筋肉を増やす効果のある新しい薬剤を開発し、動物実験で効果を確かめたと、東京大の研究チームが15日発表した。高齢者やがん患者の筋力低下を防ぐ治療薬につながる可能性があるという。成果は、科学誌「アイサイエンス」に掲載される。
チームは、筋肉の発達を抑える働きのある「ミオスタチン」などの体内物質に着目。これらの物質の働きを阻害する薬剤を作り、筋肉が衰える筋ジストロフィーのマウスに2週間投与したところ、偽薬を与えたマウスに比べ、後肢の筋肉が2~3割増加したことを確かめた。前肢の握力も増加した。副作用は見られなかったという。
同様の働きがある薬剤は、過去に海外で臨床試験まで進んだが、血管の機能を調節する体内物質の働きも阻害してしまい、出血などの副作用が出て行き詰まっていた。今回の薬剤は、より少ない種類の体内物質だけを阻害するので、人間でも副作用が起きにくいと期待できるという。
チームの宮園浩平・東大教授(腫瘍学)は「副作用なしに筋肉の増大が確認できたのは大きな成果」と話す。今後、さらに薬剤の改良を進め、実用化に向け企業などとの連携を検討するという。
東京薬科大の林良雄教授(創薬化学)の話「夢の新薬に向けた第一歩の成果。年齢による効果の違いなどを確かめる必要がある」
◆ミオスタチン=人や魚、牛など多くの動物が持つたんぱく質。遺伝子異常でミオスタチンが作られないと、筋肉が異常に発達してしまう。ゲノム編集技術でミオスタチン遺伝子を壊し、肉厚のマダイなどを作る研究も行われている。
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