デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

ステロイド外用薬の長期使用で骨粗鬆症・骨折リスク上昇

 デンマークの全国レジストリを用いて、高力価ステロイド外用薬(TCS)の累積投与量と骨粗鬆症および骨粗鬆症骨折(MOF)リスクとの関連を後ろ向きコホート研究で検討。2003-17年に高力価TCS(モメタゾン累積投与量200g以上相当)の投与を受けた成人72万3251例を対象とした。

 その結果、骨粗鬆症とMOFいずれのリスクも累積投与量との間に用量・反応関係が認められ、参照群(TCS累積投与量200-499g)と比較すると、MOFのハザード比は累積投与量500-999gで1.01(95%CI 0.99-1.03)、1000-1999gで1.05(同1.02-1.08)、2000-9999gで1.10(同1.07-1.13)、10000g以上で1.27(同1.19-1.35)だった。このほか、累積TCS投与量が2倍になるたび、骨粗鬆症およびMOFの相対リスクが3%増加した(ハザード比1.03、95%CI 1.02-1.04)。人口寄与リスクは、骨粗鬆症で4.3%、MOFで2.7%だった。MOFの患者1例(454人・年)増加当たりの最低曝露量は1万gだった。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

コメント:

一般的に、ステロイド外用では骨粗鬆症のリスクを上昇させないとされてきましたが、リスクが上昇するとの報告がでました。

 

乳児のアトピー発症予防に早期保湿剤は無効

 スウェーデンの一般新生児集団(2397例)を対象に、生後2週からの皮膚保湿剤(入浴剤やクリーム)使用および生後12-16週からの早期補完食(落花生、牛乳、小麦、卵含む)開始によるアトピー性皮膚炎の発症抑制効果を集団2×2要因無作為化試験で検討した(ORAACLE試験)。

 その結果、主要評価項目の生後12カ月までのアトピー性皮膚炎の発症率は非介入群8%、皮膚保湿群11%(非介入群とのリスク差:3.1%、95%CI -0.3-6.5)、早期補完食群9%(同1%、-2.1-4.1)、両者併用群5%だった。介入に伴う安全性上の懸念は認められなかった。


pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

アトピーに経口JAK阻害薬abrocitinib併用が有効

 中等症ないし重症のアトピー性皮膚炎(AD)思春期児285例(年齢中央値15歳、男児50.9%)を対象に、局所療法と併用した経口ヤヌスキナーゼ(JAK)1阻害薬abrocitinibの有効性と安全性を第III相無作為化プラセボ対照試験で検討(JADE TEEN試験)。患者を1日1回、12週間のabrocitinib 200mg投与、100mg投与、プラセボ投与に割り付けた。主要評価項目は、12週時の研究者による包括的評価(IGA)スコア0点(皮疹消失)または1点(ほぼ消失)(IGA 0/1)および湿疹面積・重症度指数75%以上改善(EASI-75)を達成した患者の割合とした。

 その結果、プラセボ群と比べるとabrocitinib 200mg群および100mg群の方がIGA 0/1達成率(46.2%、41.6% vs. 24.5%、いずれもP<0.05)およびEASI-75達成率(72.0%、68.5% vs. 41.5%、いずれもP<0.05)が高かった。重篤な有害事象の発生率は、abrocitinib 200mg群1.1%、100mg群0%、プラセボ群2.1%だった。


pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

軽~中等症の新型コロナ治療薬sotrovimabを国内申請/GSK

 グラクソ・スミスクラインは9月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、sotrovimabについて同日付で国内における製造販売の承認申請を行ったと発表した。酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いCOVID-19患者を対象とし、点滴静注で用いる。海外第II/III相臨床試験(COMET-ICE試験)では、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者において、入院または死亡リスクが有意に低下することが示されており、厚生労働省に特例承認の適用を求めた。

 sotrovimabは、GSKとVir Biotechnology社が研究開発を行うSARS-CoV-2モノクローナル抗体。COMET-ICE試験に参加した1,057例全例の有効性に関する主要解析において、投与29日目までに24時間を超える入院または死亡がプラセボと比べ79%低減し(補正相対リスク減少)(p<0.001)、主要評価項目を達成したことが報告されている。

 本剤は、スパイクタンパク質の保存性の高い領域に結合することにより、薬剤耐性への高いバリア機能を備える。in vitro試験のデータでは、デルタ株やラムダ株などの懸念される変異株・注目すべき変異株に対して活性を維持することが示されているが、臨床に及ぼす影響はまだわかっておらず、データ収集と解析が続いている。

 sotrovimabを巡っては、米国で緊急使用許可(EUA)が発行されているほか、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会からはRegulation 726/2004のArticle 5(3)に基づき、肯定的な科学的見解を得ている。このほか、カナダ、イタリア、アラブ首長国連邦シンガポールなどでは一時的承認を、オーストラリアでは承認を取得している。

 

抗IgE抗体が慢性特発性蕁麻疹に最も有効 抗ヒスタミン薬の効果不十分な症例でのネットワークメタ解析

 慢性特発性蕁麻疹(CSU)に対する薬剤介入の効果を検討したランダム化比較試験(RCT)のメタ解析の結果、最も顕著な症状改善を示したのは抗IgE抗体製剤のligelizumabだった。また、オマリズマブでも中程度の改善が得られ、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(以下、H1拮抗薬)で効果不十分なCSUに対する抗IgE抗体製剤のベネフィットがあらためて確認された。タイ・Chiang Mai UniversityのSurapon Nochaiwong氏らがJAMA Darmatol2021年8月25日オンライン版)に報告した。

23件のRCT、2,480例のデータ解析

 CSUは、痒みや痛みを伴う原因不明の膨疹や血管性浮腫が6週間以上持続することを特徴とする。重症度が高く症状の発現が予測不能であるため患者のQOLを低下させ、社会経済状態にも悪影響を及ぼす。

 Nochaiwong氏らは、H1拮抗薬で効果不十分なCSUに対するさまざまな既存治療のリスクとベネフィットを検討するために、MEDLINE、Embase、PubMedなどの電子データベース、Google Scholar灰色文献、進行中の試験登録などから、青年・成人CSU患者を対象とした薬剤介入RCTを検索。システマチックレビューとランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。

 主要評価項目は、ベースラインからの蕁麻疹症状(瘙痒・膨疹)の変化および治療に対する不忍容性とし、副次評価項目は、ベースラインからの瘙痒重症度スコア・膨疹重症度スコアの変化、有害事象とした。

 23件のRCTから2,480例(平均年齢32.2~43.8歳)のデータを解析に組み入れた。RCTの内訳は、承認用量のH1拮抗薬のRCT 9件、承認用量のH1拮抗薬2~4倍のRCT 10件、複数の定義が混在したRCT 1件、定義不明瞭のRCT 3件だった。

 介入方法は18通りで、ligelizumabの3用量、オマリズマブの4用量の他、他の抗体医薬、シクロスポリンなどの免疫抑制薬、メトトレキサート、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ヒドロキシクロロキンなどの抗寄生虫薬などが使用された。

ligelizumab 72/240mgでベネフィット最大

 蕁麻疹症状の変化における標準化平均差は、ligelizumab 72mg が−1.05(95%CI −1.37~−0.73)、同240mgが−1.07(95%CI −1.39~−0.75)であり、オマリズマブ300mgが−0.77 (95%CI −0.91~−0.63)、同600mgが−0.59 (95%CI −1.10~−0.08)だった。

 リスクとベネフィットを考慮したネットワーク推定の結果、ligelizumab 72mgまたは240mgが最も有益な治療法で、オマリズマブ300mgまたは600mgが中等度の有益性と判定された。

 一方、効果量とエビデンスの質を考慮した結果、dapsone(ジアフェニルスルホン)、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、ligelizumab 24mg、オマリズマブ150mg、ザフィルルカストの有益性は小規模にとどまり、その他の介入方法は効果不十分または有害事象リスクが高いと判定された()。

図. CSUに対する薬剤介入効果の分類

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JAMA Darmatol 2021年8月25日オンライン版

 治療に対する不忍容性(全理由による試験脱落率)に関して、介入方法間で有意差は認められなかった。

 Nochaiwong氏らは「今回の知見は、H1拮抗薬で十分な効果が得られなかったCSU患者に対して、ligelizumab 72/240mgまたはオマリズマブ300/600mgを推奨できることを示した」と結論している。

 ligelizumabは、喘息患者においてオマリズマブをしのぐ効果を示せず、同領域での開発が中断されていたがJ Allergy Clin Immunol 2017; 139: 1411-1421、今年(2021年)1月に米食品医薬品局(FDA)からCSUに対する画期的治療薬の指定を受け、現在、H1拮抗薬でコントロール不十分なCSU患者を対象とした第Ⅲ相試験が進行中である。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

農薬スピノサド0.9%局所投与、疥癬治療に有効

 要介護者のいる家庭や高齢者施設での感染問題で知られる疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生することで生じる伝染性皮膚疾患である。承認されたOTC薬はなく、承認された処方薬にも潜在的な耐性などの欠点があるが、土壌放線菌由来のマクロライド系殺虫剤スピノサドが、同治療薬として有効であることが示された。

 米国・LSRN ResearchのJeffrey C. Seiler氏らが2つの無作為化試験の結果を解析し、4歳以上の被験者において、スピノサド0.9%懸濁液の1回局所投与が有効であったことを明らかにした。著者は、「スピノサド0.9%懸濁液は標的局所療法として、ほかに選択肢がほぼない医師や患者にとって新たな疥癬治療の選択肢となる」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年8月12日号掲載の報告。

 研究グループは、2つの対照臨床試験の結果を統合して、疥癬の根絶におけるスピノサド0.9%懸濁液局所投与の有効性を評価した。各試験には、インデックス被験者(疥癬症状が認められる世帯内で最年少の家族)とそれ以外の家族(1世帯最大5人)が包含され、被験者はスピノサド0.9%または溶媒(vehicle)を1回局所投与された。

 主要有効性評価項目は、28日目における疥癬が完全に治癒したインデックス被験者の割合であった。追加した有効性評価項目は、臨床的治癒、顕微鏡的治癒、病変数であった。
 主な結果は以下のとおり。

・28日目に完全治癒を達成したインデックス被験者の割合は、スピノサド0.9%群と溶媒群で同等ではなかった(それぞれ78.1% vs.39.6%、p<0.0001、n=206例)。
・追加の有効性解析により、スピノサド0.9%の一貫した治療効果が確認された。
・安全性に関するシグナルは観察されなかった。
・スピノサド0.9%は角質層(すなわちダニが潜み繁殖する場所)にも到達するため、疥癬の効果的な治療法になる可能性が示唆された。

 本研究は、同等性を評価するために少数サンプルサイズを使用しており、結果は限定的である。

 

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基底細胞がんの局所治療薬、臨床試験で有望な結果 奏効率は表在型BCCで100%、浸潤型BCCでも66.7%

 皮膚がんの中で最も高頻度に生じる基底細胞がん(BCC)の治療薬として、開発中のゲル製剤であるレメチノスタット(remetinostat)の有望性を示した臨床試験の結果が報告された。将来、レメチノスタットによる治療が、現在の主な治療法である手術の代わりとなる可能性が見えてきたという。試験は米スタンフォード大学皮膚科学准教授のKavita Sarin氏らが実施したもので、結果は「Clinical Cancer Research」に8月6日掲載された。

 米国では年間300万人以上が新たにBCCと診断されている。BCCは転移することはまれで、切除術によって治癒するケースが多い。それでも、「手術以外の治療選択肢が求められている」とSarin氏は言う。例えば、BCCの病変が顔面などにある場合、手術の痕が残る可能性があり、それは患者にとって望ましくない。また、複数のBCCを発症する患者も多く、繰り返し手術が必要になることもある。

 BCCに対しては、いくつかの局所治療薬が承認されているが、適応はBCCの症例の中では数少ない「表在型」に限定されている。これに対して、Sarin氏らが今回の臨床試験で使用したレメチノスタットは、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害する作用を持つ。実験室での研究では、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害するとBCCの増殖を抑制できることが示されている。

 今回の第Ⅱ相臨床試験では、直径が5mm以上の腫瘍を1つ以上持つ、30人のBCC患者を対象にしたもの。患者の腫瘍は、1日3回、6週間かけてレメチノスタットで治療された。最終的に25人の患者が有する33個の腫瘍を対象に解析したところ、17個は完全に消失し、6個で部分的な奏効(腫瘍の直径が試験開始時から30%以上縮小)が認められた(全奏効率69.7%)。また、レメチノスタットが最も効果を示したのは表在型のBCCで、全ての表在型BCCで縮小または消失が認められた(奏効率100%)。一方で、BCCの中でも最も高頻度に生じる結節型のBCCでの奏効率は68.2%、皮膚のより深部の広い範囲に浸潤する浸潤型のBCCでの奏効率は66.7%であった。これに対して、微小結節型のBCCでは、治療効果は認められなかった。レメチノスタットによる治療で生じた主な副作用は投与部位の発疹だけであり、全身性のあるいは重篤な有害事象は認められなかった。

 Sarin氏は、「今回の臨床試験でのレメチノスタットの投与回数は1日3回、治療期間は6週間だったが、治療レジメンの至適化を目指したさらなる研究が必要だ」と説明。また、同薬の効果の持続期間についても、今後検討すべき課題だとしている。

 この研究には関与していない、米マウント・サイナイ・アイカーン医科大学皮膚科学臨床准教授のJeffrey Weinberg氏は、「より多くのデータが必要なのは明らかだが、この結果が前進を意味していることは確かだ」とコメント。また、浸潤型の腫瘍でもおよそ3分の2で効果が得られたのは「素晴らしい」と述べている。

 ただしWeinberg氏は、局所薬による治療では、本当に腫瘍が完全に消失したかどうかを見極めることができないことに言及。臨床試験ではレメチノスタットによる治療終了後に、手術で17カ所の腫瘍が実際に消失していることが確認されたが、実際の臨床現場ではこのような確認を取るのは難しいことを指摘している。その上で、「BCCの中には手術の適応とならない患者もいる。また手術を望まない患者もいる。それゆえ、有効な局所薬が治療選択肢に加わることは歓迎すべきことだ」と話している。

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