デルマニアのブログ

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新規経口GLP-1作動薬、糖尿病と肥満の治験進む Eli Lilly社が開発するorforglipron、P2試験の結果良好

 経口投与が可能な新規グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬orforglipronに関して、2型糖尿病および肥満症を対象とした第2相試験の結果が、第83回米国糖尿病学会学術集会(会期:6月23~26日、開催地:サンディエゴの会場とオンラインのハイブリッド開催)で発表された。どちらも良好な結果であり、開発元の米Eli Lilly社は、2型糖尿病(ACHIEVE trial)、過体重/肥満(ATTAIN trial)ともに、第3相試験に進むことをアナウンスした。

 orforglipronは中外製薬が創製した非ペプチド構造を持つGLP-1受容体作動薬で、2018年にEli Lilly社に導出された。低分子化合物であり、1日1回の経口投与が可能なほか、経口セマグルチド製剤のように服用時の飲食の制限も不要だ。

 2型糖尿病に対する第2相試験の結果は、Eli Lilly社のManig Kong氏が報告した。対象は、非薬物治療またはメトホルミン単独でHbA1cが7.0~10.5%の範囲にあり、BMI 23以上の成人2型糖尿病患者とした。eGFRが30mL/分/1.73m2未満の患者は除外した。主要評価項目は、ベースラインから26週後のHbA1cの変化量とした。

 試験は二重盲検ランダム化プラセボおよび実薬対照のデザインで、同薬の第2相試験として行われた。383例を、orforglipronの3mg投与群(51例)、12mg投与群(56例)、24mg投与群(47例)、36mg投与群(61例)、45mg投与群(63例)、デュラグルチドの1.5mg/週1回投与群(50例)、プラセボ群(55例)に割り付けた。orforglipronは1日1回の投与で、投与量は段階的に漸増させた。orforglipron群はデュラグルチドのプラセボを注射し、デュラグルチド群はorforglipronのプラセボを服用した。

 患者背景は平均年齢58.9歳、男性比率59%、HbA1c 8.1%、体重100.3kg、BMI 35.2、糖尿病罹病期間は8年だった。91%がメトホルミンを服用していた。

 主要評価項目である26週後のHbA1cの変化量は、orforglipron3mg群-1.19%ポイント、12mg群-1.91%ポイント、24mg群-1.79%ポイント、36mg群-2.03%ポイント、45mg群-2.10%ポイント、デュラグルチド群-1.10%ポイント、プラセボ群-0.43%ポイントだった。orforglipronの各群とデュラグルチド群はプラセボ群に対して、orforglipronの12mg以上の群はデュラグルチド群に対して、それぞれ有意な低下を示した(すべてP<0.001)。

 主要な副次評価項目であるベースラインから26週後の体重の変化量は、orforglipron 3mg群-3.7kg、12mg群-6.5kg、24mg群-9.7kg、36mg群-9.5kg、45mg群-10.1kg、デュラグルチド群-3.9kg、プラセボ群-2.2kgであり、12mg群以上でプラセボ群およびデュラグルチド群に比べ有意に大幅な減量を認めた(P<0.05または0.001)。

 安全性に関して、全ての対応を要した有害事象はorforglipron群61.8~88.9%、デュラグルチド群56.0%、プラセボ群61.8%に発生した。最も頻度が多かったものは消化器症状で、orforglipron群44.1~70.4%、デュラグルチド群34.0%、プラセボ群18.2%だった。消化器症状の程度は軽度~中等度だった。54mg/dL未満の低血糖は、orforglipron群3例、デュラグルチド群1例に発生した。

 Kong氏は「orforglipronは3mg以上の投与量でプラセボに対して、また12mg以上の投与量でデュラグルチドに対して、HbA1cと体重において、より優れた効果が認められた。有害事象は軽度~中等度の消化器症状が中心で、既存のGLP-1受容体作動薬と同様な傾向だった。本試験から、第3相試験における初期投与量と増量のレジメンを決定したい」と結論した。

 論文は発表と同時にLancet誌ウェブサイトに掲出された(Frias, et al. Efficacy and safety of oral orforglipron in patients with type 2 diabetes: a multicentre, randomised, dose-response, phase 2 study. Lancet. 2023 Jun 23;S0140-6736(23)01163-7. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01163-7. Online ahead of print.)。

 なお、同じADA2023で2型糖尿病を合併していない過体重/肥満の患者を対象に、orforglipronの肥満症治療薬としての有効性を検討した第2相試験の結果も発表された。ベースラインで108.7kg、BMI 37.9だった被験者の体重は、同薬(12mg、24mg、36mg、45mg投与群が設定された)の投与により、26週後では8.6~12.6%(9.0~13.3kg)減少した。36週後の時点で10%以上の減量達成率は46~75%と高率だった。

 この論文はthe New England Journal of Medicine誌ウェブサイトに、発表と同時に公開された(Wharton S, et al. Daily Oral GLP-1 Receptor Agonist Orforglipron for Adults with Obesity. N Engl J Med. 2023 Jun 23. doi: 10.1056/NEJMoa2302392. Online ahead of print.)。どちらの試験もEli Lilly社の資金提供で行われた。

 注射薬と経口薬の両方が発売されているセマグルチドは、経口薬の処方がメーカーの想定以上に伸びているという。GLP-1受容体作動薬は心血管系や腎の保護効果がある点でも評価されてきたが、注射薬であることが導入の敷居を高くしていた。経口可能なGLP-1受容体作動薬は、糖尿病・肥満領域における新薬開発の焦点の1つと言えそうだ。