デルマニアのブログ

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1~4歳児のピーナツアレルギーに対する舌下免疫療法は安全かつ有効 米研究より

 1~4歳児のピーナツアレルギーに対する舌下免疫療法(sublingual immunotherapy;SLIT)は、安全かつ効果的に脱感作が得られ、またその効果は本療法終了後も3カ月は維持されることを明らかにしたランダム化比較試験の結果が、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に10月10日掲載された。

 米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のEdwin H. Kim氏らは、1~4歳児50人(平均年齢2.4歳、女児44%)を対象にランダム化比較試験を実施し、ピーナツアレルギーに対するSLITの安全性と有効性を検討した。対象児は、36カ月にわたってピーナツ蛋白質によるSLITを受ける群(25人、以下SLIT群)とプラセボ(オート麦)を使ったSLITを受ける群(25人、以下プラセボ群)にランダムに割り付けられた。SLITは、2.5μgのピーナツタンパク質の1日1回投与(舌下に2分間置き、その後飲み込む)から開始し、投与量を4カ月ごとに漸増して最終的に維持量である4mgに到達させた。治療開始後36カ月の時点で、ピーナツタンパク質を順に3、10、30、100、300、1,000、3,000mg(最高累積耐容量4,443mg)投与する二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)を実施することで脱感作の評価を行った。この際、全量を摂取して、2時間以内に所定の「中止基準」を満たさなかった場合を「合格」とした。累積耐容量が443mg以上に達した児は治療を終了し、その3カ月後(治療開始から39カ月後)に再度DBPCFCを実施して、寛解(効果が維持されている)であるか否かの評価を行った。

 36カ月後のDBPCFCを完了したのは、SLIT群の76%(19人)とプラセボ群の68%(17人)で、前者の64%(16人)、後者の16%(4人)が39カ月後のDBPCFCを完了した。累積耐容量の中央値は、SLIT群の方がプラセボ群に比べて有意に高く(4,443mg対143mg、P<0.0001、t検定)、合格した率も有意に高かった〔ITT解析60%対0%、per protocol(PP)解析79%対0%、いずれもP<0.0001、t検定)。39カ月後における寛解率も高かった(ITT解析48%対0%、PP解析63%対0%、いずれもP=0.0005、t検定)。

 DBPCFCと免疫学的変化を対象児の年齢別(ベースライン時)に検討したところ、脱感作および寛解率は、1~2歳児(脱感作、寛解の順に、ITT解析:75%、58%、PP解析:100%、78%)、2~3歳児(ITT解析:50%、33%、PP解析75%、50%)、3~4歳児(ITT解析:43%、43%、PP解析50%、50%)の順に高く、低年齢ほど良好だった。

 さらに、PP解析の対象となった者について、多重比較用Dunnett混合効果モデルを適用し、ピーナツ皮膚プリックテスト(SPT)、ピーナツ特異的免疫グロブリンIgG4、ピーナツ特異的IgG4/IgE比の経時的変化(12、24、36カ月後)を検討したところ、SLIT群ではSPTの膨疹径(mm)がベースライン時に比べて治療開始からいずれの時点でも有意に縮小していたが(同順でP=0.0012、P=0.0003、P<0.0001)、プラセボ群では有意な変化は認められなかった。ピーナツIgG4の中央値については、プラセボ群で経時的な低下が認められたが有意ではなかったのに対し、SLIT群ではいずれの時点でも有意な上昇が認められた(同順でP=0.030、P=0.003、P=0.004)。ピーナツ特異的IgG4/IgE比については、12カ月後では有意な変化はなかったが、SLIT群で24カ月後と36カ月後に有意に上昇し(同順でP=0.029、P=0.017)、プラセボ群では有意な変化はなかった。

 安全性に関しては、一般化推定方程式とFisher正確検定を使用してSLIT群とプラセボ群の比較を行った。SLIT群で口腔咽頭のかゆみの報告件数がプラセボ群よりも多かったが(80%対28%、P=0.0005)、皮膚、胃腸、上気道、下気道、および症状が複数の器官・臓器にわたる有害事象の発生頻度は両群間で同程度だった。

 Kim氏は、「この研究で確認された脱感作レベルは予想以上に高く、経口免疫療法で通常得られるレベルと同等だった。また、この治療法による効果がすぐに消失することはなく、治療中止から3カ月が経過しても60%以上で脱感作が維持されていたことも重要だ」と同大学のニュースリリースで述べている。

 なお、複数の著者が、製薬企業やバイオテクノロジー企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。