デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

乾癬性関節炎にウパダシチニブが有効

 非生物学的な疾患修飾性抗リウマチ薬の効果が不十分な乾癬性関節炎患者1704例を対象に、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブ(1日1回15mgまたは30mg経口投与)と腫瘍壊死因子α阻害薬アダリムマブの有効性および安全性を24週間の第III相無作為化試験でと比較した。主要評価項目は、プラセボと比較したウパダシチニブの12週時のAmerican College of Rheumatology 20(ACR20)達成率とした。副次評価項目をウパダシチニブとアダリムマブで比較した。

 その結果、12週時のACR20達成率は、ウパダシチニブ15mg群70.6%、ウパダシチニブ30mg群78.5%、プラセボ群36.2%(ウパダシチニブ2用量 vs. プラセボ、P<0.001)、アダリムマブ群65.0%だった。群間差は、ウパダシチニブ15mg群とアダリムマブ群の比較で5.6%ポイント(95%CI -0.6-11.8)、ウパダシチニブ30mg群とアダリムマブ群の比較で13.5%ポイント(同7.5-19.4)だった。12週時のACR20達成に関して、ウパダシチニブのいずれの投与量もアダリムマブに対して非劣性を示し、30mg群では優越性も示した。24週までの有害事象発現率は、ウパダシチニブ15mg群66.9%、30mg群72.3%、プラセボ群59.6%、アダリムマブ群64.8%だった。それぞれ1.2%、2.6%、0.9%、0.7%に重篤感染症が認められた。ウパダシチニブ15mg群の9.1%、30mg群の12.3%に肝障害が認められたが、グレード3のアミノトランスフェラーゼ増加発生率はいずれもグループでも2%以下だった。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

PsAに承認申請中のウパ
30mgでヒュミラに対し優位性です。
ACR50, 70をみてもウパ30mgに優位性がありそうですね。

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でも、重篤感染症のリスクから15mgでいい気がしますね。
↓乾癬に対する承認予定薬

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ファイザー製ワクチンの副反応、高齢者は「大幅に低い」…予想以上に年代間で差

 米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応は、65歳以上の高齢者では発生率が大幅に低いとする健康調査の中間報告を厚生労働省研究班がまとめた。37・5度以上の発熱は、全体では38%に起きたが、高齢者は9%と4分の1にとどまった。抵抗力のある若い世代ほど副反応が強い傾向は知られているが、予想以上に年代間の差があることが浮き彫りになった。

 9日午後に開かれる厚労省有識者検討会で報告される。この調査は、2月から接種を受けた医療従事者のうち約2万人が対象。今回の中間報告では、1回目の接種を受けた約1万9000人と、2回目も受けた約1万6000人のデータを集計した。

 それによると、2回目の接種後の方が1回目より副反応が強く表れ、年齢が高くなるほど発生率が下がる傾向がみられた。

 2回目接種後に38度以上の高熱が出たのは、全体では21%だったが、高齢者は4%と大幅に低かった。20歳代では30%、30歳代では25%だった。だるさと頭痛は、全体の69%と54%にみられたが、高齢者では38%、20%と低かった。ただし、接種した腕の痛みは全体で91%だが、高齢者でも80%が感じており、他の副反応と比べると差は目立たなかった。

 男女差も目立っており、女性の方が男性よりも副反応が強かった。特に頭痛は、女性の62%が訴えたのに対し、男性は37%と差が大きかった。37・5度以上の発熱は女性42%、男性30%だった。

 高齢者への優先接種は、12日に始まる予定だ。研究班の伊藤澄信・順天堂大客員教授は「一般に、年齢とともに免疫反応は弱まるため、高齢者の副反応の割合は低いと予想していたが、これほど大きな差が出るとは驚きだ」と話している。

 

AZ製ワクチン、英国型変異株に有効率70.4%/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)について、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の新たな変異株であるB.1.1.7系統への中和活性は同系統以外の変異株との比較において低いことがin vitroにおいて示されたが、変異株B.1.1.7に対する臨床的有効率は70.4%で有効であることが示された。なお、同系統以外のウイルスに対する有効性は81.5%だった。英国・オックスフォード大学のKatherine R. W. Emary氏らが同国で行った、約8,500例を対象とした第II/III相無作為化試験の事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2021年3月30日号で発表した。変異株B.1.1.7は2020年11月以降、英国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主因を占めるようになっていた。

NAAT陽性サンプルをシークエンシング
 試験は18歳以上のボランティアを登録して行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンが、もう一方の対照群には髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)が投与され、上気道スワブ検査を毎週実施、または咳や37.8度以上の発熱といったCOVID-19症状を呈した際にも実施された。

 採取したスワブについては、SARS-CoV-2に関する核酸増幅検査(NAAT)を行い、陽性サンプルは、COVID-19ゲノム英国コンソーシアムでシークエンシングを行った。生ウイルス・マイクロ中和抗体測定法によりB.1.1.7系統ウイルスに対する中和抗体反応と、標準的な非B.1.1.7系統ウイルス(Victoria)に対する中和抗体反応を測定した。

 有効性の解析では、血清反応陰性でNAAT陽性者の、ワクチン2回目接種後14日以降の症候性COVID-19などが評価された。被験者が接種を受けたワクチン別の解析も実施。ワクチン有効性については、ポアソン回帰モデルを用いて算出した1-相対リスク(ChAdOx1 nCoV-19群vs.MenACWY群)で評価した。

実験室でのウイルス中和活性、B.1.1.7系統は非B.1.1.7系統より低値
 有効性コホートの被験者は2020年5月31日~11月13日に集められ、同年8月3日~12月30日に2回目のワクチン接種を受けていた。主要有効性コホートの被験者数は8,534例で、うち6,636例(78%)が18~55歳、5,065例(59%)が女性だった。

 2020年10月1日~2021年1月14日に、520例がSARS-CoV-2感染を呈した。これら感染者から1,466個のNAAT陽性スワブが採取され、401個のスワブ(311例)について、シークエンシングに成功した。

 実験室でのワクチン誘導抗体に対するウイルス中和活性は、Victoria系統よりもB.1.1.7系統は低値だった(幾何平均値の比:8.9、95%信頼区間[CI]:7.2~11.0)。

 症候性NAAT陽性感染者に対する臨床的ワクチン有効性は、B.1.1.7系統で70.4%(95%CI:43.6~84.5)、非B.1.1.7系統では81.5%(67.9~89.4)だった。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

コメント:

今後コロナはNew Normalになっていきそうですね。

 

ファイザーワクチン、半年後も9割有効 変異株にも効果  朝日新聞デジタル

 米製薬大手ファイザーと独ビオンテックは1日、共同開発した新型コロナウイルスワクチンの発症を防ぐ効果が半年後も91・3%だったと発表した。また南アフリカの変異株にも効果があるという結果も同時に公表した。

 臨床試験の参加者約4万6千人を追跡調査したところ、1週間後から半年後までの間に感染して症状が出た人は、ワクチンを2回接種したグループで77人だったのに対し、偽薬を打ったグループでは850人いたという。

 ワクチンによる深刻な副反応はなかった。新型コロナによる重症化を防ぐ効果についても、95~100%あると確認できたという。

 これまでも2社は有効性のデータを出していたが、ワクチン接種から半年後の詳しいデータを出すのは初めて。短期間で効果がなくなると、再度ワクチン接種が必要になるという懸念があった。

 また臨床試験には、南ア型の変異株が流行している南アフリカでも800人が参加していた。偽薬を打った人には変異株に感染した人がいた一方で、ワクチンを2回打った人に発症者はいなかったことから、南ア株への効果も確認できたとしている。

 このワクチンはすでに米国で緊急使用許可が出ているが、ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)は「今回のデータにより、当局に(正式な)承認申請ができる状況になった」と話している。

 

中等症以上のアトピー性皮膚炎がabrocitinibで改善

 アトピー性皮膚炎の治療に用いる経口ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害薬abrocitinibの効果を第III相二重盲検試験で検討。外用薬無効または全身療法を要するアトピー性皮膚炎患者838例をabrocitinib 200mg群、同100mg群、デュピルマブ群、プラセボ群に(2対2対2対1の割合で)無作為に割り付けた(全例に外用薬を併用)。主要評価項目は、12週時の医師による全般的評価(IGA)の改善(IGAスコア2点以上の改善と定義)および湿疹面積・重症度指数(EASI)の75%以上の改善(EASI-75)とした。

 その結果、12週時にIGAが改善した患者の割合は、abrocitinib 200mg群48.4%、同100mg群36.6%、デュピルマブ群36.5%、プラセボ群14.0%で(プラセボと比較したabrocitinib投与2群のP<0.001)、12週時のEASI-75達成率は、それぞれ70.3%、58.7%、58.1%、27.1%だった(プラセボと比較したabrocitinib投与2群のP<0.001)。abrocitinib 200mg群は2週時のそう痒改善でデュピルマブに対する優越性を示したが、abrocitinib 100mg群は優越性を示さなかった。16週時、abrocitinibいずれの用量群でも、その他の主要な副次評価項目のほとんどにデュピルマブとの有意差は認められなかった。abrocitinib 200mg群の11.1%と同100mg群の4.2%に悪心、それぞれ6.6%と2.9%にざ瘡が発現した。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

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コメント:

アブロシチニブ vs デュピルマブの論文がでました。

アブロ100はデュピと同程度で、アブロ200はデュピよりもよさそうですね。

ただアブロ200はざ瘡が増えています。

今後、アトピー性皮膚炎に対するJAK阻害薬の使い分けが問題となりそうです。

 

円形脱毛症リスク、地毛の色で有意差

 円形脱毛症と地毛の色には有意な関連がみられ、より暗い色(黒髪や暗褐色の髪)のほうが有意にリスクが高い。米国・ウェストバージニア大学のAhmed Yousaf氏らが、英国の白人種男女を対象とした適合ケースコントロール試験の結果を報告した。円形脱毛症は、複合的な免疫異常によって非瘢痕性脱毛を引き起こすとされている。

 先行研究では、病変部における白髪を形成する毛包の色素細胞、非色素細胞を標的とした報告がされ、メラノサイトおよびケラチノサイトにおけるメラニン形成に関連したタンパク質の免疫標的化が、円形脱毛症の成長期の毛髪を標的とする炎症のメカニズムを表すものと示唆されていた。著者は、「われわれの結果はそうしたモデルを支持するものである。ただし、円形脱毛症と髪の色の免疫原性の関連性をより正確に解き明かすには、さらなる研究が必要だ」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年3月10日号掲載の報告。

 研究グループは2020年10月に、英国居住の白人種における円形脱毛症と髪の色の関連を調べる適合ケースコントロール試験を行った。試験には、前向きに収集された大規模コホートが用いられ、UK Biobank(成人の表現型および遺伝子型の決定因子を研究するためにデザインされた大規模前向きリソース)から集めたデータを包含した。

 UK Biobankの被験者計50万2,510例をレビューし、髪の色が報告されていた円形脱毛症1,673例(ケース群)を抽出し、1対4のマッチング法を用いて年齢と性別で適合した非円形脱毛症6,692例(対照群)と比較検証した。

 アウトカム変数は円形脱毛症、主な予測因子を白髪になる前の地毛の色として、条件付きロジスティック回帰分析にて評価した。考慮した変数は糖尿病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、白斑などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・被験者46万4,353例において、25万4,505例(54.8%)が女性であった。
円形脱毛症を呈した被験者の平均年齢(SD)は46.9(16.5)歳であった。
円形脱毛症は、薄茶色の髪の被験者と比較して、黒髪(補正後オッズ比[aOR]:2.97、95%信頼区間[CI]:2.38~3.71)、暗褐色(1.26、1.11~1.42)の被験者で有意に多く認められた。
・対照的に、金髪の被験者では、薄茶色の髪の被験者と比較して、円形脱毛症が有意に少なかった(aOR:0.69、95%CI:0.56~0.85)。
赤毛の被験者と薄茶色の髪の被験者に、有意差はみられなかった。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

ダニ舌下免疫療法の効果予測因子

はじめに

 アレルギー性鼻炎の治療法としては、抗原の除去・回避とともに、薬物療法、アレルゲン免疫療法、手術療法があります。このうち、臨床的な治癒が期待できる治療法はアレルゲン免疫療法です。アレルゲン免疫療法の投与ルートには、皮下注射法や舌下法などがあります。アレルギー性鼻炎については安全性の面などで、現在では舌下免疫療法が主流となっています。アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法は治療終了後にも効果が持続し、新規喘息の発症を予防する一方で、臨床的な治癒を期待するには3-5年間にわたる治療が必要で、まれにアナフィラキシーなど重篤な全身疾患が生じることがあります。また、全ての患者に有効な治療法ではなく、効果が見られない場合もあります。したがって、早期に治療効果が予測できる因子(バイオマーカー)の特定が望まれています。これまでに効果予測因子を検討した報告では、血清特異的IgE/総IgE比や血清特異的IgEなどが免疫学的パラメータになり得ることが示唆されていますが、報告ごとに結果は一貫しておらず、一定のコンセンサスはいまだに得られていません。

 今回ご紹介するのは、ダニ舌下免疫療法の治療開始3年後の効果予測因子を検討するため、治療開始時および治療開始1年後の指標を用いて後ろ向きコホート研究を実施した論文です。


論文の概要

 2009年から2013年までの間に、舌下免疫療法(SLIT)を3年間以上継続したダニアレルギー性鼻炎患者61例を治療に満足しているグループ(満足群)43例(70.5%)と治療に満足していないグループ(不満足群)18例(29.5%)の2群に分け、ベースラインと治療開始1年後に測定した免疫学的な指標およびその変動が効果予測因子になり得るか検討しています。

 患者は、(1)鼻症状(くしゃみ、かゆみ、鼻汁、鼻閉:総合鼻症状スコア[TNSS])、(2)QOL7領域(実生活の煩わしさ、睡眠、鼻症状、眼症状、全般的症状、活動、感情)、(3)SLITへの満足度(満足、まあまあ、不満足)についての質問票へ記入します。

 血液学的検査では、特異的IgE(sIgE)、特異的IgG4(sIgG4)、総IgE(tIgE)、好酸球顆粒蛋白(ECP)、末梢好酸球数について測定しています。

 その結果、満足・不満足の2群間の背景因子に有意差は認めませんでした。舌下免疫療法前後のTNSSとQOLのスコアは、当然ですがいずれも満足群の方が有意に改善しています(TNSS:P=0.023、QOLスコア P=0.007)。

SLITの開始1年後のヤケヒョウヒヒダニ(Dp)およびコナヒョウヒダニ(Df)特異的IgE値のベースラインからの変化量は、満足群よりも不満足群の方が有意な増加を示しました(P=0.006、0.045)。

 Stylianouらの研究(Scand J Clin Lab Invest. 2016; 76: 118-27.)では、シラカバやイネ科花粉の皮下免疫療法を受けた患者では、初期には特異的IgEが増加し、その後減少することが示されており、皮下免疫療法の前後(22-41カ月)での特異的IgE値の減少は、良好な転帰と関連することが報告されています。この研究では、満足群での変化量として特異的IgEの増加が少ないことから、満足群では不満足群と比較し減少量が多いことが考えられ、早期の特異的IgEの測定が必要だと著者は考察しています。また、この論文の限界点として、SLITは治療期間が長く経済的負担が大きいため、良好な効果を得られた患者のみが治療を継続している可能性と被験者数が比較的少ない点が挙げられています。
私の視点

 舌下免疫療法の効果予測因子に関して、ダニアレルギーでの検討は珍しく、新規性があると言えます。一方で、批判的に吟味すると、この研究では治療開始1年後の症状やQOLが検討されていません。これが治療3年後の効果予測因子になれば、わざわざ採血をする必要はなくなります。また、大前提として、治療開始1年後の結果が果たして効果予測と言えるのかという点も議論になると思います。この研究では副反応については触れられていませんが、IgEの変化量と副反応の関係性も気になります。


まとめ

 舌下免疫療法は、治療期間が長いものの効果には個人差があるため、治療前の効果予測因子の解明は、患者、医療者双方が待望しており、医療経済の面から考えても重要です。今回の論文からは、舌下免疫療法前後の血清特異的IgEを測定し、その変化をモニターすることは、長期的な治療効果を客観的に予測する上で一考の価値があると言えます。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

コメント:

私も舌下免疫はスギ・ダニともにやっています。もう花粉症はほぼノーダメージです。

効果予測因子など、今後の研究にさらに期待ですね。