デルマニアのブログ

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免疫チェックポイント阻害薬の長期的な副作用が明らかに Cancer Currents――米国立がん研究所(NCI)

 免疫チェックポイント阻害薬は多くのがん腫に使用される免疫療法の一種で、この薬剤によって長期的寛解を得る患者もいる。一連の薬剤の短期的な副作用はよく知られているが、長期的または慢性の副作用の可能性はあまり知られていない。新たな研究によれば、免疫チェックポイント阻害薬は、軽度なものが大多数ながら、さまざまな長期的な副作用を引き起こすことがあるという。

 ニボルマブオプジーボ)やペムブロリズマブキイトルーダ)などの免疫チェックポイント阻害薬は、がんを殺傷する免疫細胞のブレーキを解除する。しかし、こうして活性化した免疫細胞が正常組織を損傷し、副作用を引き起こすこともある。

 免疫チェックポイント阻害薬の副作用のほとんどは短期的(急性)なもので、ステロイド薬で治療可能である。現在までこのような治療薬の長期的な副作用の頻度や時期、範囲はあまり知られていなかった。

 この新たな研究では、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けて間もない悪性黒色腫患者の実環境データ(リアルワールドデータ)を調査し、免疫系が引き起こす副作用に注目した。

 悪性黒色腫患者の40%以上が長期的な免疫関連副作用を発症したことが、JAMA Oncology誌2021年3月25日号で報告された。副作用のほとんどは、追跡調査期間約1.5年の間に消失しなかった。

 「このような治療薬によって多くの患者に長期生存の機会がもたらされています」と研究の研究代表者、Douglas Johnson医師(ヴァンダービルト大学医療センター)は述べ、「しかし、生存期間の伸長によって、長期的な副作用が生じる可能性も出てきます」と解説した。

 免疫チェックポイント阻害薬は、ますます多くのがんの治療薬として多くの併用療法で使用されているため、その長期的な影響を詳しく理解することの重要性が一層高まっています、とJohnson氏は言い添えた。

 「要するに、医師は患者と慢性的な副作用の可能性について話し合い、潜在的な便益と害を比較する必要があるのです」。

短期的な(急性の)副作用

 Johnson氏らは、米国やオーストラリアの病院8施設で治療を受けた進行悪性黒色腫患者387例の診療記録を調査した。

 患者は、標準治療、つまり外科手術による腫瘍の完全切除後の免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブまたはペムブロリズマブ)投与を受けていた。ほとんどの患者で悪性黒色腫が再発せず、ほぼ全例が中央値18カ月となる観察期間後にも生存していた。

 大多数の患者(267例、69%)が短期的な免疫関連副作用を経験していた。最も多い短期的な副作用は、皮膚の発疹やかゆみ、甲状腺炎症甲状腺炎)や甲状腺ホルモンの減少(甲状腺機能低下症)および関節痛であった。

 2例が短期的な副作用のため死亡し、1例は心筋の炎症(心筋炎)で、もう1例はギラン・バレー症候群自己免疫疾患だった。

 短期的な副作用の頻度と重症度は、他の研究で認められているものと一致する、とJohnson氏。

長期的な(慢性の)副作用

 全体で、167例(43%)が免疫チェックポイント阻害薬の投与終了から3カ月間以上持続する免疫関連副作用を経験した。Johnson氏らはこのような副作用を「慢性または長期的な副作用」と名付けた。

 「この頻度は、転移がん(患者)を対象とした研究から想定したものよりも高いものでした」とJames Gulley氏(医学博士、NCIがん研究センターで多くの免疫療法臨床試験を主導してきたが、この研究には不参加)は述べた。

 このような長期的な副作用の大半は軽度で、患者の日常生活に多少の支障を来し、治療を必要とすることもあった。主な慢性症状は、皮疹、甲状腺機能低下症、および関節痛であった。

 ほとんどの長期的な副作用が研究期間中も持続した。以下の副作用は、他の副作用よりも持続する傾向にあった。

 「慢性的な副作用の中には持続期間が分かっていないものもあります。この分野に関して、間違いなく研究を進める必要があります」とJohnson氏は述べ、「診療記録のデータは臨床試験のように体系的に収集されているわけではないので、長期的な副作用に関して、もっと厳密なデータ収集が必要かもしれません」と言い添えた。

 「こうした慢性的な副作用を治療したり制御したりする最善の方法に関する研究も必要です」とGulley氏は指摘した。長期的な副作用の中には、ステロイド薬や他の薬剤で容易に治療可能なものがある一方で、口腔乾燥症や脳神経関連副作用(ギラン・バレー症候群など)のようにそうでないものもある。

治療の早期中止

 この研究では、患者の4分の1が急性の副作用によって免疫チェックポイント阻害薬を中止した。

 「この数値は(免疫チェックポイント阻害薬の)臨床試験で報告されているものと比べると確かに高いです。しかし実際には、これは臨床現場で予想される程度のものです」とJohnson氏は述べた。

 悪性黒色腫には免疫チェックポイント阻害薬を12カ月間投与することが推奨されています、とJohnson氏は解説した。しかし、臨床現場では患者が寛解状態にあり、軽度だが厄介な副作用がある場合、患者と担当医は数カ月早い治療の中止を決めることがある。

 「この研究から、必要な治療期間に関して疑問が生じます」とGulley氏。「治療期間を短くすることで、効果は同じでも毒性を抑えることが可能だからです」

免疫チェックポイント阻害薬の長所と短所を比較

 この研究では、免疫チェックポイント阻害薬を使用する術後化学療法、つまり外科手術後にがん再発の可能性を減らすために実施する治療法に注目した。一部の患者では、悪性黒色腫は外科手術だけで治療可能で、術後化学療法は特別な予防措置に過ぎない。「だから、術後化学療法の長期的な副作用は、このような患者にとって特に重要なのです」とJohnson氏。

 「これは、治療しても治癒しない可能性が高い、活発に増殖している転移がんとは状況が異なります」とGulley氏は述べる。

 「患者と担当医は、免疫チェックポイント阻害薬を使用する術後化学療法の考えられる害と便益を比較すべきです」とJohnson氏らは指摘する。しかし個人では、こうした便益と害を経験する機会はそれほど明快ではない。

 体内のがんの進行度(病期)などの特定の特徴から、がん再発の一般的なリスクや術後化学療法潜在的便益を判断する。しかし現時点で、患者個別のリスクを正確に明らかにする方法は存在しない。

 また、この研究から副作用の範囲が正確に把握できるようになるとはいえ、慢性的な副作用を発現する可能性やその重症度を知ることはできない。Johnson氏らは、重度または慢性的な副作用を発症する可能性のある患者を予測する方法を研究することで、この問題を解決したいと考えている。

 「慢性的な副作用が人々の生活の質に及ぼす影響もあまり知られていません」とGulley氏は述べ、「容易に対処できるものもある一方で、日常生活に大きな影響を及ぼすものもあります」と言い添えた。

 「また、根本的な問題は、便益が害を上回る転換点がどこにあるのかということです」

 Johnson氏は「この研究が成功すれば、このような未解決の問題をさらに詳しく調べる研究を実施する可能性が広がるでしょう」と述べた。

www.cancer.gov
ICIの長期的な副作用として、やはり自己免疫疾患が結構でますね。