デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

MR拮抗薬、尋常性痤瘡への効果は?

 尋常性痤瘡(にきび)の治療には、抗アンドロゲン作用を持つミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬スピロノラクトンの有効性が示唆されている。英・University of SouthamptonのMiriam Santer氏らは、抗菌薬治療を要する尋常性痤瘡の成人女性患者を対象にスピロノラクトンの有効性および安全性を検証する第Ⅲ相多施設共同二重盲検プラグマティックランダム化比較試験(RCT)SAFAの結果をBMJ2023; 381: e074349)に発表した。

欧米のガイドラインでは有用性が示唆

 尋常性痤瘡治療の第一選択は抗菌薬、アダパレン、過酸化ベンゾイルなどの外用薬だが、炎症を伴う場合には経口抗菌薬が用いられている。しかし、薬剤耐性菌の蔓延が大きな問題となっており、抗菌薬に代わる治療法の確立が求められている。

 現在、高血圧などを適応症として広く用いられているスピロノラクトンは、欧米のガイドラインでは尋常性痤瘡の管理における有用性が示唆されているが、RCTによるエビデンスは不足している。日本では『尋常性痤瘡治療ガイドライン2017』において、炎症を伴う場合でも痤瘡へのスピロノラクトン内服を推奨していないが(推奨度:C2)、実臨床では難治性の尋常性痤瘡に対して自由診療で用いるケースは少なくない。

10施設・410例が対象

 Santer氏らは今回、尋常性痤瘡に対する経口スピロノラクトンの有効性と安全性を検討する第Ⅲ相プラグマティックRCT・SAFAを実施した。対象は、顔面の尋常性痤瘡が6カ月以上認められ、治験責任医師による全般的評価が2以上(軽症または悪化)かつ抗菌薬の経口投与が必要と判断された18歳以上の女性患者。

 イングランドおよびウェールズの10施設で登録した410例(平均年齢29.2歳、軽症190例、中等度166例、重症54例)を、スピロノラクトン群(201例)とプラセボ群(209例)に1:1でランダムに割り付け、50mg/日を6週間経口投与し、忍容性が得られた場合は100mg/日を24週まで継続投与した。試験期間中、外用薬の継続は許可したが12週以内の変更や他の経口薬の併用は禁止した。

  主要評価項目は、12週時点の尋常性痤瘡特異的QOL(Acne-QoL)症状サブスケールスコア (範囲0~30、高スコアほどQOL改善)とした。副次評価項目は12、24週時点の患者自己評価による全般的改善度および全般的評価(PGA)、12週時点の治験責任医師による全般的評価(IGA)のベースラインからの変化、有害事象などとした。

12週時点より24週時点の症状改善度が大きい

 解析した結果、12週時点のAcne-QoL症状サブスケールの平均スコアは、ベースラインの13.2点から両群で改善が認められ、改善度はスピロノラクトン群で有意に大きかった(19.2点 vs. 17.8点、調整平均差1.27点、95%CI 0.07~2.46点)。群間差は24週時点でさらに広がった(21.2点 vs. 17.4点、同3.45点、95%CI 2.16~4.75点)。

 患者自己評価による全般的改善度は、12週時点で両群に差はなかったが、24週時点ではスピロノラクトン群で有意な改善が認められた〔82% vs. 63%、調整オッズ比(aOR)2.72、95%CI 1.50~4.93)。PGAで治療成功と見なされた割合に12週時点で有意差はなかったが、24週時点では有意差が認められた(32% vs. 11%、同3.76、1.95~7.28)。IGAで治療成功と見なされた割合は、12週時点でスピロノラクトン群が有意に多かった(19% vs. 6%、同5.18、2.18~12.28)。

 1つ以上の有害事象が発現した患者の割合は、プラセボ群と比べてスピロノラクトン群で有意に高く(51% vs. 64%、P=0.01)、症状としては頭痛が有意に多かった (12% vs. 20%、P=0.02)。ただし大半が軽度で、両群とも試験薬に関連した重篤な有害事象は認められなかった。

 以上の結果を踏まえ、Santer氏らは「成人女性の尋常性痤瘡に対する経口スピロノラクトンは有効性が高く、重篤な安全性の懸念は認められなかった。また、抗菌薬の代替治療になりうる可能性も示された」と結論。治療開始後12週時点と比べ24週時点での症状改善度が高かったことから、「スピロノラクトンの治療を3カ月以上継続することで、短期的な治療より高い有効性が期待できる」と言及している。