デルマニアのブログ

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9価HPVワクチン、「2023年度早期から」定期接種化へ厚労省審議会が了承、3回接種が前提、打ち控えの懸念も

 第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(部会長:脇田 隆字・国立感染症研究所長)は10月4日、9価のHPVワクチンを2023年度の早期から定期接種化することを了承した。最終的に予防接種・ワクチン分科会に諮り、決定する。現在定期接種化されているのは2価と4価のワクチンであり、より効果が高い9価HPVワクチンの定期接種がいよいよ日本でも始まる(資料は、厚生労働省のホームページ)。

 接種対象は2価と4価のワクチンと同様に、小学校6年生から高校1年生相当の女子。9価ワクチンは海外では主に2回接種として使われているが、日本では3回接種で薬事承認されており、定期接種でも3回接種とする。既に一部の9価ワクチンの接種を任意接種として行った場合は、残りの接種を定期接種として扱う。

 2価、もしくは4価のワクチンの1、2回接種済みの場合、残りの接種で9価ワクチンを使う交互接種や、積極的接種勧奨の差し控えから接種機会を逃した世代へのキャッチアップ接種に9価ワクチンを使用するかどうかなどは、厚労省エビデンスを揃え、次回会議で議論する。

 厚労省事務局はキャッチアップでの使用も想定して、2価、4価ワクチンについて、「9価ワクチンが定期接種化されれば、ゆくゆくは切り替えていくことになるだろうが、選択肢として当面残しておく」と説明した。

(2022年10月4日厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料)

 定期接種化、委員から異論は出ず

 9価ワクチンは2020年7月に製造販売承認されていた。9価ワクチンの定期接種化に対して、委員からは異論がなく了承。開始時期を2023年度の早期とするのは、接種対象者の利便性、ワクチンの安定供給、自治体等における接種体制の準備にかかる時間を踏まえた対応だ。

 川崎医科大学小児科教授の中野貴司氏からは、「9価ワクチンの供給量が十分であればいいが、希望者がいたとしても、すぐに行き渡る状況ではないので、そこは混乱が起きないようにしておく必要がある」と釘を刺す意見が出た。

 厚労省事務局は、標準的には中学校1年生に予診票が送付されていることから、学年が区切られており、需要はある程度見通せるとした上で、「本日の話を受けて、厚労省がメーカーと改めて話をしていくことになる」と答えた。

 「待つことはよくない」とのメッセージ必要

 委員から出た懸念の一つが、打ち控えの問題だ。9価ワクチンのファクトシートには、4価ワクチンを対照とした無作為化二重盲検試験で、「共通HPV 型に対する血清抗体価は、4価ワクチン接種群に比べて同等かそれ以上」であるほか、高度子宮頸部疾患などハイリスクの疾患への有効性なども示されている。

 浜松医科大学小児科学講座教授の宮入烈氏は、積極的接種勧奨が再開された際、9価ワクチンがいつ定期接種化されるかが見通せないために、「とりあえず(2価、もしくは4価ワクチンを)打ってください」とされていたと指摘した上で、「来年度から使えるようになった時に、早く打った人が損をしたという感覚を持つのではないか」と懸念を呈した。

 日本医師会常任理事の釜萢敏氏は、「9価ワクチンの定期接種を開始する時期は、供給の様子を見ながら決める必要がある。一方で開始時期が決まり、接種を控える人が出てくることについては、ある程度、やむを得ないのではないか」と述べた。

 川崎市健康福祉局医務監の坂元昇氏は、「『待つことはよくない』というメッセージを出すべきではないか。接種年齢が上がっていけば、予防効果が薄れる一方、感染する機会が増えてくる。適正な年齢内に打つことが必要だ、と適切に伝えていくことが大切」と指摘した。

 海外では3回ではなく2回接種が主流

 海外では9価ワクチンの2回接種が広く実施されており、3回接種と比較したその有効性については、主に海外の研究で明らかになっている。4日の基本方針部会でも、2回接種を求める声が上がった。

 厚労省事務局は、「薬事承認が定期接種化の前提になる。それを待って9価ワクチンを定期接種化するのか、あるいは3回接種で来年度の早期から始めるのか」と問いかけるとともに、2回接種が薬事承認された場合も想定した議論は行う方針であると説明。

 坂元氏からは、「メーカーが2回接種の薬事承認の申請をPMDAに上げていない。審議会としてメーカーに2回接種についての申請を行うよう、要請してもいいのではないか」との意見も出た。

(2022年10月4日厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料)