デルマニアのブログ

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GLP-1作動薬で甲状腺がんリスク上昇 RCT 64件のメタ解析

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は2型糖尿病の治療薬として広く使用され、最近では肥満症を適応とする新薬も登場するなど注目を集めているが、以前から甲状腺がんリスクの存在が指摘されている。イタリア・University of FlorenceのGiovanni A. Silverii氏らは、GLP-1受容体作動薬投与と甲状腺がんリスクの関連を検討するため、ランダム化比較試験(RCT) 64件のシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、GLP-1受容体作動薬が中等度のリスク上昇と関連していたとDiabetes Obes Metab2023年11月29日オンライン版)に報告した。

52週以上追跡した全RCTが対象

 GLP-1受容体作動薬に関しては、これまで複数の後ろ向き観察研究において甲状腺がんのリスク上昇が報告されている。今回、Silverii氏らはGLP-1受容体作動薬の使用と甲状腺がんとの関連性を明らかにするため、システマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 解析対象は、GLP-1受容体作動薬の有効性と安全性を18歳以上の患者においてプラセボまたは対照薬との比較により52週以上の追跡で検討した全RCTとした。MEDLINE、EMBASE、Clinicaltrials.gov、Cochrane CENTRAL Databaseで全てのGLP-1受容体作動薬の薬剤名をキーワードとして2023年8月20日までに収載されたRCTを検索した。

 主要評価項目は研究期間中の甲状腺がんの発生率、副次評価項目は甲状腺乳頭がん、甲状腺髄様がん、甲状腺濾胞がん、分化型甲状腺がん全体の発生率とした。

オッズ比1.5のリスク上昇

 対象となったRCTは64件で、GLP-1受容体作動薬投与群は4万6,228例、プラセボまたは対照薬群は3万8,399例だった。64件のうち、2型糖尿病に関するRCTは48件、肥満症は16件だった。使用されたGLP-1受容体作動薬は、リラグルチドが26件、セマグルチドが17件、エキセナチドが16件、デュラグルチドが9件で、対照薬はプラセボが36件、インスリンが12件、DPP-4阻害薬が6件、スルホニル尿素(SU)薬が4件、SGLT2阻害薬が3件、無治療が2件、治験責任医師が選択した治療薬が1件だった。

 追跡期間中央値は53週、年齢中央値は56歳、BMI中央値は32、女性の割合の中央値は50.3%だった。

 64件の研究のうち、26件(6万9,909例)で少なくとも1例の甲状腺がんの発生が報告された。特定された甲状腺がん86例(GLP-1受容体作動薬群60例、対照群26例)のうち、25例(同19例、6例)が甲状腺乳頭がん、3例(同2例、1例)が甲状腺髄様がん、残りは甲状腺悪性新生物またはがんとして報告された。

 固定効果解析の結果、GLP-1受容体作動薬の投与は甲状腺がんのリスク上昇と有意に関連しており〔Mantel-Haenszelオッズ比(MH-OR)1.52、95%CI 1.01〜2.29、P=0.04、I2=0%〕、脆弱性指数は1で、5年における害必要数は1,349だった。この関連は、104週以上追跡した研究のみを解析し場合も同様だった(同1.76、1.00〜3.12、P=0.05)。

 甲状腺乳頭がん(MH-OR 1.54、95%CI 0.77〜3.06、P=0.22)、甲状腺髄様がん(同1.44、0.23〜9.16、P=0.55)はいずれもGLP-1受容体作動薬との有意な関連は認められなかった。

 以上を踏まえ、Silverii氏は「臨床研究においてGLP-1受容体作動薬は甲状腺がんの相対リスクの中等度の上昇と関連していることが示され、これは最近の観察研究結果と同様であった。この知見の臨床的意味を評価するには、より長期の研究が必要である」と結論している。