デルマニアのブログ

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中高年のアトピー性皮膚炎は認知症のリスク

アトピー性皮膚炎は認知機能障害と関連することが示唆されているが、研究によって結果に一貫性が見られない。中国・The First People's Hospital of FuzhouのQi Zhou氏らは、中高年成人におけるアトピー性皮膚炎と認知機能障害の関連を評価する目的でシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。アトピー性皮膚炎は、アルツハイマー認知症および全ての認知症のリスク上昇に関連することが示唆されたとPLoS One2023年10月25日オンライン版)に報告した。

5件・859万5,252人を対象に検討

 Zhou氏らは、PubMed、EMBASE、Web of Scienccに2023年3月までに収載された文献からアトピー性皮膚炎と認知機能障害についてのヒトを対象とした研究に関する英語論文を検索。包含基準は、①試験デザインがコホート研究または症例対照研究、②中高年のアトピー性皮膚炎と認知機能障害の関連を調査した研究、③アトピー性皮膚炎を有する中高年の認知機能障害リスクの定量的データを報告した研究、④非アトピー性皮膚炎中高年の対照群を置いた研究、ハザード比と95%CIを提供した研究ーとした。認知機能障害の定義は米国精神医学会の『精神疾患の分類と診断の手引第5版』(DSM-5)基準を満たす認知障害疾患カテゴリ(全ての認知症アルツハイマー認知症、血管性認知症、軽度認知障害)とした。中高年の定義は45〜59歳、高齢者は60歳以上とした。そして、非ランダム化研究の質を評価する際、中等度以上と見なされるNew castle Ottawa Scale(NOS)スコア4点以上(9点満点)の研究をメタ解析に組み入れた。

 最終的に、5件・859万5,252人が解析対象となった。平均年齢は45〜75歳、追跡期間は8.1〜12年だった。

全ての認知症で16%、アルツハイマー認知症で28%のリスク上昇

 プール解析の結果、アトピー性皮膚炎における全ての認知症のハザード比(HR)は1.16(95%CI 1.10〜1.23、P<0.001)と有意な関連が示されたが、研究間での異質性が認められた(I2=54.5%、P=0.052)。同様に、アルツハイマー認知症でもHR 1.28(同1.01〜1.63、P<0.001)と有意な関連が示されたが研究間での異質性が大きかった(I2=95.8%、P<0.001)。一方、血管性認知症との間には有意な関連が認められず(同1.42、0.99〜2.04、P<0.001)、異質性が大きかった(I2=96.0、P<0.001)。なお、NOSスコア6点の1件を除外しプール解析の安定性を検証した感度分析の結果でも有意性は変わらなかった。

 さらにZhou氏らは、異質性の原因を探るため地域および研究デザインによるサブグループ解析を行った。

 地域別に見ると、アトピー性皮膚炎と全ての認知症の関連は欧州では有意だったが(HR 1.14、95%CI 1.04〜1.24、P=0.004、I2=46.5%)、アジアでは有意ではなかった。アルツハイマー認知症との関連は欧州、アジアとも有意ではなかった。血管性認知症との関連は欧州(同1.57、1.06〜2.32、P=0.0024、I2=89.2%)、アジア(同1.18、1.04〜1.34、P=0.010)とも有意だった。

 研究デザイン別に見ると、アトピー性皮膚炎と全ての認知症およびアルツハイマー認知症の関連は、前向きコホート研究ではいずれも有意だったが(全ての認知症:HR 1.18、95%CI 1.12〜1.24、P<0.001、I2=55.5%、アルツハイマー認知症:同1.41、1.04〜1.90、P=0.025、I2=97.3%)、非前向きコホート研究では有意ではなかった。血管性認知症との関連はいずれの研究デザインでも有意ではなかった。

 同氏らは「中高年のアトピー性皮膚炎が認知機能障害、特にアルツハイマー認知症および全ての認知症のリスク上昇と関連することが明らかになった」と結論するとともに、研究の限界として、対象となった研究の数が少なかったことや、組み入れられたのは英国、台湾、韓国、スウェーデンでの研究で他地域における有病率や影響を反映していない可能性があることなどを挙げた。そして、「今後の研究ではより多様かつ代表的なサンプルを含める必要がある。今回は対象となった研究のほとんどが観察研究であったため、因果関係の評価ができなかった。今後、より大きなサンプルサイズ、厳密な試験デザイン、より包括的な交絡因子の調整を行った研究が必要である」と付言している。