アトピー性皮膚炎は円形脱毛症の合併率が高く、両疾患とも小児患者の心身に大きな負担をもたらす。カナダ・McMaster UniversityのDea Metko氏は、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症を合併する小児患者へのヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体デュピルマブの有効性について、既存研究を横断的に検討するスコーピングレビューを実施。デュピルマブは小児の円形脱毛症治療において有望な選択肢になりうるとの結果をPediatr Dermatol(2024年7月4日オンライン版)に報告した。
研究7件・31例が対象
アトピー性皮膚炎と円形脱毛症は、いずれも2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)を介した免疫反応と関連しており、IL-4、IL-5、IL-13、IL-31の産生亢進など、サイトカインプロファイルも類似している。一方、デュピルマブはIL-4とIL-13のシグナル伝達を阻害する作用を持ち、小児アトピー性皮膚炎治療薬として承認されている。
Metko氏らは、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症を合併する小児患者におけるデュピルマブの有効性と安全性について、現時点でのエビデンスをまとめるためスコーピングレビューを実施した。PRISMA Extension for Scoping Reviews(PRISMA-ScR)に従い、今年(2024年)3月1日までにMEDLINEおよびEMBASEに収載された査読付きの英語論文を「アトピー性皮膚炎」「円形脱毛症」「デュピルマブ」「小児患者」のキーワードで検索。症例報告4件、症例集積研究2件、後ろ向きカルテレビュー1件の計7件・31例〔平均年齢11.4歳(範囲4~17歳)、女児64.5%〕を抽出し、レビューに組み入れた。
デュピルマブ投与前の平均罹病期間は、アトピー性皮膚炎が3.51年(範囲0~11年)、円形脱毛症が5.33年(同0.67~14年)だった。円形脱毛症の病型は汎発型が11例で最も多かった。両疾患に対するベースライン時の治療としては、局所および全身性ステロイド、免疫抑制薬などが使用されていた。
3カ月の投与でSALTスコアとIGAスコアが有意に低下
全体的にデュピルマブは円形脱毛症に対し良好な反応を示しており、31例中24例(77.4%)が発毛を達成した。平均3.21カ月の投与により、脱毛の重症度を評価するSALTスコア(範囲0~100、高スコアほど脱毛面積が大きい)の平均値はベースラインの73.9(範囲15~100)から31.3(同0~100)へと有意に低下した(P<0.01)。医師によるアトピー性皮膚炎の包括的評価であるIGAスコア(範囲0~4、高スコアほど重症)の平均値も、3.00から0.857へと有意に低下した(P<0.01)。IgEや好酸球に変化はなく、治療への反応に関連する有意な特徴は認められなかった。
安全性については、デュピルマブ単剤療法および他の円形脱毛症治療薬との併用療法ともに良好なプロファイルを示した。ただし、投与開始後に新たな円形脱毛症の発症または増悪が4例報告されていた。4例の主な背景は、女児が3例、治療歴は局所ステロイドが3例(残る1例はデュピルマブと局所ステロイドを併用)、メトトレキサートが2例など。2例はデュピルマブを中止し、2例は継続により円形脱毛症の改善が認められた。
Metko氏らは「円形脱毛症の原因として、Th2細胞を介した免疫反応以外の経路の関与が示唆される」と考察している。
同氏らは、研究の限界として①デュピルマブの副作用として円形脱毛症が報告されている、②潜在的な出版バイアスの存在、③研究間のデータに一貫性がない、④症例数が少なく追跡期間が短い―を挙げた上で、「デュピルマブは、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症を合併する小児患者において有望な選択肢となりうる」と結論。「有効性を発揮する機序、患者選択基準、長期の有効性と安全性については、さらなる検討が必要だ」と付言している。なお、中等症~重症の円形脱毛症小児患者(6~17歳)を対象に、デュピルマブの有効性と安全性を検討する前向き二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験が現在進行中である(NCT05866562)。