デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

HPV自己検査キット郵送:子宮頸がん検診受診率への影響は?

 米国で女性3万1355例(平均年齢45.9歳)を対象に、郵送でのヒトパピローマウイル(HPV)自己採取キット提供による子宮頸がん検診受診率の改善効果を無作為化試験で検討。郵送方法はキットを直送するダイレクトメール方式または要請に基づき送付するオプトイン方式とし、通常ケア(患者への検診予定通知+臨床医への電子医療記録上の通知)+教育(検診に関する教育資料の提供)も行った。主要評価項目は6カ月以内の検診完了とした。

 intention-to-treat解析の結果、検診遵守者の6カ月以内の検診完了率は、教育のみ群(47.6%)に比べダイレクトメール群(61.7%)とオプトイン群(51.1%)で高かった。検診受診遅延者の検診完了率は、教育のみ群(18.8%)に比べダイレクトメール群(35.7%)で高く、検診受診歴不明者では教育のみ群(15.9%)に比べオプトイン群(18.1%)で高かった。

 

 

 本論文は、ヒトパピローマウイルス(HPV)自己検査キットを用いた子宮頸がんスクリーニングの有効性を調査したランダム化比較試験であり、HPVスクリーニングへの適切なタイミングでのアクセスを向上させる戦略の重要性を示している。

 実際の医療システムにおける、より効果的な仕組みの実装に関する知見を提供しているものとして有益だと考えた。

 子宮頸がんの予防と早期発見には定期検診が重要であることは明らかであるが、推奨通りのタイミングで受診する女性ばかりではない。米国では、子宮頸がんと診断された女性の半数以上がガイドライン推奨の検診期限を過ぎているとされる。また、新型コロナウイルス感染症COVID-19パンデミックの影響によって定期検診受診率が低下したという報告もある。

 そのような中で、適切なタイミングでの子宮頸がん検診受診率をどのようにして上げるのかは、公衆衛生上の大きな課題である。単に検診の案内や啓発資料を郵送しても効果の低い層がいることは事実であり、本論文では、そのような観点で以下の結果を示しており、社会実装のために有益な情報だと考えられるだろう。

 なお、HPV自己検査は、医師による採取と同等の感度と特異度を有していることが先行研究で明らかとなっている。

  • 推奨期限を過ぎた女性においても、推奨期限内の女性においても、HPV自己検査キットを同封することで検診受診率が向上した
  • 特に、推奨期限を過ぎた女性に対しては、選択的申込制ではなく直接的な郵送がより効果的だった

 日本と米国では子宮頸がん検診の推奨や仕組みに違いがあり、特に日本ではHPV自己検査が広く推奨されていない。このため、本研究結果をそのまま日本に応用することには注意が必要だが、日本でも子宮頸がん検診の受診率の低さは長年問題視されており、本研究で得られたような知見を活かした施策を積極的に検討することは重要だろう。

 既得権益が新規施策の検討や導入を妨げることがないよう願いたい。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov