デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

アトピー性皮膚炎に対し、ウパダシチニブ(リンヴォックⓇ)が適応追加

本日2021年8月25日、アッヴィのリンヴォックがアトピー性皮膚炎に対し適応追加となりました。

ちなみに12歳から使えます。

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2021年12月にはファイザーのアブロシチニブがアトピー性皮膚炎に対し適応追加となるため、アトピー性皮膚炎に対するJAK阻害薬は3剤になりますね。

アブロシチニブは12歳以上の小児に対して、100mgと200mgの両方が使えるようになる予定です。

データをみる限りでは、重症から順にウパダシチニブ→アブロシチニブ→バリシチニブと使い分けていく感じになるでしょうか。アブロシチニブは高い効果の割には安全性の高いバランスの良いクスリだなと思っています。

 

異種ワクチン接種、AZ/ファイザーとファイザー/AZの有効性と安全性/Lancet

 アデノウイルスベクターワクチン(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製、ChAd)とmRNAワクチン(BNT162b2、Pfizer-BioNTech製、BNT)の異なるワクチンを用いた接種法について、BNT/ChAd接種法はBNT/BNT接種法に対する非劣性基準を満たさなかったが、BNT/ChAdおよびChAd/BNTの2つの異種接種法はいずれもChAd/ChAd接種法と比べて、SARS-CoV-2抗スパイクIgG値が高く、COVID-19疾患および入院に対して有効であることが示された。英国・オックスフォード大学のXinxue Liu氏らが同種vs.異種COVID-19ワクチンプライムブースト接種法の安全性と免疫原性を検討した参加者盲検無作為化非劣性試験「Com-COV試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「ChAd/ChAdと比べてBNT/ChAdの免疫原性は高いことに加えて、今回の試験データは、ChAdおよびBNTを用いた異種プライムブーストワクチン接種を柔軟に行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年8月6日号掲載の報告。

4週または12週間隔のChAd/ChAd、ChAd/BNT、BNT/BNT、BNT/ChAd接種法を比較

 Com-COV試験の適格被験者は、併存疾患なし/治療中、SARS-CoV-2感染歴がない(検査で確認)50歳以上で、英国8地点で集められた。適格被験者の大半が一般コホート(28日[4週間]間隔または84日[12週間]間隔)に登録され、4週または12週間隔でChAd/ChAd、ChAd/BNT、BNT/BNT、BNT/ChAdのいずれかを受ける8群に無作為に割り付けられた(1対1対1対1対1対1対1対1)。

 適格被験者の最小サブセット(100例)を免疫評価コホートに登録し、追加で血液検査を行い免疫反応を評価。これらの被験者は、無作為に4つのスケジュール群(4週間隔のみ)に割り付けられた(1対1対1対1)。

 被験者は接種されたワクチンについてはマスクされたが、接種スケジュールはマスクされなかった。

 主要評価項目は、2回目接種後28日時点のSARS-CoV-2抗スパイクIgG値(ELISAで測定)の幾何平均比(GMR)で、ChAd/BNT vs. ChAd/ChAd、BNT/ChAd vs. BNT/BNTを比較した。異種接種法の同種接種法に対する非劣性マージンは、GMRの97.5%信頼区間(CI)下限値が0.63超の場合とした。

 主要解析は、ベースラインで血清陰性だった被験者を包含したper-protocol集団で行われた。安全性解析は、試験ワクチンを1回接種した全被験者を対象とした。

ChAd/BNT接種はChAd/ChAd接種に対して非劣性

 2021年2月11日~2月26日間に、830例の参加者が登録・無作為化された。そのうち本論では、4週間隔で接種を受けた463例の結果が報告された。

 被験者の平均年齢は57.8歳(SD 4.7)、212例(46%)が女性、117例(25%)が少数民族であった。

 2回目接種後28日時点のSARS-CoV-2抗スパイクIgGのGMRについて、ChAd/BNT接種群(1万2,906ELU/mL)は、ChAd/ChAd接種群(1,392ELU/mL)に対して非劣性であった(GMR:9.2、片側97.5%CI:7.5~∞)。

 BNT接種を受けた被験者において、同種接種法(BNT/BNT、1万4,080ELU/mL)に対する異種接種法(BNT/ChAd、7,133ELU/mL)の非劣性は示されなかった(GMR:0.51、片側97.5%CI:0.43~∞)。

 すべての接種群で4つの重篤な有害事象が発生したが、いずれも免疫に関連しているとは見なされなかった。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

Delta株に対する現状ワクチンの予防効果―液性免疫、細胞性免疫からの考察

ワクチン接種後のDelta株などVOCに対する中和抗体価の動態

 新型コロナ感染症にあって、感染性、病原性が高いVariants of Concern(VOC:Alpha株、Beta株、Gamma株、Delta株)が世界を席巻している。その中で、5月以降、Delta株(インド株、B.1.617.2)の勢力が増し、世界に播種するウイルスの中心的存在になりつつある。現状で使用可能なワクチンは武漢原株のS蛋白遺伝子配列をplatformとして作成されたものであり、S蛋白に複数の遺伝子変異を有するVOCに対して、どの程度の予防効果を発揮するかについては注意深い検証が必要である。本論評では、WallらとEdaraらの2つの論文を基に、Delta株を中心にVOCに対する現状のワクチンの効果を液性免疫(中和抗体)、細胞性免疫(T細胞反応)の面から考察する。

 VOCに対する液性免疫(主としてS蛋白に対する特異的IgG抗体によって形成されるウイルス中和抗体)に関して、WallらはBNT162b2(Pfizer社)の2回接種後28日目における変異株に対する中和抗体価は、武漢原株/野生株に対するものに比較して、D614G株(従来株)で2.3倍、Alpha株(英国株)で2.6倍、Beta株(南アフリカ株)で4.9倍、Delta株(インド株)で5.8倍低下していると報告した(論文の補遺参照)。さらに、各中和抗体価の時間推移(2回目ワクチン接種後100日目まで)は、D614G株、Alpha株で時間経過にかかわらずほぼ一定に維持されていたのに対し、Beta株、Delta株では時間経過と共に低下し、少数ではあるが100日後の中和抗体価が検出限界以下になる症例が認められた。さらに、Beta株、Delta株に対する中和抗体価の時間推移は年齢と負の相関を示し、中和抗体価の低下速度は高齢者ほど大きいことが示された。同様の中和抗体価の年齢依存性は、BNT162b2接種後のGamma株に対しても報告されている(Bates TA, et al. JAMA. 2021 Jul 21. [Epub ahead of print])。

 これらの結果は、Alpha株には強力な液性免疫回避作用を惹起する遺伝子変異が存在しないが、Beta株、Gamma株ではE484K変異、Delta株ではL452Rを中心とする強力な液性免疫回避変異が存在することから説明可能である。同様の結果はEdaraらによっても、RNAワクチン(Pfizer社のBNT162b2あるいはModerna社のmRNA-1273)2回接種後のDelta株に対する中和抗体価は野生株に対する中和抗体価に比べ、BNT162b2接種後で3.3倍、mRNA-1273接種後で3.0倍低下していると報告された。AstraZeneca社のChAdOx1の2回接種後における中和抗体価は、BNT162b2ワクチン2回接種後の値に比べ、いかなるウイルス種に対しても2倍以上低いことが示された(Wall EC, et al. Lancet. 2021;398:207-209.)。

Delta株に対する3回目ワクチン接種の必要性

 今後、世界各地で感染拡大が予想されるDelta株に対する中和抗体価の維持は、本変異株に対する予防を確実にするうえで最重要課題の1つである。Pfizer社は、BNT162b2の2回接種後8ヵ月間はDelta株に対する中和抗体価がほぼピーク値を維持するが、それ以降は低下するのでワクチン2回目接種6~12ヵ月後に、さらなるBooster効果を目指した3回目のワクチン接種が必要になると発表した(Pfizer社. 2021年7月28日報道)。Pfizer社は、Delta株に対する中和抗体価が3回目ワクチン接種により2回目接種後に比べ、18~55歳の対象で5倍以上、高齢者で11倍以上増強されると報告した。以上の結果を基に、Pfizer社は8月中にも米国FDAに3回目ワクチン接種の緊急使用許可を申請するとのことである。

 ワクチン3回接種はModerna社のRNAワクチンにおいても試みられており、mRNA-1273の2回接種終了5.6~7.5ヵ月後に3回目のワクチンを接種した場合に(3回目のワクチン:mRNA-1273、Beta株のS蛋白遺伝子配列をplatformとして作成されたmRNA-1273.351、あるいは両者のカクテル)、Beta株、Gamma株に対する中和抗体価が、各々、32~35倍、27~44倍上昇することが示された(Wu K, et al. medRxiv. 2021.May 6.)。AstraZeneca社のChAdOx1においても、2回目接種から6~12ヵ月後に3回目の接種を行うことによってAlpha株、Beta株、Delta株に対する中和抗体価が再上昇することが示された(Flaxman A, et al. SSRN. 2021 Jun 28.)。今後のDelta株制御を考えた場合、現状ワクチンの3回接種、あるいは、Delta株のS蛋白遺伝子配列をplatformにした新たなワクチン開発が切望される。

ワクチン惹起性液性免疫の発現機序

 中和抗体の中核を成すS蛋白に対する特異的IgG抗体を産生する形質細胞数は、2回目のワクチン接種後約1週間でピークに達し、3週間以内にその90%が消失する。それ故、このような短命の形質細胞は“Short-lived plasma cell”と呼称される。しかしながら、S蛋白特異的IgG抗体産生はワクチン接種後少なくとも8ヵ月にわたり持続することが判明しており、この現象は、免疫組織(脾臓、リンパ節)の胚細胞中心において形成されたS蛋白を特異的に認識する記憶B細胞に由来する長期生存形質細胞(Long-lived plasma cell)の作用だと考えられている(Turner JS, et al. Nature. 2021;596:109-113.)。上述したように、現状ワクチンは、Delta株など免疫回避作用を有する変異株に対してS蛋白特異的IgG抗体産生能力が低く、かつ、低下の速度が速いため3回目接種による抗体産生の底上げを考慮する必要がある。

ワクチン惹起性細胞性免疫の発現機序

 ワクチンの予防効果を規定するもうひとつの重要な因子は、T細胞由来の細胞性免疫の賦活である。ワクチン接種はS蛋白のみを産生するので自然感染の場合と異なりウイルス全長ではなく、S蛋白を構成する種々のアミノ酸配列を抗原決定基(epitope)として細胞性免疫が惹起される。S蛋白は1,273個のアミノ酸で形成されており、たとえば、Delta株ではこのアミノ酸配列の8ヵ所に遺伝子変異が存在するが、Delta株のS蛋白アミノ酸配列は武漢原株/野生株と99%以上の相同性を維持している。CD4-T細胞反応、CD8-T細胞反応を規定する抗原決定基はS蛋白に数多く存在し、それらは、種々のコロナウイルス間で、各々、84.5%、95.3%の相同性が維持されている。その結果、変異株を含む種々のコロナウイルスに対するCD4-T細胞反応、CD8-T細胞反応は、ウイルスの種類によらずほぼ同一レベルに保持される(Tarke A, et al. bioRxiv. 2021.02.27.433180.)。ワクチン接種後の細胞性免疫の持続期間に関しては不明な点が多いが、Barouchらは、野生株を用いた解析ではあるが、細胞性免疫が液性免疫と同様に少なくとも8ヵ月は維持されることを示した(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021 Jul 14. [Epub ahead of print])。

液性免疫と細胞性免疫によって決定されるワクチンの予防効果

 以上を総括すると、Delta株を中心とするVOCでは、液性免疫回避変異が少ないAlpha株を除き、液性免疫は著明に低下、しかし細胞性免疫はほぼ維持されるものと考えることができる。この事実を基にreal-world settingでの各ワクチンのDelta株に対する発症予防効果を見てみると、BNT162b2の発症予防効果はAlpha株に対して93.7%、Delta株に対して88%、ChAdOx1の発症予防効果はAlpha株に対して74.5%、Delta株に対して67.0%と報告された(Lopez Bernal J, et al. N Engl J Med. 2021;385:585-594.)。他の報告でも傾向は同じで、Delta株に対するワクチンの発症予防効果はAlpha株に対する発症予防効果の94%(BNT162b2)あるいは90%(ChAdOx1)前後であり、液性免疫(中和抗体価)の低下からは説明できない。液性免疫のみによってワクチンの効果が規定されるのであれば、
Delta株に対する発症予防効果はAlpha株に対する値の45%前後にならなければならない。

 本論評で考察した内容は、変異株に対するワクチンの予防効果は、低下した液性免疫を細胞性免疫が補完していることを意味している。一方で、変異株に対するワクチン惹起性細胞性免疫がほぼ一定に維持されるという事実は、変異株に対するワクチンの予防効果を少しでも上昇させるためには、ワクチン作成、あるいは接種回数に工夫を凝らし、液性免疫を上昇させる以外に有効な手段がないことを物語っている。

 

アストラゼネカのコロナ薬、治験で有望な結果

【AFP=時事】英製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)は20日新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療や予防に用いる抗体医薬の臨床試験(治験)で、有望な結果が得られたと発表した。

 この抗体医薬「AZD7442」は2種類の抗体を組み合わせたもので、当初はすでにウイルスにさらされた患者の治療薬として開発されたが、その用法での治験では有意な効果は確認されなかった。

 アストラゼネカの発表によると、ウイルスにさらされていない5197人を対象に行われた新たな治験では、発症リスクが77%低減され、重症化例はなかった。

 米政府はAZD7442の開発に資金を提供しており、70万回分の供給を受けることで合意している。

 同社はデータを保健当局に提出し、緊急使用許可または条件付き承認を目指す方針。

 

ワクチン3回で2回より発症86%減 ファイザー製調査

 新型コロナウイルスファイザー製ワクチンをめぐり、イスラエルの保健機構は18日、3回目の接種に効果があったとする暫定的な調査結果を発表した。60歳以上の場合、3回目の接種をした人は2回接種の人に比べ、発症を86%減らす効果があったという。

 イスラエルでは今月1日、2回目の接種から5カ月以上が経過した60歳以上を対象に3回目のワクチン接種を始め、すでに60歳以上の半数以上が3回目の接種を終えた。現在は対象を50歳以上に拡大している。

 イスラエルでワクチン接種を担う保健機構「マッカビ」によると、60歳以上で3回目を接種して1週間以上たった人と、1~2月に2回のみ接種した人を比較調査したところ、前者は後者に比べ、発症した人が86%少なかった。3回接種した14万9千人超のうち陽性反応を示したのは37人にとどまった一方、2回のみ接種した67万5千人超のうち1064人が陽性となったという。

 調査を行った専門家は、「3回目の接種は、感染を防ぐにも重症化を防ぐにも有効であることが示された。3回目の接種が感染拡大を抑える解決策だ」としている。

 

 

アトピー性皮膚炎に対するウパダシチニブ(リンヴォックⓇ) vs デュピルマブ(デュピクセントⓇ)

デュピルマブとの直接比較試験で、皮疹と痒みを有意に改善

 

 米・Oregon Medical Research CenterのAndrew Blauvelt氏らは、全身療法の対象となる中等症・重症の成人アトピー性皮膚炎患者692例を対象に、経口JAK阻害薬ウパダシチニブとヒトモノクローナル抗体デュピルマブで安全性と有効性を直接比較する第Ⅲb相多施設二重盲検ダブルダミー実薬対照ランダム化試験Heads Upを実施。その結果、皮疹の消失と痒みの改善において、ウパダシチニブのデュピルマブに対する優越性が示されたとJAMA Dermatol(2021年8月4日オンライン版)に発表した。ウパダシチニブは国内で昨年(2020年)10月にアトピー性皮膚炎に対する適応追加の申請が行われており、早ければ年内に承認される見通しだ。

デュピルマブより早期から効果を発現

 同試験では、22カ国129施設で中等症・重症アトピー性皮膚炎の成人患者692例を登録し、ウパダシチニブ30mgを1日1回経口投与する群(348例、平均年齢36.6歳、男性52.6%)とデュピルマブ300mgを2週間に1回皮下注射する群(344例、同36.9歳、56.4%)に1:1でランダムに割り付け、24週間治療した。ダブルダミーとして、全例に一方のプラセボを投与した。

 主要評価項目とした、投与16週時に湿疹面積・重症度指数(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI75)を達成した患者の割合は、デュピルマブ群の61.1%に対しウパダシチニブ群では71.0%で、デュピルマブに対するウパダシチニブの優越性が示された(調整後群間差10.0%、95%CI 2.9~17.0%、P=0.006、)。

図. EASI75/90/100達成率およびNRSスコアのベースラインからの変化率

JAMA Dermatol 2021年8月4日オンライン版

 副次評価項目の解析では、全項目でウパダシチニブの優越性が示され、デュピルマブと比べて早期から効果を発揮することが示された。具体的には、ウパダシチニブ群はデュピルマブ群と比べ、2週時のEASI75達成率(43.7% vs. 17.4%、P<0.001)、痒みの評価尺度(NRS)スコア〔0(痒みなし)~10(最悪の痒み)〕のベースラインから1週時までの変化率(-31.4% vs. -8.8%、P<0.001)が有意に高かった。NRSスコアの有意な改善は16週時まで維持されていた(-66.9% vs. -49.0%、P<0.001)。

3割弱がEASI100達成、今後の治療目標になる可能性も

 また、ウパダシチニブ群ではデュピルマブ群と比べて16週時のEASI90達成率(60.6% vs. 38.7%、P<0.001)、皮疹の完全消失を示すEASI100達成率(27.9% vs. 7.6%、P<0.001)が有意に高く、改善レベルが極めて高いことが示された。

 なお、投与2週時におけるEASI90達成率は、ウパダシチニブ群とデュピルマブ群でそれぞれ18.5%、5.8%、また4週時点でのEASI100達成率は8.3%、1.7%と、ウパダシチニブは即効性があることも示された。

 これらの結果について、Blauvelt氏らは「乾癬の治療においては近年、治療薬の有効性が向上したことから、乾癬重症度指標(Psoriasis Area Severity Index)の75%以上の改善(PASI75)であった治療奏効の指標が、90%以上の改善(PASI90)および病変の完全消失(PASI100)に移ってきている。今後、アトピー性皮膚炎の治療においても同様の傾向が予想される」との見解を示している。

ウパダシチニブ群では痤瘡が15.8%、デュピルマブ群では結膜炎が8.4%

 安全性の評価において、16週時までに最も多く報告された有害事象は、ウパダシチニブ群では痤瘡(15.8%、デュピルマブでは2.6%)、デュピルマブ群では結膜炎(8.4%、ウパダシチニブ群では1.4%)だった。重篤な有害事象の発現率は、ウパダシチニブ群で2.9%、デュピルマブ群で1.2%だった。

 デュピルマブ群と比べてウパダシチニブ群で発現率が高かったものは、重篤感染症(0.6% vs. 1.1%)、疱疹性湿疹(0% vs. 0.3%)、帯状疱疹(0.9% vs. 2.0%)、肝機能障害(1.2% vs. 2.9%)、貧血(0.3% vs. 2.0%)、好中球減少症(0.6% vs. 1.7%)、クレアチニンホスホキナーゼ上昇(2.9% vs. 6.6%).

 悪性腫瘍は両群とも1例ずつ報告された。デュピルマブ群では角化棘細胞腫が69歳の例で、ウパダシチニブ群では投与16週以降に浸潤性乳管がんが68歳の例で報告された。リンパ腫の発症は両群ともになかった。

 以上の結果から、Blauvelt氏らは「中等症・重症の成人アトピー性皮膚炎患者において、ウパダシチニブは忍容性が高く、デュピルマブと比べて高いレベルで皮疹の消失および痒みの改善をもたらし、投与早期から効果を発揮した」と結論している。

アトピーにコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の移植が有望

 中等症ないし重症の成人アトピー性皮膚炎患者11例を対象に、抗菌作用のある自己由来コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS-AM+)の移植による黄色ブドウ球菌抑制および疾患重症度改善効果を無作為化二重盲検臨床試験で検討。各患者の非病変皮膚のスワブ培養のCoNS(濃度:107コロニー形成単位/g)を同じ患者の前腕部に塗布するCoNS-AM+群と、対照の基剤群に患者を無作為に割り付け、1週間塗布後の黄色ブドウ球菌の存在量を評価した。

 その結果、病変部皮膚上の黄色ブドウ球菌コロニー形成は、CoNS-AM+群(ベースライン時に対するlog10比の平均値-1.702、95%CI -2.882--0.523)の方が、基剤群(同0.671、-0.289-1.613、P=0.01)に比べて99.2%減少した。11日目に評価された湿疹面積・重症度指数のスコアは、CoNS-AM+群(平均変化率-48.45、95%CI -84.34--12.55)の方が、基剤投与群(同-4.52、-36.25-27.22、P=0.04)よりも有意に改善した。両群とも有害事象は見られなかった。