デルマニアのブログ

デルマニアのブログ

とある皮膚科医のブログです。

円形脱毛症に対するJAK、経口薬が効果高い 中国・システマチックレビューとメタ解析

 中国・Lanzhou UniversityのMing Liu氏らは、円形脱毛症(AA)に対するJAK阻害薬の有効性と安全性を検討したランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。「JAK阻害薬はプラセボと比べ毛髪再生効果があることが示唆された。効果は外用薬よりも経口薬の方が高く、安全性と忍容性は許容範囲だった」とJAMA Netw Open (2023; 6: e2320351)に報告した(関連記事「新規円形脱毛症治療薬リトレシチニブを承認」「円形脱毛症、新たな治療の幕開け」)。

11カ国のRCT 7報・1,710例を抽出

 AAは組織特異的な自己免疫疾患であり、非瘢痕性の脱毛および毛包の残存を特徴とする。発症と進行には、JAK-STAT経路が強く関与していることが複数の研究で確認されている。日本でもJAK阻害薬バリシチニブとJAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬リトレシチニブがAAの適応承認を得ているが、さまざまなJAK阻害薬のAAに対する有効性や安全性、投与経路(経口/外用)による違い、JAK阻害薬間での違いなどに関する知見は十分でない。

 Liu氏らはMEDLINE、EMBASE、CENTRALに2022年8月までに収載され、AAに対するJAK阻害薬の有効性をプラセボと比較したRCT 7報〔トレシチニブ(経口薬)/ Brepocitinib(経口薬)1報、ルキソリチニブ(外用薬)1報、デルゴシチニブ(外用薬)2報、バリシチニブ(経口薬)3報〕を同定した。

 これらのRCTは11カ国で実施されたもので論文は2019年~22年に発表された。患者総数は1,710例。平均年齢の範囲は36.3±10.4~69.7±16.2歳、AAエピソードの平均期間は2.3±0.9~4.2±1.3年、女性1,083例(63.3%)、男性627例(36.7%)。AAの重症度スコアであるSeverity of Alopecia Tool(SALT)スコアのベースラインの平均値は59.5±27.3~87.9±17.4だった。

 評価項目は、①SALTスコア30%以下(頭皮脱毛が30%以下、SALT30)、50%以下(SALT50)、90%以下(SALT90)の達成、②ベースラインからのSALTスコアの変化量、③治療関連有害事象(AE)。

 エビデンスの確実性はGrading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations(GRADE)で評価した。

治療関連有害事象に差なし

 解析の結果、JAK阻害薬群におけるSALT50達成のオッズ比(OR)は5.28(95%CI 1.69~16.46、エビデンスの確実性:低い)、SALT90達成のORは8.15(同4.42~15.03、低い)だった。

 SALTスコアの変化量に関しては、プラセボ群と比べ、JAK阻害薬はベースラインからの改善(低下)幅が大きかった〔平均差(MD)-34.52、95%CI -37.80~-31.24、エビデンスの確実性:中等度〕。

 プラセボ群と比べ、JAK阻害薬群は治療関連有害事象との関連を認めなかった〔相対リスク(RR)1.25、95%CI 1.00~1.57、エビデンスの確実性:高い〕。重篤有害事象との関連も見られなかったが(同0.77、0.41~1.43)、95%CIの幅の広さからデータが不正確と推定され、エビデンスの確実性は中等度となった。

 投与経路別のサブ解析を行ったところ、プラセボ群と比べ、経口JAK阻害薬群ではベースラインからのSALTスコアの改善幅が大きかった(MD -36.80、95%CI -39.57~-34.02)が、外用JAK阻害薬群とプラセボ群との間に有意差はなかった(同-0.40、同-11.30~10.50)。

AAに付随する不安やうつへの影響は不明

 以上の結果を踏まえ、Liu氏らは「JAK阻害薬は毛髪再生に有効であること、外用薬よりも経口薬の方が効果が高いことが示唆された。安全性は許容範囲内であった」と結論。

 研究の限界として、①不安や抑うつの評価が欠けておりAA患者のQOLに関する転帰は不明である、②エビデンスの確実性に関して低いとされた評価項目があった、③データ不足のため予定していたサブ解析が実行できず、JAK阻害薬ごとの有効性や安全性を示すことはできなかった、④薬剤費や患者の好みに関する検討は行われなかった―などを挙げ、今後の課題であると結んでいる。