東邦大学が運営する東邦大学医療センター大橋病院は、培養自家毛球部毛根鞘細胞加工物「S-DSC」を用いた毛髪再生医療による薄毛治療の提供を1日から始めた。脱毛していない後頭部の頭皮から毛球部毛根鞘(DSC)細胞を採取し、体外で細胞を増やしてから脱毛部に投与することで毛髪の成長を促す。同治療には臨床研究を進めてきた東京医科大学、杏林大学、資生堂との共同開発による技術を活用。自由診療のため費用全額が患者負担となるが、薄毛治療の新たな選択肢として普及を目指す。
薄毛に悩む人の生活の質(QOL)向上を目指し、東邦大学などが2016年から医師主導の臨床研究を行ってきた。S-DSCの頭皮薄毛部への注入施術の安全性と有効性を確認し、同治療法の実用化に世界で初めてこぎ着けた。
治療では、まず大橋病院で患者の脱毛していない後頭部の頭皮からDSC細胞を採取する。その後、資生堂による管理・監督下で適切に輸送、培養、凍結保管される。投与日に大橋病院で解凍し専用の注入器を用いて脱毛部に投与する。
DSC細胞を移植し、毛髪の成長に重要な役割を果たす毛乳頭(DP)細胞の活動を活発化させることで、髪が太く長く成長しヘアサイクルや頭皮環境が整うことが期待できる。治療回数などにもよるが、費用の目安は、約156万~363万円としている。
従来の薄毛治療は薬剤によるものが一般的で、継続的な服用や女性の場合は薬剤の選択肢に制限があるなどの課題があった。一方、新たな治療法は性別の制限がなく、服薬が不要のため治療による負担も軽減される。自分の細胞を用いることから拒絶反応などのリスクも極めて低いという。