デルマニアのブログ

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新規円形脱毛症治療薬リトレシチニブを承認 JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬

 ファイザーは昨日(6月26日)、全頭型および汎発型を含む円形脱毛症(AA)に対する経口JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬リトレシチニブ(商品名リットフーロカプセル50mg)の製造販売承認を取得したと発表した。AAの全身治療薬としては、昨年(2022年)6月に承認されたJAK阻害薬バリシチニブに次いで2剤目となる(関連記事「円形脱毛症、新たな治療の幕開け」)。なお今回の承認に関し、AA診療を専門とする杏林大学皮膚科学内講師・木下美咲氏の寄稿を後日掲載予定。

これまで根治療法はなし

 日本皮膚科学会の『円形脱毛症診療ガイドライン2017年版』では、AAに対する推奨度A(行うよう強く勧める)の治療法はなく、B(行うよう勧める)の治療法も、①ステロイド局所注射療法、②局所免疫療法、③ステロイド外用療法、④かつらの使用-に限られている。

 このようにAAに関しては、十分な有効性が認められる治療法は存在せず、根治療法も存在しないのが現状だ。

国際共同試験でSALT20以下達成率を有意に改善

 こうした状況下において、バリシチニブに次いでAAに対する全身療法薬として承認されたリトレシチニブは、JAK1/2を阻害するバリシチニブと異なりJAK3/TECファミリーキナーゼを阻害。JAK3の阻害によりAAの病態に関与するインターロイキン(IL)-15、IL-21の共通γ鎖受容体のシグナル伝達を抑制し、TECファミリーキナーゼの阻害によりCD8陽性T細胞およびNK細胞の細胞溶解能を抑制する機序を持つ。

 リトレシチニブの有効性と安全性は、全頭型および汎発型を含むAA患者を対象とした国際共同試験(ALLEGRO-2b/3、ALLEGRO-LT)で示されており、その結果に基づき昨年8月に製造販売承認が申請されていた。

 両試験において、プラセボ群と比べリトレシチニブ群(50mgおよび30mg群/日)は、主要評価項目である投与開始後第24週時のSALT20以下〔脱毛症重症度評価ツールSeverity of Alopecia Tool(SALT)に基づく頭部脱毛20%以下〕達成率を有意に改善。忍容性、安全性も良好であった。