デルマニアのブログ

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脱毛症に立ち向かうためのベストな選択肢は 男性型脱毛症(AGA)の治療薬の有効性を比較

 男性のほとんどは、人生のどこかの時点で額の生え際が後退、あるいは部分的にはげるなどの毛髪の変化を経験する。こうした脱毛の進行を抑える方法を探している男性に役立ちそうな研究結果が明らかになった。トロント大学(カナダ)のAditya K. Gupta氏らが、臨床試験のデータを基に複数ある男性型脱毛症AGA)の治療薬の効果を比較し、有効性が最も高い治療薬から最も低い治療薬までの順位を明らかにした。詳細は、「JAMA Dermatology」に2月2日発表された。

 専門家らは、こうした順位付けは有用だとの見解を示している。AGA治療薬のデュタステリドフィナステリドミノキシジルは長年にわたって使用されてきたが、これらの薬剤の有効性の比較に関する情報はほとんどなかったからだ。そのため、医師たちは「効果が最も高い治療薬はどれか」という誰もが抱く疑問に対して確固たる答えを持っていなかった。この研究には関与していない、米メモリアルスローンケタリングがんセンターの皮膚科医、Anthony Rossi氏は、「この研究によって、不足していた情報が補われることになるだろう」と話す。

 本研究では、システマティックレビューにより抽出された23件の研究結果を基に、解析が行われた。その結果、最も有効性が高いのはデュタステリド内服薬0.5mg/日を使用した場合で、治療開始から24週間で増加した毛髪数の平均値が最も多かった。次いで有効性が高いのはフィナステリド内服薬5mg/日、その次に有効性が高いのはミノキシジル5%配合剤(外用薬)だった。

 また、予想通りの結果ではあるが、薬剤の用法と用量も有効性に影響していた。例えば、デュタステリド内服薬0.1mg/日を使用した場合の順位は4位、フィナステリド内服薬を低用量(1mg/日)使用した場合の順位は5位だった。フィナステリド内服薬1mg/日よりも下位にランクインした2種類のミノキシジルの外用薬(2%配合剤、1%配合剤)も、配合割合の高い方が上位だった。最も有効性が低いのはミノキシジル内服薬0.25mg/日であった。

 ただし、「有効性のみで治療薬を評価すべきではない」とRossi氏は強調。「デュタステリドは他の薬剤よりも有効性が高いかもしれないが、副作用もより多い可能性はある」と指摘している。デュタステリドには、性欲減退や勃起不全、乳房の圧痛起立性低血圧などの副作用が生じる可能性がある。また、まれではあるが、皮膚の剥離や顔のむくみ、呼吸困難などの医学的処置を必要とする重篤な反応が起こることもある。

 一方、フィナステリドにも性欲減退や乳房の圧痛などの副作用がある。しかし、「実際にこれらの副作用が生じる患者は限られている」と、今回の研究には関与していない、米ウェイクフォレスト・バプティスト医療センター皮膚科学教授のAmy McMichael氏は言う。同氏はまた、健康な人での脱毛の治療では、健康を維持しながら髪を増やすことが目標となることを強調し、「一般的にミノキシジルの外用薬、フィナステリドおよびミノキシジルの内服薬は、ほとんどの患者で忍容性が高く、副作用が生じることもない」と話している。

 ただし、McMichael氏によると、どの内服薬でも下痢や皮疹などの問題は起こり得る。また、ミノキシジル外用薬にも、毎日塗布するという手間がかかるほか、頭皮に炎症が生じ、鱗屑の原因となることもあるという。「結局のところ、それぞれの治療薬のメリットとデメリットについて皮膚科医と相談する必要がある」というのがRossi氏とMcMichael氏の共通見解だ。

 なお、実際には、脱毛症患者の多くは、最終的に複数の治療の併用が必要となる。具体的には、「フィナステリド内服薬とミノキシジル外用薬5%の併用を主軸とした治療が行われることが最も多い」とMcMichael氏は説明する。さらに、最も高い効果は、これらの併用治療に、低出力レーザー治療や多血小板血漿(PRP)療法を組み合わせることで得られることが多いという。Rossi氏も、「多くの場合、1種類の治療のみでは成功しない。その現実を知ることが重要だ」と話している。

 

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