デルマニアのブログ

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がん免疫療法の効果は皮膚に生じた副作用が目安になる? 白斑や扁平苔癬、皮膚掻痒症などの出現で死亡リスクが大きく低下

 がん免疫療法で使われる薬剤である免疫チェックポイント阻害薬(ICI)では、副作用として皮膚症状がよく生じる。こうした皮膚症状は、実際には薬剤が奏効していることを示す可能性があるとする研究結果を、米マサチューセッツ総合病院(MGH)のYevgeniy Semenov氏らが報告した。研究の詳細は、「JAMA Dermatology」に1月12日報告された。

 ICIは、がん細胞により抑制される免疫細胞の働きを活性化させることでがん細胞に対する攻撃力を保つもので、今や多くの進行がん患者に対する標準的な治療法となっている。しかし、この薬剤を使用した20~40%の患者に、副作用として皮膚症状が現れる。Semenov氏らによると、これまでに数多くの研究で、このような皮膚症状のがんの転帰に対する予後予測能について検討されてきた。しかし、皮膚症状の種類とがん患者の生存率との特異的な関連について判明していることはわずかであるという。

 そこでSemenov氏らは、欧米の患者2億人以上の患者の電子カルテにアクセスできる国際医療研究ネットワーク(TriNetX Diamond Network)を用いて、ICI(抗PD-1抗体抗PD-L1抗体)により治療後6カ月以内に皮膚症状が現れた7,008人(ICI群)を抽出した。患者のがん種は、気管支・肺、消化器、または腎尿路のがん、悪性黒色腫のいずれかで、平均年齢は68.2歳、女性が43.3%を占めていた。また、ICI群と年齢、性別、人種、およびがん種をマッチさせた、皮膚症状の現れなかった7,008人を対照群として設定し、皮膚症状と死亡リスクとの関連を検討した。

 解析の結果、ICI群では対照群よりも死亡リスクが22%有意に低いことが明らかになった。死亡リスクは皮膚症状の種類によって異なり、特に白斑(皮膚の一部の脱色)、扁平苔癬皮膚炎症の一種)、皮膚掻痒症乾皮症、非特異的発疹が現れた患者では特に大きなリスク低下(30~50%)が認められた。

 こうした結果を受けてSemenov氏は、「皮膚毒性は免疫療法の初期に生じやすい傾向があり、治療開始後すぐの有効性を評価する機会となる。そのため、今回の研究で得られた知見は、現行の治療レジメンからベネフィットを得られる可能性が高い患者と、より強力な治療や他のレジメンを検討するべき患者を特定するのに役立つ可能性がある」との見方を示している。また同氏は、「この研究は、がん専門医や皮膚科医が、がん免疫療法を受ける患者に皮膚障害の臨床的意味について説明する上で、重要な情報となるものだ」と話す。

 研究グループは、「免疫チェックポイント阻害薬と、その副作用として生じた皮膚症状および患者の転帰との関連や、皮膚症状の治療や予防に用いる療法が患者の生存率に及ぼす影響の有無について明らかにするには、さらに研究を重ねる必要がある」と述べている。

 

jamanetwork.com