを排除することはできない。その結果、こうしたウイルスが再発を引き起こすことになる」と指摘。「残存するヘルペスウイルスを減らすことのできる薬剤が開発されれば、ヘルペスの治療は大きく前進するだろう」と述べている。

 ただし、Adalja氏は、今回の結果が動物実験に基づくものであることに言及し、「ヒトでも同じ結果が再現されるかどうかについては、今後検証する必要がある」としている。