デルマニアのブログ

デルマニアのブログ

とある皮膚科医のブログです。

瘢痕性脱毛症に抗マラリア薬が有効 ヒドロキシクロロキン服用95例の後ろ向き解析

 ポーランド・SPSKMのMartyna A. Zbiciak-Nylec氏らは、瘢痕性脱毛症に分類される毛孔性扁平苔癬(lichen planopilaris;LPP)および前頭部線維化性脱毛症(frontal fibrosing alopecia;FFA)の女性患者95例の後ろ向き解析を行い、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンの有効性を検討。その結果、ヒドロキシクロロキン投与はLPP/FFAの症状軽減と進行抑制に有効で、特に長期(12カ月)投与で有益性が高かったとAdv Dermatol Allergol2021; 38: 302-309)に発表した。

6カ月時7割、12カ月時9割以上で疾患活動性が低下

 FFAは主に閉経後女性に発生する原発性リンパ球性瘢痕性脱毛症で、前頭側頭部の生え際の後退、毛孔周囲性紅斑、痒みや灼熱感を臨床的特徴とし、LPPのサブタイプと考えられている。

 今回の解析対象は女性FFA/LPP患者95例。内訳はFFA患者が35例、LPP患者が60例で、平均年齢は57.68歳、診断から治療開始までの平均罹病期間は4.83年だった。全例が、ヒドロキシクロロキン200mg/日を平日の5日間服用し、土曜日と日曜日に休薬するスケジュールで1年間治療を受けていた。

 ヒドロキシクロロキンの治療効果はLPP活動指数(LPPAI)を用いて評価した。症状(痒み、痛み、灼熱感)、トリコスコピー(拡大鏡による頭皮観察)で評価した徴候(紅斑、毛孔周囲性紅斑、毛孔性角化症)、毛髪牽引試験(プルテスト)、疾患の拡大-の8項目を重み付け採点してLPPAI合計スコアを算出した〔スコア範囲:0(疾患活動性なし)~10(最も高い活動性)〕。

 ヒドロキシクロロキン投与開始後6カ月時点で95例中80例のLPPAIスコアを解析した結果、58例で疾患活動性の低下(ベースラインからのLPPAIスコア低下幅25~85%)が認められ、19例では改善が認められず(同25%未満)、3例では悪化していた(LPPAIスコア上昇)。12カ月時点の評価では、73例中70例で疾患活動性の低下が認められた。

 トリコスコピー所見は、投与開始後6カ月および12カ月時点で有意に改善していた(P<0.05)。

治療期間と有効性が相関、網膜症の発現なし

 患者の年齢範囲とヒドロキシクロロキン投与の有効性との相関は認められなかった。一方、治療期間の長さと有効性との間には有意な相関が認められ(P<0.05)、長期治療がより有益な選択肢になると考えられた。

 ヒドロキシクロロキンは網膜症の発現リスクを高める可能性があるが、治療期間中に網膜症を含む重篤な有害事象の発現は認められなかった。

 以上の結果から、Zbiciak-Nylec氏らは「ヒドロキシクロロキン投与は日常臨床診療におけるFFA/LPPの治療選択肢の1つとみなすことができる」と結論。今後の課題として、「今回の後ろ向き解析で得られた予備的結果を前向きランダム化比較試験で確認すべき」と付言している。