デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

減量目的のGLP-1作動薬で膵炎リスク9倍

 糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬を減量目的で使用する例が近年増加している。糖尿病に対するGLP-1受容体作動薬の使用が胆道疾患、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺など消化器系有害事象のリスクを高めることが報告されているが、減量目的での使用については安全性が確認されていない。カナダ・University of British ColumbiaのMohit Sodhi氏らは、減量目的でのGLP-1受容体作動薬使用による消化器系有害事象リスクを評価。膵炎リスクが9倍に上昇するなどの結果を、JAMA10月5日オンライン版)で報告した。

肥満症治療薬とGLP-1受容体作動薬のリスクを比較

 国際疾病分類(ICD)に基づく包括的レセプトデータベース(IQVIA)に登録された1,600万例から、GLP-1受容体作動薬セマグルチド(613例)またはリラグルチド(4,144例)および肥満症治療薬naltrexone/bupropion(654例)の新規使用例を抽出。Cox比例ハザードモデルを用いて消化器系有害事象リスクを評価した。

 セマグルチドの肥満症への適応拡大は研究期間終了(2020年6月)後の2021年であったため今回はリラグルチドと区別せず、試験90日前または30日後までにICDの肥満コードを有し、かつ糖尿病または糖尿病治療薬コードを持たない例を解析対象とした。

 最初の処方から胆道疾患(胆囊炎、胆囊結石症、胆石症)、膵炎( 胆道原性膵炎を含む)、腸閉塞、胃不全麻痺(または運動促進薬の使用)の発症までを観察し、ハザード比(HR)を算出。年齢、性、飲酒、喫煙習慣、高脂血症、過去30日の腹部手術既往、地理的条件で調整した。BMIは不明であったために期待値を用いた。

 さらに2つの感度分析を実施。1つはセマグルチド使用例で高頻度の高脂血症を除外し、1つは肥満を考慮せず糖尿病のみを除外して分析した。

膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスク上昇

 分析の結果、naltrexone/bupropion群とGLP-1群について、胆道疾患では有意差が見られなかったものの、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺では有意なリスクの上昇が示された(膵炎:HR 9.09、95%CI 1.25~66.00)、腸閉塞:同4.22、1.02~17.40、胃不全麻痺:同3.67、1.15~11.90)。感度分析を行っても結果は同様であり、BMIの期待値で調整しても交絡の可能性は示されなかった。

  Sodhi氏らは今回の結果について「naltrexone/bupropionに比べてGLP-1受容体作動薬は、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクを上昇させることが示唆された」と結論。「減量目的でGLP-1受容体作動薬の使用を考えている患者は、糖尿病の治療と減量ではリスク・ベネフィットのバランスが異なることを考慮すべきだ」と付言した。