デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

アトピー性皮膚炎に対するウパダシチニブ(リンヴォックⓇ) vs デュピルマブ(デュピクセントⓇ)

デュピルマブとの直接比較試験で、皮疹と痒みを有意に改善

 

 米・Oregon Medical Research CenterのAndrew Blauvelt氏らは、全身療法の対象となる中等症・重症の成人アトピー性皮膚炎患者692例を対象に、経口JAK阻害薬ウパダシチニブとヒトモノクローナル抗体デュピルマブで安全性と有効性を直接比較する第Ⅲb相多施設二重盲検ダブルダミー実薬対照ランダム化試験Heads Upを実施。その結果、皮疹の消失と痒みの改善において、ウパダシチニブのデュピルマブに対する優越性が示されたとJAMA Dermatol(2021年8月4日オンライン版)に発表した。ウパダシチニブは国内で昨年(2020年)10月にアトピー性皮膚炎に対する適応追加の申請が行われており、早ければ年内に承認される見通しだ。

デュピルマブより早期から効果を発現

 同試験では、22カ国129施設で中等症・重症アトピー性皮膚炎の成人患者692例を登録し、ウパダシチニブ30mgを1日1回経口投与する群(348例、平均年齢36.6歳、男性52.6%)とデュピルマブ300mgを2週間に1回皮下注射する群(344例、同36.9歳、56.4%)に1:1でランダムに割り付け、24週間治療した。ダブルダミーとして、全例に一方のプラセボを投与した。

 主要評価項目とした、投与16週時に湿疹面積・重症度指数(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI75)を達成した患者の割合は、デュピルマブ群の61.1%に対しウパダシチニブ群では71.0%で、デュピルマブに対するウパダシチニブの優越性が示された(調整後群間差10.0%、95%CI 2.9~17.0%、P=0.006、)。

図. EASI75/90/100達成率およびNRSスコアのベースラインからの変化率

JAMA Dermatol 2021年8月4日オンライン版

 副次評価項目の解析では、全項目でウパダシチニブの優越性が示され、デュピルマブと比べて早期から効果を発揮することが示された。具体的には、ウパダシチニブ群はデュピルマブ群と比べ、2週時のEASI75達成率(43.7% vs. 17.4%、P<0.001)、痒みの評価尺度(NRS)スコア〔0(痒みなし)~10(最悪の痒み)〕のベースラインから1週時までの変化率(-31.4% vs. -8.8%、P<0.001)が有意に高かった。NRSスコアの有意な改善は16週時まで維持されていた(-66.9% vs. -49.0%、P<0.001)。

3割弱がEASI100達成、今後の治療目標になる可能性も

 また、ウパダシチニブ群ではデュピルマブ群と比べて16週時のEASI90達成率(60.6% vs. 38.7%、P<0.001)、皮疹の完全消失を示すEASI100達成率(27.9% vs. 7.6%、P<0.001)が有意に高く、改善レベルが極めて高いことが示された。

 なお、投与2週時におけるEASI90達成率は、ウパダシチニブ群とデュピルマブ群でそれぞれ18.5%、5.8%、また4週時点でのEASI100達成率は8.3%、1.7%と、ウパダシチニブは即効性があることも示された。

 これらの結果について、Blauvelt氏らは「乾癬の治療においては近年、治療薬の有効性が向上したことから、乾癬重症度指標(Psoriasis Area Severity Index)の75%以上の改善(PASI75)であった治療奏効の指標が、90%以上の改善(PASI90)および病変の完全消失(PASI100)に移ってきている。今後、アトピー性皮膚炎の治療においても同様の傾向が予想される」との見解を示している。

ウパダシチニブ群では痤瘡が15.8%、デュピルマブ群では結膜炎が8.4%

 安全性の評価において、16週時までに最も多く報告された有害事象は、ウパダシチニブ群では痤瘡(15.8%、デュピルマブでは2.6%)、デュピルマブ群では結膜炎(8.4%、ウパダシチニブ群では1.4%)だった。重篤な有害事象の発現率は、ウパダシチニブ群で2.9%、デュピルマブ群で1.2%だった。

 デュピルマブ群と比べてウパダシチニブ群で発現率が高かったものは、重篤感染症(0.6% vs. 1.1%)、疱疹性湿疹(0% vs. 0.3%)、帯状疱疹(0.9% vs. 2.0%)、肝機能障害(1.2% vs. 2.9%)、貧血(0.3% vs. 2.0%)、好中球減少症(0.6% vs. 1.7%)、クレアチニンホスホキナーゼ上昇(2.9% vs. 6.6%).

 悪性腫瘍は両群とも1例ずつ報告された。デュピルマブ群では角化棘細胞腫が69歳の例で、ウパダシチニブ群では投与16週以降に浸潤性乳管がんが68歳の例で報告された。リンパ腫の発症は両群ともになかった。

 以上の結果から、Blauvelt氏らは「中等症・重症の成人アトピー性皮膚炎患者において、ウパダシチニブは忍容性が高く、デュピルマブと比べて高いレベルで皮疹の消失および痒みの改善をもたらし、投与早期から効果を発揮した」と結論している。