デルマニアのブログ

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円形脱毛症に新薬リトレシチニブが有効 多施設共同第Ⅲ相非盲検試験

 円形脱毛症(AA)に対する新規治療薬の有効性と安全性が示された。杏林大学皮膚科学内講師の木下美咲氏は、AAに対するJAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬リトレシチニブに関し、最長36カ月にわたる長期安全性および有効性を評価する多施設共同第Ⅲ相非盲検試験(ALLEGRO-LT試験)の中間解析結果を第122回日本皮膚科学会(6月1~4日)で報告。12歳以上のAA患者における投与開始後24カ月経過時の有効性と安全性が示されたと発表した。

先行試験では50%以上の脱毛を認める患者で有効性を示す

 リトレシチニブに関しては、先行のプラセボ対照第Ⅱb/Ⅲ相ランダム化比較試験(ALLEGRO-Ⅱb/Ⅲ試験)にて、50%以上の脱毛が認められるAA患者で投与開始後24週時点における有効性が示されていた。同試験の主要評価項目は頭髪の脱毛範囲を評価するSeverity of Alopecia Tool(SALT)スコア20以下(脱毛面積が20%以下)、重要な副次評価項目はSALTスコア10以下(同10%以下)であり、いずれもプラセボ群に比べリトレシチニブ群で有意に達成割合が高かった。

新規の試験参加群447例を対象に検討

 一方、ALLEGRO-LT試験は先行試験であるALLEGRO-ⅡaおよびⅡb/Ⅲ試験からの移行被験者および新規参加者を対象としており、木下氏はそのうち新規参加群447例を対象とした中間解析結果について報告した。

 新規参加群の主な組み入れ基準は、①AA(全頭型脱毛症と汎発型脱毛症を含む)と診断され、AAに起因する25%以上の頭髪の脱毛が認められる12歳以上の患者、②スクリーニング時およびベースライン時(治験薬投与開始日)を含む直近6カ月に硬毛の再生兆候がない、③現在の脱毛症状が発症してから10年以内である-などとした。

 なお、新規参加群に一度も治験薬を投与されなかった2例を加えた449例の平均年齢は32.9歳、そのうち16.9%は青少年(12~17歳)であり、全体の34.5%は全頭型脱毛症または汎発型脱毛症、平均SALTスコアは74.5だった。

 リトレシチニブの投与量は、ベースライン時から4週間までは1日1回200mg、以降は1日1回50mgとした。

 新規参加群の大半は12カ月以上リトレシチニブを投与(383例、85.7%)。データカットオフ時点で試験を中止したのは97例(21.6%)で、理由としては参加者による離脱(5.3%)、適格基準の喪失(4.0%)などが多かった。

SALTスコア20以下は69.6%、10以下は62.5%が達成

 中間解析の結果、SALTスコア20以下および10以下の達成割合は投与開始後24カ月にわたり上昇傾向が認められ、24カ月時点におけるSALTスコア20以下の達成率は69.6%、10以下の達成率は62.5%だった()。

図. リトレシチニブ投与後のSALTスコア達成率

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ファイザー社提供)

 有害事象に関しては、安全性解析に含まれた447例で1,448件が認められたものの、ほとんどは軽度~中等度だった(94.6%)。これらのうち、比較的多く見られた有害事象は頭痛(16.3%)、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)検査陽性(13.4%)、痤瘡(11.6%)などであった。

 なお、有害事象に日和見感染は見られず、4例(0.9%)で見られた帯状疱疹は全例軽度~中等度で汎発性ではなかった。

 以上のように報告した木下氏は「ALLEGRO-LT試験の新規参加者を対象とした中間解析の結果はALLEGROⅡb/Ⅲ試験の結果と一貫性があり、12歳以上のAA患者に対するリトレシチニブの有効性と安全性は、24カ月経過時においても維持されていた」と結論した。