デルマニアのブログ

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デュピルマブが類天疱瘡に良好な結果示す

 中国・Peking University First HospitalのLiuqi Zhao氏らは、水疱性類天疱瘡(BP)患者に対するヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)-4/13受容体モノクローナル抗体デュピルマブの有効性と安全性を検討する後ろ向き研究を実施。デュピルマブ治療により臨床症状が改善し、安全性プロファイルは良好だったとJAMA Dermatol2023年8月2日オンライン版)に報告した。

症状改善と寛解率、安全性、効果予測因子などを検討

 BPは、皮膚や粘膜に水疱や紅斑が生じ、強い瘙痒を来す自己免疫疾患である。治療にはステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤が使用されるが、高齢患者が多く、安全性や有効性に個人差があることが課題となっている。

 BP患者ではIL-4およびIL-5の亢進が報告されており、抗IL-4受容体αサブユニット抗体製剤デュピルマブは、理論的にはBPへの効果を発揮すると考えられる。しかし、これまでに大規模研究は行われていない。

 そこでZhao氏らは、2021年1月~22年7月に中国の6施設でデュピルマブを投与されたBP患者のデータを後ろ向きに検討した。対象は、臨床症状と免疫学的または病理学的所見によりBPと診断され、デュピルマブ初回600mg投与後、300mgを隔週で投与された成人患者146例(年齢中央値73歳、男性58.9%)。薬剤誘発性BP、追跡期間4週未満、登録前6カ月以内にデュピルマブを含む生物学的製剤使用歴のある例は除外した。追跡期間の中央値は24.6週〔四分位範囲(IQR)11.5~38.4週)だった。

 主要評価項目は4週以内に病勢コントロールを達成した患者の割合とし、新規病変および瘙痒がないことと既存病変の治癒の複合と定義した。64週までの完全寛解率、再発率、類天疱瘡重症度判定指標(BPDAI)スコアの変化、瘙痒の評価尺度(NRS)スコア、臨床検査値、有害事象(AE)も評価した。

87%が4週以内に病勢コントロール達成

 146例中127例(87.0%)が4週以内に病勢コントロールを達成。達成までの期間の中央値は14日(IQR 7~14日)だった。

 追跡期間中に52例(35.6%)が完全寛解し、13例(8.9%)が再発した。64週時の完全寛解率は62.5%、累積再発率は30.9%だった。

 デュピルマブ投与2週後に、BPDAIスコア(85点→18点)、瘙痒NRSスコア(7点→0点)、好酸球数が有意に低下(全てP<0.001)。投与16週後には、血清抗BP180抗体価(200単位/mL→67.5単位/mL)、血清抗BP230抗体価(38.4単位/mL→10.8単位/mL)、総IgE値が有意に改善した(全てP<0.001)。

注意すべきは感染症好酸球増加、効果予測因子は抗体価と性

 146例中39例(26.7%)がAEを報告した。ほとんどは軽度で、AEによる治療中止はなかった。最も多かったのは感染症好酸球増加だった。

 血清抗BP180抗体価50単位/mL超は、4週以内の病勢コントロールと関連していた〔オッズ比(OR)3.63、95%CI 0.97~12.61、P=0.045)。また、男性で再発リスクが有意に高かった〔ハザード比(HR)10.97、95%CI 1.42~84.92、P=0.02)。

 これらの結果を基に、Zhao氏らは「後ろ向きコホート研究において、デュピルマブがBP患者にとって効果的かつ安全な選択肢となる可能性が示された」と結論。「安全性プロファイルは良好だったが、感染症好酸球増加には注意が必要かもしれない。また、血清抗BP180抗体価50単位/mL超の患者および女性で、より良好な反応が得られることが示唆された」と付言している。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov