デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

アトピー性皮膚炎、新規抗IL-13抗体tralokinumabの長期有用性確認

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に対するtralokinumab(トラロキヌマブ、本邦承認申請中)の長期治療について、最長2年治療の忍容性は良好であり、ADの徴候と症状のコントロール維持が確認された。tralokinumabは、AD関連の皮膚の炎症やかゆみに関与するIL-13のみを選択的に阻害する生物学的製剤で、第III相試験では最長1年にわたり、中等症~重症AD成人患者の病変範囲・重症度を持続的に改善することが確認されている。同患者においては長期にわたる治療が必要として現在、非盲検下で5年延長試験「ECZTEND試験」が進行中であり、米国・Oregon Medical Research CenterのAndrew Blauvelt氏らが、事後中間解析における最長2年の安全性と有効性を評価した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2022年7月18日号掲載の報告。

 ECZTEND試験は、tralokinumabの先行試験(PT試験)に参加した中等症~重症AD患者を対象に、tralokinumab(2週ごとに300mg皮下投与)+局所コルチコステロイドの安全性と有効性を評価する5年延長試験。

 安全性の解析は、tralokinumab曝露期間にかかわらず、ECZTEND試験に登録されたPT試験を完了した成人を対象とした。有効性の解析は、ECZTEND試験で1年以上tralokinumab治療を受けた成人参加者とし、サブグループ解析では、2年(PT試験で1年、ECZTEND試験で1年)治療を受けた成人参加者を評価対象とした。

 主要エンドポイントは、延長試験期間中における有害事象(AE)の発生件数。副次エンドポイントは、PT試験と比較したIGAスコア0/1の達成患者割合およびEASI-75達成患者割合であった。

 主な結果は以下のとおり。

・安全性解析には1,174例(年齢中央値38.0歳、男性57.5%、罹病期間中央値27.0年)、2年有効性解析には345例(42.0歳、58.8%、30.0年)が含まれた。
・安全性解析(1,174例)において、tralokinumab累積曝露は1,235.7患者年で、曝露補正後AE発生頻度は、100患者年曝露当たり237.8件であった。
・頻度の高いAEの曝露補正後発生率は、PT試験と同程度か低率であった。
・2年有効性解析(345例)において、ADの範囲・重症度の改善は持続しており、EASI-75達成患者割合は82.5%であった。
・本解析は、選択バイアスの可能性、プラセボ群未設定、一部の被験者がPT試験とECZTEND試験で治療ギャップを経験した、などの点で限界がある。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

米FDAが小児乾癬性関節炎にウステキヌマブ承認 成人PsAからの適応拡大

 米国食品医薬品局(FDA)は8月3日、6歳以上の小児の乾癬性関節炎(PsA)に対し、ヒト型抗ヒトIL-12/23モノクローナル抗体製剤ウステキヌマブ(商品名ステラーラ、Janssen Biotech社)を承認した。2013年の成人PsAに対する承認から適応拡大された。

 6-17歳のPsA患者に対する今回の承認は、成人の乾癬およびPsA患者を対象とした適切かつ質の高い比較試験から得られた科学的根拠に加え、成人の乾癬またはPsA患者および小児の乾癬患者から得られた薬物動態データ、6-11歳の乾癬患者44例と12-17歳の乾癬患者11例を対象とした2件の臨床試験から得られた安全性に関するデータに基づいている。なお、同薬の使用に伴い、重篤感染症過敏症反応、非感染性肺炎などが報告されている。

 

アトピー性皮膚炎に伴うそう痒治療薬・ミチーガを発売 4週間間隔で皮下投与 マルホ

 マルホは8月8日、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に伴うそう痒の治療薬・ミチーガ皮下注用60mgシリンジ(一般名:ネモリズマブ(遺伝子組換え))を発売した。成人及び13歳以上の小児に対して、ネモリズマブとして1回60mgを4週間間隔で皮下投与で用いる。中医協資料によると、薬価は60mg1筒11万7181円で、1日薬価は4185円となる。6年後のピーク時で投与患者数約3000人、販売金額は23億円と予想されている。

 同剤は、中外製薬が創製したIL-31受容体Aを標的とする世界初の抗体医薬品。マルホが皮膚科疾患領域における国内ライセンスを獲得して開発した。

 IL-31は、かゆみを誘発するサイトカインで、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみの発生に関与していることが報告されている。同剤はIL-31とその受容体の結合を競合的に阻害し、アトピー性皮膚炎のかゆみに対する抑制作用を示す。

 アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹を主病変とする慢性の炎症性皮膚疾患。かゆみにより患部を引っかくことで皮膚症状が増悪し、さらにかゆみが強くなるという悪循環(イッチ・スクラッチサイクル)を引き起こす。同剤がかゆみによる悪循環を遮断することで皮膚症状も改善し、患者QOL の向上につながることが期待されている。

 現在、アトピー性皮膚炎のかゆみに対しては、抗炎症外用薬の併用のもと、抗ヒスタミン薬などが用いられるが、既存治療ではかゆみを十分にコントロールできない患者が存在する。このため、かゆみを標的とした新たな治療選択肢が求められている。

医療者のブレークスルー感染率、3回vs.4回接種

 オミクロン株流行下において、感染予防の観点から医療従事者に対する4回目接種を行うメリットは実際あったのか? イスラエルでのオミクロン株感染ピーク時に、3回目接種済と4回目接種済の医療従事者におけるブレークスルー感染率が比較された。イスラエル・Clalit Health ServicesのMatan J. Cohen氏らによるJAMA Network Open誌オンライン版2022年8月2日号掲載の報告より。

 本研究は、イスラエルにおけるオミクロン株感染者が急増し、医療従事者に対する4回目接種が開始された2022年1月に実施された。対象はイスラエルの11病院で働く医療従事者のうち、2021年9月30日までにファイザー社ワクチン3回目を接種し、2022年1月2日時点で新型コロナウイルス感染歴のない者。4回目接種後7日以上が経過した者(4回目接種群)と、4回目未接種者(3回目接種群)を比較し、新型コロナウイルス感染症の感染予防効果を分析した。感染の有無はPCR検査結果で判定され、検査は発症者または曝露者に対して実施された。

 主な結果は以下の通り。

・計2万9,611例のイスラエル人医療従事者(女性:65%、平均[SD]年齢:44[12]歳)が2021年9月30日までに3回目接種を受けていた。
・このうち2022年1月に4回目接種を受け、接種後1週間までに感染のなかった5,331例(18%)が4回目接種群、それ以外の2万4,280例が3回目接種群とされた(4回目接種後1週間以内に感染した188例も3回目接種群に組み入れられた)。
・接種後30日間における全体のブレークスルー感染率は、4回目接種群では7%(368例)、3回目接種群では20%(4,802例)だった(粗リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.32~0.39)。
・3回目のワクチン接種日によるマッチング解析の結果(リスク比:0.61、95%CI:0.54~0.71)および時間依存のCox比例ハザード回帰モデルの結果(調整ハザード比:0.56、95%CI:0.50~0.63)において、4回目接種群で同様の減少がみられた。
・両群とも、重篤な疾患や死亡は発生していない。

 著者らは、4回目のワクチン接種は医療従事者のブレークスルー感染予防に有効であり、パンデミック時の医療システムの機能維持に貢献したことが示唆されたとまとめている。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

4回接種で感染4割減 医療従事者、3回目に比べ

 【ワシントン共同】新型コロナウイルスワクチンを4回接種した人は、3回の人に比べオミクロン株の感染リスクが4割減ったとの研究結果を、イスラエルのチームが2日、米医学誌に発表した。医療従事者3万人のデータを解析した。平均年齢は44歳。

 利用したのは国内11病院の職員のデータ。昨年8~9月にファイザー製ワクチンの3回目接種を受け、うち約5千人はオミクロン株が主流の今年1月に4回目を受けた。

 1月末までに症状が出たか感染者と接触してPCR検査を受け、陽性となったのは3回の人が20%、4回の人は7%。いずれも重症例や死亡例はなかった。年齢や性別、医師や看護師など職種が同じ人たち同士で比べると、感染リスクは39%減となった。

 チームは「オミクロン株は感染力が強く、深刻な人手不足の原因になることを考えると、4回目の実施は考慮されるべきだ」とした。日本では7月、60歳以上と重症化リスクの高い人に限っていた4回目の対象を、医療従事者や高齢者施設などの職員に拡大している。

 注)米医学誌はJAMAネットワーク・オープン

 

新規抗体薬litifilimab、皮膚エリテマトーデスの疾患活動性を改善/NEJM

 皮膚エリテマトーデス患者の治療において、血液樹状細胞抗原2(BDCA2)のヒト化モノクローナル抗体製剤litifilimabはプラセボと比較して、治療開始から16週間後の皮膚疾患活動性の改善効果が優れ、有害事象の発生状況は同程度であることが、米国・ペンシルベニア大学のVictoria P. Werth氏らが実施した「LILAC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年7月28日号で報告された。

世界54施設の無作為化第II相試験

 LILAC試験は、皮膚エリテマトーデス患者の治療におけるlitifilimabの有効性と安全性の評価を目的とする16週の二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2016年10月~2019年11月の期間に、アジア、欧州、中南米、米国の54施設で参加者の登録が行われた(米国Biogenの助成による)。

 対象は、年齢18~75歳、全身症状の有無にかかわらず、生検で組織学的に皮膚エリテマトーデスと確定され、活動性の皮膚エリテマトーデス(皮膚エリテマトーデス疾患面積・重症度指数-活動性[CLASI-A]尺度[0~70点、点数が高いほど活動性が高い]のスコアが8点以上)を有する患者であった。

 被験者は、litifilimabの3つの用量(50mg、150mg、450mg)またはプラセボを、0週、2週、4週、8週、12週目に皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、ベースラインから16週までのCLASI-Aスコアの変化の割合(%)とされた。用量反応モデルを用いて、4群における反応の有無が評価された。また、安全性の評価も行われた。

より大規模でより長期の試験が必要

 132例が登録され、litifilimab 50mg群に26例(平均年齢43.3歳、女性77%)、同150mg群に25例(43.6歳、80%)、同450mg群に48例(44.0歳、75%)、プラセボ群に33例(43.4歳、91%)が割り付けられた。各群のベースラインの平均CLASI-Aスコアは、それぞれ15.2点、18.4点、16.5点、16.5点であった。全身性エリテマトーデス(SLE)を併存する患者が、それぞれ42%、48%、42%、42%含まれた。

 CLASI-Aスコアのベースラインから16週までの変化率の最小二乗平均(LSM)は、litifilimab 50mg群が-38.8%、150mg群が-47.9%、450mg群が-42.5%、プラセボ群は-14.5%と、いずれも改善されたが、プラセボ群では改善の程度が小さかった。

 したがって、16週時におけるCLASI-Aスコアのベースラインからの変化率の、プラセボ群との差のLSMは、litifilimab 50mg群が-24.3ポイント(95%信頼区間[CI]:-43.7~-4.9)、150mg群が-33.4ポイント(-52.7~-14.1)、450mg群は-28.0ポイント(-44.6~-11.4)であった。3つの用量とプラセボについて最適な用量反応モデルを用いて主解析を行ったところ、いずれの用量でも、プラセボとの比較で有意な効果が確認された。

 一方、副次エンドポイントの多くは、主解析の結果を支持しなかった。

 有害事象は、litifilimab群(3用量群99例)の72%、プラセボ群の67%で発現し、多くは軽度~中等度であった。頻度の高い有害事象として、鼻咽頭炎(litifilimab群10%、プラセボ群6%)、頭痛(9%、9%)、注射部位紅斑(9%、3%)、SLE(7%、12%)、関節痛(6%、6%)、上気道感染症(6%、3%)などが認められた。重篤な有害事象は、litifilimab群が7例(7%)、プラセボ群は3例(9%)で発現した。

 litifilimab群では、過敏症が3例、口腔ヘルペス感染症が3例、帯状疱疹感染症が1例でみられ、litifilimabの最終投与から4ヵ月後に1例で帯状疱疹髄膜炎が発生した。

 著者は、「皮膚エリテマトーデスの治療におけるlitifilimabの効果と安全性を明らかにするには、より大規模でより長期の試験を要する」としている。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

米FDAが尋常性乾癬に外用PDE4阻害薬承認 乾癬治療に初の非ステロイド外用薬

 Arcutis Biotherapeutics社は7月29日、12歳以上の間擦部位を含む尋常性乾癬治療薬として、同社のPDE-4阻害薬roflumilast0.3%クリーム(商品名ZORYVE)が米食品医薬品局(FDA)の承認を受けたと発表した。同社によれば、roflumilastクリームは尋常性乾癬の局所治療に用いる初の外用PDE-4阻害薬で、乾癬局面を迅速に除去し、全身の患部のかゆみを軽減するほか、1日1回投与の非ステロイド系薬で安全性に優れ、患者の自己管理の簡素化に寄与するという。

 今回の承認は、2件の第III相無作為化比較試験「DERMIS-1」「DERMIS-2」の結果に基づいている。いずれも、8週時点の全般的評価(IGA)の「消失」または「ほぼ消失」の達成率が、基剤のみの対照群よりroflumilastクリーム群の方が有意に高かった(DERMIS-1試験:42%対6%、DERMIS-2試験:37%対7%、いずれもP<0.0001)。このほか、roflumilastクリーム群では2週時点でかゆみの重症度が改善し、試験開始前にかゆみの数値評価尺度スコア(Worst Itch-Numerical Rating Score;WI-NRS)の最も低いスコアが4点以上だった患者の3分の2では、8週時点で4点以上の改善が認められた。さらに、roflumilastクリームは間擦部位に対する治療効果が確認された唯一の外用薬で、8週目の間擦部位のIGA成功率は、DERMIS-1試験が72%、DERMIS-2試験が68%だったのに対し、対照群ではそれぞれ14%、17%だった(P<0.0001)。

 頻度の高い有害反応に、下痢頭痛不眠悪心、適用部位の疼痛上気道感染症尿路感染症があった。

 米マウントサイナイ医科大学皮膚科名誉教授兼臨床治療学部長で、臨床試験の治験責任医師Mark Lebwohl氏は「roflumilastクリームは、複数の臨床試験で、膝や肘などの難治部位や顔、性器、趾間などで皮膚クリアランスが改善し、高い有効性が確認された。また、尋常性乾癬のような慢性皮膚疾患の治療では非常に忍容性が高いことも重要だ」とし、「今回のFDAの承認により、青年期以降の尋常性乾癬患者にとって、全身の患部に使用できる非ステロイド系の外用薬が新たな治療選択肢として加わったのは喜ばしいことだ」とコメントしている。

 

www.arcutis.com