デルマニアのブログ

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トリプルホルモン受容体作動薬retatrutideは肥満症治療に有望

 6月26日~7月2日に最もツイート数が多かったのは、NEJM誌の論文「Triple-Hormone-Receptor Agonist Retatrutide for Obesity - A Phase 2 Trial」(トリプルホルモン受容体作動薬retatrutideの肥満症に対する第2相臨床試験試験)で1282件だった。

 retatrutideは、グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンという3種類の受容体作動薬として、イーライリリー・アンド・カンパニーが開発した新薬候補だ。この論文は、肥満症患者を対象にretatrutideの減量効果を調べた第2相臨床試験について報告したものだ。

 組み入れ対象は、BMIが30以上の成人、またはBMI27~30未満で少なくとも1つの体重関連疾患がある成人とした。参加者は、retatrutideまたはプラセボを週1回皮下投与する治療を48週間継続する。retatrutideの用量は、1mg、4mg(初回投与量2mg)、4mg(初回投与量4mg)、8mg(初回投与量2mg)、8mg(初回投与量4mg)、12mg(初回投与量2mg)の6種類を設定し、これにプラセボ群を加え、2対1対1対1対1対2対2の割合でランダムに割り付けた。

 主要評価項目はベースラインから24週後までの体重変化率とした。副次評価項目は、ベースラインから48週後までの体重変化率、および48週後に5%以上減量、10%以上減量、15%以上減量の達成者の割合とした。安全性も評価した。

 試験には338人が参加し、51.8%が男性だった。24週時点の体重変化率の最小二乗平均値は、プラセボ群の-1.6%に対し、1mg群では-7.2%、4mg群では-12.9%、8mg群では-17.3%、12mg群では-17.5%だった。同様に48週時点の体重変化率の最小二乗平均値は、プラセボ群の-2.1%に対し、1mg群で-8.7%、4mg群で-17.1%、8mg群で-22.8%、12mg群で-24.2%であった。

 48週時点でベースラインから5%以上、10%以上、15%以上の減量を達成した割合は、retatrutide4mg投与群ではそれぞれ92%、75%、60%、8mg投与群は100%、91%、75%、12mg投与群は100%、93%、83%だったのに対して、プラセボ群では27%、9%、2%だった。

 retatrutide投与群で最も多くみられた有害事象は消化器系だった。これらの事象は用量に関連し、重症度は軽度から中等度がほとんどで、初回投与量を低くしたグループでは部分的に軽減されていた。用量依存的な心拍数の増加は24週でピークに達し、その後は減少した。

 これらの結果から著者らは、肥満成人に対するretatrutideの48週間投与は大きな減量効果をもたらしたと結論している。