デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

新型コロナに抗体カクテル療法が特例承認 NEWS◎抗ウイルス作用を持つ抗体2成分を1製剤にした「ロナプリーブ」

 中外製薬は2021年7月19日、国内では同社が開発していた抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ点滴静注セット」について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して厚生労働省から特例承認を取得したと発表した。

 同社は本製剤について政府と供給契約を交わしており、政府が買い取って医療機関に供給する。必要とする医療機関の依頼に応じて同社から配送する。7月20日厚生労働省が事務連絡を発出し、医療機関から依頼する方法が示される予定だ。

 ロナプリーブは、SARS-CoV-2のスパイク蛋白質の受容体結合部位を標的とするカシリビマブとイムデビマブの2成分を含む製剤。抗体2成分がそれぞれスパイク蛋白質の別の部位に結合して、スパイク蛋白質のヒトACE2受容体への結合を阻害する。2成分をそれぞれ300mgずつ配合したロナプリーブ点滴静注セット300と、1332mgずつ配合した同セット1332の2規格がある。抗体2成分を1製剤とした同剤は抗体カクテル療法と呼ばれている。効能および効果は「SARS-CoV-2による感染症」で、用法・用量は、「通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブおよびイムデビマブとしてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注する」となっている。

 添付文書には、
臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと」
「高流量酸素または人工呼吸器管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある」
「本剤の中和活性が低いSARS-CoV-2変異株に対しては本剤の有効性が期待できない可能性があるため、SARS-CoV-2の最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討すること」
SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与すること。臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない」
と注意書きがある。

 中外製薬によれば、非臨床薬理試験では、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株などに対する中和活性を持つと示唆されるデータが得られている。

 特定の背景を有する患者に関する注意として、妊婦については「妊婦または妊娠している可能性がある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。生殖発生毒性試験は実施していない。一般にヒトIgGは胎盤を通過することが知られている」、授乳婦については「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。本薬のヒト乳汁への移行性については不明であるが、一般にヒトIgGは乳汁中へ移行することが知られている」、小児等については「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」、高齢者については「患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している」と付記されている。

 副作用については、重大な副作用として重篤な過敏症(頻度不明)、infusion reactionが0.2%と示されている。

 カシリビマブとイムデビマブは、米Regeneron Pharmaceuticals社が創製した抗体で、スイスRoche社がRegeneron社と共同開発・販売契約を締結していた。2020年12月、中外製薬は日本における開発および独占的販売権をRoche社から取得し、中外製薬が国内開発を進めていた。

 ロナプリーブについては、海外で臨床試験が進められていたが、2020年11月に米食品医薬品局(FDA)から、入院をしていない、軽度から中等度のCOVID-19の症状を呈するハイリスク患者に対して緊急使用許可を得ていた。

 今年3月には、Roche社が、入院をしていないリスク因子を1つ以上有するCOVID-19患者4567人を対象にした第3相試験(REGN-COV 2067試験)で、プラセボに比べてカシリビマブ/イムデビマブは入院または死亡のリスクを70%(1200mg静注)および71%(2400mg静注)有意に低下させたと発表していた(イベント発現数は、1200mg静注群736人中7、プラセボ群748人中24、2400mg静注群1355人中18、プラセボ群1314人中62)。副次評価項目の1つである症状の持続期間を14日から10日(中央値)に短縮することも確認された。登録患者の年齢(中央値)は50歳(範囲18歳~96歳)、登録時に酸素飽和度が93%以上、リスク因子としては肥満58%、50歳以上が51%、高血圧を含む心血管疾患36%だった。他にリスク因子として試験の登録基準では、喘息を含む慢性肺疾患、1型または2型糖尿病、透析患者を含む慢性腎障害、慢性肝疾患、免疫抑制状態などが示されている。無作為化前の7日以内に発症した、入院をしていない成人患者で、無作為化前の72時間以内に抗原検査もしくはRT-PCR検査によってSARS-CoV-2への感染が確認されたものの、COVID-19に対する治療は受けていない患者を対象としている。