デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

薬剤性過敏症症候群、国際的コンセンサスを策定

 薬剤性過敏症症候群(DRESS:Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms)の重症度評価と治療に関する国際的なコンセンサスを策定する研究結果が、スイス・チューリヒ大学病院のMarie-Charlotte Bruggen氏らにより報告された。DRESSは、発現頻度は低いものの、死に至る可能性もある重症薬疹の1つである。研究グループはRAND/UCLA適切性評価法(デルファイ変法)を用いて100項目について検討を行い、93項目について合意形成に至った。著者は、「DRESSはさまざまな特徴を有する重度の皮膚有害反応を呈する薬疹で、臨床医は診断と治療管理に難渋する。今回のコンセンサスは、DRESS患者の診断、評価、治療を支援するものであり、将来的なガイドライン開発の基礎となるはすだ」と述べている。JAMA Dermatology誌2024年1月1日号掲載の報告。

 研究グループは、DRESS患者の診断、重症度評価、治療に関する国際的なコンセンサスを策定することを目的に、デルファイ変法を用いて各国の専門家による検討を行った。DRESSの専門家57人に参加を呼び掛け、54人が2022年7~9月に実施された調査に参加。DRESSのベースライン診断、重症度評価、急性期および亜急性期の治療管理に関する100項目を評価した。合意形成の基準は、デルファイ変法(1点[きわめて不適切]~9点[きわめて適切])による評価の中央値が7点以上かつ見解不一致指数(disagreement index)が1点未満と定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・第1回の適切性評価において、82項目について合意形成が得られた。
・第2回評価で13項目が改訂・評価され、最終的に、全体で93項目の合意形成が得られた。
・専門家らは、基本的な診断法や重症度評価、臓器固有のさらなる研究について合意した。
・また、肝臓、腎臓、血液の関与の程度とその他臓器の損傷に基づく重症度評価(軽症、中等症、重症)について合意した。
・DRESSの重症度に応じた治療管理の主な方針に関しても合意した。
・DRESS患者の急性期後のフォローアップおよびアレルギー検査に関する一般的推奨事項も策定された。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。

 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。

 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。
・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。
・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。
・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。
・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。

 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。
・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。
・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。
・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。
・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。
・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。

 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。
・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬スピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。
サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。
・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。
・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。

 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。

 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。HealthDay News 2024年2月2日)

https://www.healthday.com/health-news/skin-health/dermatologists-group-offers-latest-guidance-on-acne

(参考情報)

Abstract/Full Text

https://www.jaad.org/article/S0190-9622(23)03389-3/fulltext

ニボルマブ、切除不能な進行・再発上皮系皮膚悪性腫瘍の効能追加承認/小野・BMS

 小野薬品工業ブリストル マイヤーズ スクイブは2024年2月9日、小野薬品が、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。

 今回の承認は、慶應義塾大学病院主導の下、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍患者を対象に、ニボルマブの有効性および安全性を検討した医師主導治験(NMSC-PD1試験:KCTR-D014)の結果に基づいたもの。

 同試験における中央判定奏効率は19.4%(6/31例、95%信頼区間:7.5〜37.5)を示し、主要評価項目を達成した。同試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、既報と同様であった。

アトピー性皮膚炎薬ジファミラスト、好塩基球のIL-4産生阻害で効果

 東京医歯大ほか、研究成果は、「Journal of Investigative Dermatology」にオンライン掲載

 

2021年承認のPDE4阻害薬、治療効果の詳細メカニズムは不明だった

 東京医科歯科大学は10月13日、アトピー性皮膚炎の治療薬ジファミラストが希少な免疫細胞である好塩基球からのインターロイキン4(IL-4)産生を阻害することで、マウスモデルの症状を改善していることを突き止めたと発表した。この研究は、同大高等研究院炎症・感染・免疫研究室の髙橋和総大学院生、三宅健介特任助教、伊藤潤哉大学院生、烏山一特別栄誉教授と人体病理学分野の大橋健一教授ら、北里大学医学部免疫学単位の島村雛乃大学院生、末永忠広教授との研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Investigative Dermatology」にオンライン掲載されている。

 アトピー性皮膚炎は、慢性的、持続的なかゆみや湿疹を特徴とする慢性皮膚疾患。特に、30歳台までの有病率が約10%と高く、患者のQOL低下や医療費負担の増加が社会的に問題となっている。アトピー性皮膚炎の病態には未だ数多くの不明点が残されているが、最近の研究からIL-4などの2型サイトカインが皮膚炎症状に大きく関与していることが明らかになってきた。アトピー性皮膚炎の治療は、保湿剤などを用いたスキンケア、抗ヒスタミン薬の内服、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などを用いた抗炎症療法が中心だったが、最近炎症に関わる原因分子そのものを標的とした医薬品による治療が可能になってきた。

 PDE4は細胞の機能を制御するサイクリックAMPの分解酵素PDE4阻害薬であるジファミラストは、細胞内でPDE4によるサイクリックAMPの分解を阻害することで、細胞内のサイクリックAMPの濃度を上昇させ、炎症細胞からの炎症性サイトカインの分泌を抑える作用を持つと考えられている。特に、アトピー性皮膚炎では臨床研究の結果、軽症から中等症のアトピー性皮膚炎患者に対するPDE4阻害薬の有効性が認められ、2021年にジファミラストが治療薬として承認された。しかし、アトピー性皮膚炎においてPDE4阻害薬がどのような細胞を標的として治療効果を示しているのかはよくわかっていない。そこで、アトピー性皮膚炎マウスモデルを用い、ジファミラストの標的細胞について検討を行った。

希少な免疫細胞「好塩基球」からのIL-4産生阻害でアトピー性皮膚炎改善

 研究グループは、まずアトピー性皮膚炎マウスモデルに対するジファミラスト軟膏の効果を検討。マウスの耳にハプテンであるオキサゾロンを毎日塗布することでアトピー性皮膚炎を引き起こした。炎症が顕著となった時点(炎症誘導の4日後)からジファミラスト軟膏を毎日塗布したところ、肉眼像が改善され、皮膚における炎症細胞の数も減少。以上から、ジファミラスト軟膏はアトピー性皮膚炎マウスモデルに対して治療効果を持つことが解明された。

 続いて、ジファミラストの塗布により炎症を起こした皮膚におけるIL-4の量が減少することを見出した。そこで、ジファミラスト軟膏の治療効果は皮膚におけるIL-4産生を抑制することによるためではないかと考え、IL−4欠損マウスを用いた実験を行った。その結果、ジファミラスト軟膏の治療効果はIL-4欠損マウスでは見られなくなることがわかった。

 さらに、同モデルにおけるIL-4の産生細胞を検討。希少な免疫細胞である好塩基球が、皮膚における主要なIL-4産生細胞であることがわかった。そこで、好塩基球を除去したマウスや好塩基球特異的にIL-4を欠損したマウスを用いてジファミラストの効果を検討したところ、これらのマウスでもジファミラストの治療効果は認められないことがわかった。以上から、ジファミラストは好塩基球からのIL-4産生を抑制することでアトピー性皮膚炎への治療効果を示すことが解明された。

ジファミラスト、ERKシグナル経路を一部抑制で好塩基球からのIL-4産生を抑制

 最後に、研究グループはジファミラストが好塩基球によるIL-4の産生を直接阻害するのかを試験管内で検討。その結果、ジファミラストはさまざまな刺激により活性化した好塩基球からのIL-4産生を抑制することが明らかになった。さらに、RNAシーケンス解析により、ジファミラストを添加した好塩基球の遺伝子発現を網羅的に解析したところ、ジファミラストはERKシグナル経路を一部抑制することで好塩基球からのIL-4産生を抑制することが示唆された。

好塩基球がアトピー性皮膚炎の有望な治療標的となる可能性

 研究グループは、ジファミラストが好塩基球からのIL-4の分泌を阻害することでアトピー性皮膚炎を改善していることをマウスモデルにより解明した。今回の研究はマウスモデルを用いた知見だが、実際のアトピー性皮膚炎患者の皮膚でも、好塩基球が浸潤していることが報告されている。このことから、患者においても今回の研究と同様のメカニズムによってジファミラストの皮膚炎症が改善されている可能性が十分考えられるという。同研究から、ジファミラストによる治療効果に希少細胞である好塩基球が関与する可能性が提示された。このことは、臨床におけるジファミラストの適用を考える上でも重要な知見となると考えられる。さらに、同研究から、好塩基球や好塩基球の産生する分子がアトピー性皮膚炎の有望な治療標的となることが示唆され、今後の開発の伸展が期待される、と研究グループは述べている。

 

 

アトピー/乾癬、外用PDE4iは安全かつ有効

アトピー性皮膚炎/尋常性乾癬における外用PDE4阻害薬の有効性を検討

 

本論文では、アトピー性皮膚炎(70例、女性52.9%)と尋常性乾癬(34例、男性58.8%)の患者を対象に、外用PDE4阻害薬の有効性および安全性を第2a相二重盲検無作為化試験で検討している。軽症ないし中等症のアトピー性皮膚炎(体表面積の5-20%)または尋常性乾癬(体表面積の5-15%)を有する18-70歳の患者を対象に、PDE4阻害薬を含む製剤と含まない製剤(コントロール)で比較した。主要評価項目は、アトピー性皮膚炎の症状と面積を評価するEASI総スコアおよび乾癬の症状と面積、部位を評価するPASIスコアのベースラインから6週時点までの変化率(CFB)とした。

 結果として、6週時点で、PDE4阻害薬群ではコントロール群に比べEASI(最小二乗平均CFB:-74.9% vs. -35.5%、差-39.4%、90%CI -58.8~-20.1、P<0.001)およびPASI(CFB:-4.8 vs. 0.1、差-4.9、同-7.0~-2.8、P<0.001)スコアが有意に改善した。試験治療下の有害事象の発現率は、アトピー性皮膚炎尋常性乾癬ともに、コントロール群と比較して同程度であり、有意な副作用は認められなかった。

 PDE4阻害薬は、炎症細胞内のサイクリックAMP (cAMP)を上昇させることで炎症性遺伝子発現を抑制し、抗炎症性遺伝子発現を促進する。既に日本ではジファミラストが発売されており、今回の論文でも外用PDF4阻害薬の有効性と安全性が報告された。

日常臨床への生かし方

 アトピー性皮膚炎アレルギー炎症を抑える外用薬は、ステロイド外用薬が中心である。ステロイド外用薬を適切に使用すれば、副作用を少なくして炎症を抑えることができる。しかし、ステロイド外用薬は免疫細胞以外に皮膚の細胞などにも作用することから、皮膚の菲薄化や毛細血管の拡張などが問題となる。その意味で、PDE4阻害薬の外用薬の出現およびその外用薬の種類が増えてくることで、アトピー性皮膚炎治療の選択肢が増え、部位別の塗布も可能になってくると考えられる。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

抗真菌薬の過剰処方が薬剤耐性真菌感染症増加の一因に

 米国では、医師が皮膚症状を訴える患者に外用抗真菌薬を処方することが非常に多く、それが薬剤耐性真菌感染症の増加の一因となっている可能性のあることが、米疾病対策センター(CDC)のJeremy Gold氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」1月11日号に掲載された。

 抗真菌薬に耐性を示す白癬(カビの一種である皮膚糸状菌を原因菌とする感染症)は、新たに現れつつある非常に大きな脅威の一つである。例えば、南アジアでは近年、外用や経口の抗真菌薬が効かない白癬が大流行した。このような薬剤耐性白癬の症例は米国の11の州でも確認されており、患者には広範囲に及ぶ病変が現れ、診断が遅れる事態が報告されているという。

 抗菌薬の乱用が薬剤耐性細菌の増加につながるように、真菌も抗真菌薬に曝露すればするほど、薬剤耐性真菌が自然に増えていく。CDCのチームは、世界中で報告されている薬剤耐性真菌感染症の増加は、外用の抗真菌薬の過剰処方が原因ではないかと考え、2021年のメディケアパートDのデータを用いて、外用抗真菌薬の処方状況を調べた。データには、抗真菌薬(ステロイド薬と抗真菌薬の配合薬も含める)の処方箋の数量や処方者などに関する情報が含まれていた。

 その結果、2021年にメディケアパートD受益者に処方された外用抗真菌薬の件数は645万5,140件であることが明らかになった。最も多かったのは、ケトコナゾールの236万4,169件(36.6%)、次いでナイスタチンの187万1,368万件(29.0%)、クロトリマゾール・ベタメタゾンの94万5,838件(14.7%)が続いた。101万7,417人の処方者のうち、13万637人(12.8%)が外用抗真菌薬を処方していた。645万5,140件の処方箋の40.0%(257万9,045件)はプライマリケア医の処方によるものだったが、処方者1人当たりの処方件数は皮膚科医で最も多く(87.1件)、次いで、足病医(67.2件)、プライマリケア医(12.3件)の順だった。さらに、645万5,140件の処方箋の44.2%(285万1,394件)は、処方数が上位10%に当たる1万3,106人の処方者により処方されたものだった。

 Gold氏らは、抗真菌薬処方にまつわる大きな問題は、ほとんどの医師が皮膚の状態を見ただけで診断しており、「確認診断検査」を行うことがほとんどない点だと指摘する。さらに研究グループは、ほとんどの外用抗真菌薬が市販されていることを指摘した上で、「この研究結果は、おそらくは外用抗真菌薬の過剰処方の一端を示しているに過ぎない」との見方を示している。外用抗真菌薬の中でも、特に、ステロイド薬と抗真菌薬を組み合わせたクロトリマゾール・ベタメタゾンの多用は、薬剤耐性白癬の出現の大きな要因であると考えられている。この薬は、鼡径部、臀部、脇の下など、皮膚が折り重なる部分に塗布すると、皮膚障害を引き起こす可能性がある上に、長期にわたって広範囲に使用すると、ホルモンバランスの異常を引き起こすこともあると、研究グループは説明している。

 こうしたことを踏まえて研究グループは、「真菌による皮膚感染症が疑われる場合、医療従事者は慎重に抗真菌薬を処方すべきだ」と結論付けている。さらに、「過剰処方や薬剤耐性真菌感染症の危険性を減らすために、医師は外用抗真菌薬や抗真菌薬・ステロイド薬配合薬の正しい使用法について患者を教育すべきだ」と付言している。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

悪性黒色腫への個別化mRNAワクチン+ペムブロリズマブの効果は?(KEYNOTE-942)/Lancet

 完全切除後の高リスク悪性黒色腫に対する術後補助療法として、個別化mRNAがんワクチンmRNA-4157(V940)とペムブロリズマブの併用療法は、ペムブロリズマブ単剤療法と比較し、無再発生存期間(RFS)を延長し、安全性プロファイルは管理可能であった。米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center at NYU Langone HealthのJeffrey S. Weber氏らが、米国およびオーストラリアで実施した第IIb相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-942試験」の結果を報告した。免疫チェックポイント阻害薬は、切除後のIIB~IV期悪性黒色腫に対する標準的な術後補助療法であるが、多くの患者が再発する。mRNA-4157は、脂質ナノ粒子製剤中に最大34個のネオアンチゲンをコードするmRNAを含む個別化ワクチンで、個人の腫瘍mutanomeとヒト白血球抗原(HLA)タイプに特異的に合わせて調製されている。著者は、「今回の結果は、mRNAに基づく個別化ネオアンチゲン療法の術後補助療法における有益性を示すエビデンスとなる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月18日号掲載の報告。

主要評価項目は無再発生存期間(RFS)

 研究グループは、切除可能なIIIB~IV期(IIIB期は前回の手術から3ヵ月以内の再発のみ適格)の悪性黒色腫を有する18歳以上で、ペムブロリズマブ初回投与の13週間前までに完全切除術を受け、試験開始時に臨床的および放射線学的に無病であり、ECOG PSが0または1の患者を、mRNA-4157+ペムブロリズマブ併用療法(併用療法群)またはペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)に、病期で層別化して2対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。mRNA-4157は1mgを3週間間隔で最大9回筋肉内投与、ペムブロリズマブは200mgを3週間間隔で最大18回静脈内投与した。

 主要評価項目は、ITT集団におけるRFS、副次評価項目は無遠隔転移生存、安全性などであった。

ペムブロリズマブ単剤に対するmRNA-4157併用のハザード比は0.561

 2019年7月18日~2021年9月30日に、157例が併用療法群(107例)および単剤療法群(50例)に割り付けられた。追跡期間中央値は、それぞれ23ヵ月および24ヵ月であった。

 データカットオフ時点(2022年11月14日)で、再発または死亡のイベントは併用療法群で24例(22%)、単剤療法群で20例(40%)に発生し、RFSは併用療法群が単剤療法群と比べて延長し(再発または死亡のハザード比[HR]:0.561、95%信頼区間[CI]:0.309~1.017、両側p=0.053)、18ヵ月RFS率はそれぞれ79%(95%CI:69.0~85.6)、62%(95%CI:46.9~74.3)であった。

 治療関連有害事象の多くはGrare1または2であり、Grare3以上は併用療法群でmRNA-4157関連事象12例(12%)、ペムブロリズマブ関連事象24例(23%)、単剤療法群でペムブロリズマブ関連事象9例(18%)であった。

 有害事象によりペムブロリズマブの投与を中止した患者は、併用療法群で26例(25%)、単剤療法群で9例(18%)であった。免疫関連有害事象は、併用療法群で37例(36%)、単剤療法群で18例(36%)に認められた。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov