デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

出生前パラベン曝露で超早期発症アトピー性皮膚炎リスク上昇

 ドイツの母子研究LINAに参加した母子261組を対象に、出生前パラベン曝露が小児アトピー性皮膚炎(AD)発症リスクに及ぼす影響を検討。在胎34週時に採取した母体尿中のパラベン8種を定量化し、親の報告による1-8歳のAD診断、疾患発症および持続性に基づき、小児ADを4種類の表現型に分類した。

 その結果、小児の4.6%が寛解した超早期発症型(2歳まで)AD、12.3%が寛解なしの超早期発症型AD、11.9%が早期発症型(3歳以降)、3.1%が小児期発症型(7歳以降)ADに分類された。エチルパラベンとn-ブチルパラベンへの曝露で寛解なしの超早期発症型AD発症リスクが上昇した(調整後オッズ比:エチルパラベン1.44、95%CI 1.04-2.00、n-ブチルパラベン1.95、1.22-3.12)。両パラベンの影響は、性別と関係なく母親にAD既往歴がない小児で優勢だった。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

9価HPVワクチン、6つの疑問に答えます

 2020年7月に、承認審査から5年もの歳月を経て承認された9価HPVワクチン。わが国においても子宮頸癌の原因の90%以上をカバーできると期待されているが、現時点では定期接種となっておらず、自費での接種となる。では、現時点で9価ワクチンについて患者に質問されたら、どう答えたらいいのだろうか、専門家に話を聞いた。


 

 「9価HPVワクチンの有害事象や副反応については専門家の間でも懸念されていたが、臨床試験の結果から、既存の4価ワクチンと比べても大差ないことが分かった。海外諸国に比べてわが国での承認は遅れたものの、有効性と安全性のデータがきちんとそろった上での承認となったため、待ったかいがあったと感じる」。こう話すのは、日本大学産婦人科学系産婦人科学分野主任教授の川名敬氏だ。

 2020年7月に女性を対象に承認された9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンのシルガード9水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン[酵母由来])は、4価HPVワクチン「ガーダシル」に含まれるHPV6/11/16/18型に、新たにHPV31/33/45/52/58型のVLP(ウイルス様粒子)を加えたワクチンだ(図1)。HPV6/11型は低リスク型HPVに分類され、尖圭コンジローマなどの原因となる。一方、HPV16/18/31/33/45/52/58型は高リスク型HPVで、持続感染により子宮頸癌や中咽頭癌、肛門癌などのHPV関連癌を引き起こす。

図1 9価HPVワクチンと4価HPVワクチンの比較

     

問1:既存のワクチンに比べて有効性はどれほど?

 

「9価HPVワクチンで前癌病変も含めて9割近く予防できるようになったことは、出産前の女性の健康を守る上でも重要」と語る日本大の川名敬氏。

 9価ワクチンの効果については、4価ワクチンを対照群とし、6年間の追跡調査を行った国際共同試験にて、HPV6/11/16/18型による子宮頸部の高度前癌病変および上皮内癌や外陰・膣の上皮内病変の予防において4価ワクチンと同等の効果が確認されたことに加え、HPV31/33/45/52/58型による同様の病変を97.4%減少させたことが明らかになっている(WK Huh,et al. Lancet.2017;390:2143-59.)。

 では、実際に9つのHPV型をカバーするメリットはどの程度あるのだろうか。図2昭和大学医学部産婦人科学講座講師の小貫麻美子氏らが2020年に発表した、40歳未満の日本人女性5045人の子宮頸部病変に関連するHPV型の分布だ。浸潤癌に関してはHPV31/33/45/52/58型の割合は小さいものの、前癌病変では44.3%を占めている(Onuki M,et al. Cancer Sci.2020;PMID:32372453.)。子宮頸癌は検診により前癌病変の段階で発見できたとしても、治療により早産や頸管閉鎖などのリスクが増加するため、「9価ワクチンではHPV型が増えたことにより、子宮頸癌の予防効果が増大しただけではなく、前癌病変も含めて9割近く予防できるようになった。これは出産前の女性の健康を守る意味でも重要だ」と川名氏は語る。

図2 40歳未満の日本人女性における子宮頸部病変に関連するHPV型
(Onuki M,et al. Cancer Sci.2020;PMID:32372453.を基に編集部で作成)

 これまでガーダシルと共にわが国で使用されてきた2価ワクチン(サーバリックス)で、16/18型と抗原性が類似している31/33/45/51/52型などに対する予防効果(クロスプロテクション)が確認されている。しかし、「臨床試験で確認されているクロスプロテクションの効果は5年程度とあくまで短期的なもので、長期的な効果は分からない」と川名氏は指摘する。

 なお、ワクチンによる長期的な予防効果については、9価ワクチンのフォローアップ試験にて7.6年までの効果が認められている。実際の持続効果は今後の知見を待つしかないが、4価ワクチンのフォローアップ試験では、免疫原性、予防効果ともに最長で14年間の効果が認められているため、川名氏は「9価ワクチンも同程度の効果が望めるだろう」と期待を寄せる。

 また、9価ワクチンで「ターゲットとなるHPV型を増やしたことにより、16/18型に対する効果が落ちるのではないかと懸念していたが、純粋な上乗せ効果が期待できることが分かった」と川名氏。

     

問2:副反応は他のHPVワクチンよりも増える?

 

 9価ワクチンにおける有害事象や副反応の発生頻度についてはどうだろうか。多い副反応としては注射部位の疼痛や腫脹、紅斑が挙げられ、先述の国際共同試験によると、4価ワクチンでは接種後5日以内の注射部位の副反応が84.9%だったのに対し、9価ワクチンは90.7%だった。「9価ワクチンの方が局所の副反応が若干多かったが、思っていたよりも大きな差にはならなかった」(川名氏)。

     

問3:定期接種の2価、4価の代わりに受けるべき?

 

横浜市大の宮城悦子氏は「定期接種を逃した10歳代の女性には9価ワクチンの接種を勧めている」と話す。

 現在、9価ワクチンの定期接種化については厚生労働省で検討が進められているものの、時期は未定となっており、2021年6月の時点ではワクチンの接種を希望する場合は全年齢で自費となる。金額は医療機関によって異なるが、3回で10万円程度とする医療機関が多いようだ。そんな中、日本産科婦人科学会は定期接種対象者の小学校6年~高校1年相当の女子に対して「9価ワクチンの定期接種化を待つことで定期接種の機会を逃すことのないように注意が必要」とのメッセージを2021年1月8日に出している。

 その理由を横浜市立大学医学部産婦人科学教室主任教授の宮城悦子氏は「HPVに持続感染している場合はそのHPV型に対するワクチンの効果は期待できず、性交経験がない時期にワクチンを接種することが望ましいため」と説明する。実際、子宮頸癌に対するHPVワクチンの効果が初めて確認されたスウェーデンの研究でも、年齢が低いうちに接種を受けた方が予防効果が高いことが明らかになっている。

     

問4:定期接種済みの場合は追加で受けるべき?

 

 2、4価ワクチンを接種済みの場合、子宮頸癌の原因の多くを占める16/18型に対する免疫は既に獲得されていることなどから、世界保健機関(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)は9価ワクチンの追加接種を推奨していない。しかし、「安全性に関するデータも幾つか出ているため、既に感染している場合はワクチンの効果は期待できないことを理解した上で、9価ワクチンを追加接種することは問題ないと考える」と川名氏は話す。希望があれば、接種をちゅうちょする必要はなさそうだ。

     

問5:定期接種を受けていない場合は?

 

 一方、定期接種を受けていない場合はどうしたらいいだろうか。宮城氏は「定期接種を逃してしまった10歳代の女性には、積極的に9価ワクチンの接種を勧めている」と話す。定期接種を中断してしまい自己負担が不要な接種の対象年齢から外れた場合、2価または4価の残りの回数を接種するか、9価を3回打つのかは、いずれにしても任意接種のため個々の判断となる。

 また、成人女性に対する接種については、先述のスウェーデンの研究では17~30歳で接種を開始した女性でも未接種女性に比べて53%の子宮頸癌減少効果が確認されている。そのため「性交経験後であっても、ワクチンの効果が期待できる女性は存在するだろう」と川名氏。ただし、HPVは性経験のある女性では50%以上が生涯で一度は感染する一般的なウイルスであるため、性行為を始めた後の場合、早ければ早い方がよいということになる。

問6:9価ワクチンの接種は進むの?

 

 9価ワクチンは米国をはじめとする多くの国々で既に定期接種化されているが、わが国ではその議論が始まったところで、定期接種に組み入れられるかはまだ分からない。

表1 ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について
(出典:厚生労働省HPVワクチンに関する通知・事務連絡)

 わが国では2010年からHPVワクチンの公費助成が開始されたが、接種後に原因不明の疼痛や運動障害などが報告されたことから、2013年6月、定期接種は継続するものの積極的な勧奨が差し控えられた経緯がある。そのため、公費助成導入期に接種対象だった女子では70%程度の高い接種率を有しているのに対し、2002年度以降に生まれた女子では1%を切っている。「20歳代前半の女性の中には、検診で異形成が見つかり、そのときに初めて無料でワクチンを接種できたことを知る人も少なくない」と宮城氏。

 厚労省もこうした事態を懸念し、昨年10月に各自治体に向けた通知を発出。やむを得ない場合を除き、対象者に対してHPVワクチンに関する情報をまとめたリーフレットを個別に送付するなど、希望者が接種を受けやすいよう情報提供を充実させることを求めた。医療機関においても、これまでは対象者がHPVワクチン接種のために受診した場合は積極的な勧奨を行っていないことを伝える必要があったが、その文言が削除されている(表1)。ただし、新たな方針は中立的な立場で情報を提示し、「接種を受けたい人が受けられる」環境を整えることを目的としており、「積極的勧奨はしない」方針は変わらない。

 川名氏は、「個別通知の再開により、クリニックや保健所ではHPVワクチンに関する問い合わせがかなりあるものと考えられる。しかし、『接種するなとは言わないが、推奨はしない』という国の姿勢を踏まえると、開業医もHPVワクチンを勧めにくいのではないか」と危惧する。そのため、「接種率の向上のためには、まずは積極的な勧奨の再開が望まれる」との考えだ。加えて宮城氏は、「接種の機会を逃した女子が無料でワクチンを接種できるようにするキャッチアップ接種についても、特に有効性が期待できる10歳代の女性に対しては早急に体制整備を進める必要がある」とも語る。

 9価ワクチンの世界的な供給不足の問題もある。「9価ワクチンを定期接種に組み入れる国が増えたことにより、世界中で取り合いの状況が生じている。その中で、HPVワクチン接種率が著しく低いわが国では、必要量のワクチンを確保できない可能性がある」と宮城氏は指摘する。川名氏も「まずは4価ワクチンの接種率を上げないことには9価ワクチンの定期接種化は難しいのではないか」と話す。


リツキシマブ投与で中和抗体陽性率6割低下 リウマチ性疾患に対するコロナワクチンの免疫原性

 一部の免疫抑制薬が新型コロナウイルスSARS-CoV-2)ワクチンの免疫原性を減弱させることが報告されている。イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのVictoria Furer氏らは、一般集団と比較した自己免疫性炎症性リウマチ性疾患(AIIRD)患者におけるSARS-CoV-2ワクチン接種後の免疫原性を調査。その結果、大半のAIIRD患者で免疫原性を確認できたものの、免疫抑制薬を投与している患者では免疫原性が損なわれる傾向があり、抗CD20抗体リツキシマブを投与している患者では中和抗体陽性率が6割近くも低下したと欧州リウマチ学会(EULAR 2021、6月2~5日、ウェブ開催)で発表した。

AIIRD患者686例と対照121例を比較

 ファイザーおよびモデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの臨床試験では、自己免疫疾患の既往または免疫抑制薬の投与は除外項目であったため、AIIRD患者に対するmRNAワクチンの有効性および安全性に関するデータは十分でなかった。

 Furer氏らは、イスラエルの人口の約57%がファイザー製ワクチンの接種を受けた2020年12月~21年3月における3つの大規模医療施設のデータを収集。2回目のワクチン接種から2~6週後におけるAIIRD患者の免疫原性や免疫抑制薬の影響、安全性などを一般集団と比較する前向き観察研究を実施した。

 対象は18歳以上とし、AIIRD群(686例)には関節リウマチ(RA、38.3%)、乾癬性関節炎(PsA、24.1%)、体軸性脊椎関節炎(AxSpA、9.9%)、全身性エリテマトーデス(SLE、14.7%)、特発性炎症性筋疾患(IIM、2.8%)、大型血管炎(LVV、3.1%)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV、3.8%)、その他の血管炎(3.4%)を、対照群(121例)にはAIIRDの既往および免疫抑制薬の投与がない者を組み入れた。妊婦または、ワクチンによるアレルギー歴およびCOVID-19発症歴を有する者は除外した。

 免疫原性については、DiaSorin社のLIAISON SARS-CoV-2 S1/S2 IgG assayを用いて、15BAU/mL超を中和抗体陽性と判定した。

65歳超、RA、AAV、IIMが中和抗体陽性率低下の因子

 AIIRD群および対照群で平均年齢はそれぞれ59歳(範囲19~88歳)、49.5歳(同18~90歳)、女性はそれぞれ69.3%、65.6%だった。

 中和抗体陽性率は対照群で100%だったのに対し、AIIRD群では86.0%だった。平均中和抗体価はそれぞれ218.6±82.06BAU/mL、132.9±91.7BAU/mLとAIIRD群で低かった。また中和抗体陽性率はRAおよびその他の血管炎患者でやや低く、AAVおよびIIM患者では大幅に低かった(1)。

1. 中和抗体陽性率と平均中和抗体価

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 AIIRD群の中で中和抗体陽性率が高く、症例数が比較的多いPsA患者とそれ以外の患者を比較し、ロジスティック回帰モデルを用いて中和抗体陽性率の調整済みオッズ比(aOR)を算出したところ、①65歳超(aOR 0.429、95%CI 0.246~0.747、P=0.0027)②RA(同0.305、0.113~0.821、P=0.0187)③AAV(同0.043、0.011~0.165、P<0.0001)④IIM(同0.063、0.015~0.268、P=0.0002)―が中和抗体陽性率低下の因子として同定された。

リツキシマブ投与~ワクチン接種の期間も免疫原性への影響大

 AIIRD群の95.2%に免疫抑制薬が投与されており、主な内訳はメトトレキサート(MTX)25.66%、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬25.07%、グルココルチコイド18.95%、抗CD20抗体(リツキシマブ)12.68%、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬7.14%、抗インターロイキン(IL)-17抗体7.00%などであった。

 またAIIRD群では免疫抑制薬の投与により、中和抗体陽性率が低下する傾向が見られた(2)。Furer氏は「とりわけリツキシマブ投与により、免疫原性が大きく損なわれていた。リツキシマブ単剤療法を施行した患者では中和抗体陽性率が最も低い39.29%だった」と述べた。

2. 投与された免疫抑制薬別に見た中和抗体陽性率

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 さらに、リツキシマブ投与からワクチン接種までの期間が短いほど免疫原性は大きく減弱し、インターバルが90日では中和抗体陽性率は1.15%、180日で18.39%、365日で52.18%だった()。

. リツキシマブ投与からワクチン接種までの期間別に見た中和抗体陽性率

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 ワクチン接種後にAIIRD群の1例がCOVID-19を発症し死亡、対照群の1例が軽度のCOVID-19を発症、その後回復した。

 軽度の有害事象の発現頻度は両群で同等だった。対照群で重篤な有害事象は認められなかったのに対し、AIIRD群で注目すべき有害事象として帯状疱疹6例、ぶどう膜炎2例、口唇ヘルペス1例、心膜炎1例を認めた。また、2回目のワクチン接種後にAIIRD群で3例が死亡した。

 ワクチン接種後におけるAIIRDの疾患活動性はおおむね安定的だった。

リツキシマブの投与延期を考慮すべき

 以上から、Furer氏は「AIIRD患者においてもワクチン接種後の中和抗体陽性率は86%と高かったものの、中和抗体価は低下していた。MTXや生物学的製剤、JAK阻害薬を含めほとんどの抗リウマチ薬は、ファイザー社のmRNAワクチン接種に際して継続使用が可能と考えられるが、リツキシマブにおいてはワクチンによる免疫原性を維持するために、可能であれば治療の延期を考慮すべきである」と結論。また、「ミコフェノール酸モフェチルおよびアバタセプト(特にMTXと併用する場合)においても、治療を継続する場合には個別に検討する必要がある」と付言した。

 

抗TNFα製剤でコロナワクチンの効果減弱

 抗腫瘍壊死因子(TNFα)抗体製剤インフリキシマブを使用中の炎症性腸疾患(IBD)患者では、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)ワクチンの初回接種後の抗体反応が減弱していたとする大規模研究の結果が明らかになった。英・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A.Kennedy氏らがGut2021年4月26日オンライン版)に発表した。

抗体医薬ベドリズマブ使用患者と比較

 英国をはじめワクチンの供給量が不十分な地域では、できるだけ多くの人にワクチンを接種するため、2回目の接種を遅らせる措置が取られている。しかし、それと引き換えに多くの高リスク者で十分な防御免疫が獲得できていない状況が生じている。

 また、化学療法を受けているがん患者や代謝拮抗薬による免疫抑制療法を受けている臓器移植後の患者では、SARS-CoV-2に対する抗体が産生されにくいことが報告されている。しかし、SARS-CoV-2ワクチン接種後に抗TNFα抗体製剤が免疫原性に与える影響について調べた研究の報告はなかった。

 そこで、Kennedy氏らは今回、2020年9~12月に英国92施設でCLARITY studyに登録されたクローン病および潰瘍性大腸炎の患者のうち、インフリキシマブを使用中の865例(インフリキシマブ群)と、抗α4β7インテグリン抗体製剤ベドリズマブを使用中の428例(ベドリズマブ群)を対象に、これらの薬剤がSARS-CoV-2ワクチン初回接種後の血清学的反応に与える影響について比較検討した。

 主要評価項目は、1回目のSARS-CoV-2ワクチン(ファイザー製またはアストラゼネカ製)の接種から3~10週後に測定したSARS-CoV-2スパイク蛋白質に結合する抗体価、副次評価項目はセロコンバージョン率などであった。

初回接種後の抗体価はインフリキシマブ群で低い

 検討の結果、ファイザー製またはアストラゼネカ製ワクチン接種後の抗SARS-CoV-2抗体価の幾何平均値(SD)は、ベドリズマブ群と比べてインフリキシマブ群で低かった〔ファイザー製ワクチン接種後:28.8(5.4)U/mL vs. 6.0 (5.9)U/mL、P<0.0001、アストラゼネカ製ワクチン接種後:13.8 (5.9)U/mL vs. 4.7(4.9) U/mL、P<0.0001〕。

 また、多変量モデルを用いた解析でも、いずれのワクチンについても初回接種後の抗体価はベドリズマブ群と比べてインフリキシマブ群で低いことが示された〔ファイザー製ワクチン接種後:倍率変化(FC)0.29、95%CI 0.21~0.40、P<0.0001、アストラゼネカ製ワクチン接種後:FC0.39、95%CI0.30~0.51、P<0.0001〕。

抗体価の低下は、高齢、免疫調整薬の使用、クローン病、喫煙と関連

 また、高齢(60歳以上)、免疫調整薬の使用、クローン病、喫煙は抗SARS-CoV-2抗体価の低下に関連していた一方、白人以外の民族は抗SARS-CoV-2抗体価の上昇と関連していた。いずれのワクチンについても、接種後のセロコンバージョン率は過去にSARS-CoV-2感染歴がある患者、およびファイザー製ワクチンを2回接種した患者で高いことも示された。

 以上を踏まえ、Kennedy氏らは「インフリキシマブを使用中の患者に対しては、SARS-CoV-2ワクチンの2回目の接種を遅らせるべきではない」と主張している。

 

gut.bmj.com

黒色腫でペムブロリズマブ+イピリムマブが抗腫瘍活性示す

 抗プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)/リガンド1(L1)抗体単独または他剤との併用による免疫療法失敗後の進行性黒色腫の患者70例を対象に、低用量のイピリムマブとペムブロリズマブ併用の効果を前向き臨床試験で評価。35例が主要評価項目に規定した免疫反応の基準による奏効(irRECIST RR)達成した後、正確な評価のため登録者を計70例まで拡張した。

 その結果、5例が完全寛解、15例が部分寛解を得て、全試験集団のirRECIST RR率は29%となった。無増悪生存中央値は5.0カ月、全生存中央値24.7カ月、奏効期間中央値16.6カ月だった。抗PD-1/L1治療時間中央値またはPD-1+CTLA 4による治療開始までの時間に奏効の有無による差はなかった。27%にグレード3-4の薬剤関連の有害事象が発現した。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

「リンヴォック」使用上の注意を学会周知 「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」の適応追加に伴い

 日本皮膚科学会はこのほど、同学会乾癬分子標的薬安全性検討委員会作成の「ウパダシチニブ(販売名:リンヴォック)の使用上の注意」をホームページで周知した。「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」の適応追加が2021年5月に承認されたことを受けてのもの。効能・効果、用法・用量、留意点などについてまとめられている。

 追加承認された効能・効果の注意は、「既存の全身療法(メトトレキサート等の従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬等)で十分な効果が得られない、難治性の関節症状を有する患者に投与すること」。用法・用量は、「ウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与」である。

 免疫抑制作用の増強により感染症リスクの増加が予想されることから、「乾癬に用いられる生物学的製剤、他の経口JAK阻害剤、タクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビン等の免疫抑制剤(外用薬等の局所製剤を除く)との併用はしないこと」も併せて注意喚起している。

 

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/about/Upadacitinib_guid.pdf

アトピー検査キットをコロナ重症化判定に適応追加/塩野義

 塩野義製薬は6月7日、アトピー性皮膚炎の重症度を診断する検査キット「HISCL TARC試薬」について、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)陽性患者の重症化予測の補助を使用目的とする適応追加の承認を同日付で取得したと発表した。COVID-19の発症初期から重症化リスクを判別することで、リスクに応じた最適な措置につなげ、医療体制の逼迫や医療崩壊を回避する一助となることが期待される。現在、保険適用を申請中。

 「HISCL TARC試薬」は、2014年にシスメックスと共同開発したTARC1)を測定する検査キットで、すでにアトピー性皮膚炎の重症度評価の補助を目的とした体外診断用医薬品として使用されている。国立国際医療研究センターによる臨床研究では、COVID-19重症化患者においては、発症初期から血清中のTARC値が低いことが確認されており、1回の測定で患者の重症化を早期に予測できる分子マーカーとしてTARCの有用性が示されているという。
 1) 71 個のアミノ酸で構成されるタンパク質で、Th2細胞を炎症部位に遊走させるケモカイン群の1 つ。

 COVID-19の重症化予測マーカーとしては、2021年2月に保険適用を受けたシスメックス社の「HISCL IFN-λ3試薬」があり、主に入院患者に対して重症化の兆候を早期に把握することを目的に使用されている。塩野義製薬は、今回の適応追加承認により、COVID-19発症初期から重症化リスクを判別することで、リスクの高い患者を入院管理、リスクの低い患者を宿泊療養や自宅療養とするなど個別に最適な措置につなげていくことが期待されるとコメントしている。

コメント:

TARC, コロナの重症度判定に適応追加です。