デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

大正製薬、休止期脱毛症の治験開始 壮年性脱毛症の治療薬であるミノキシジルを含む製剤の有効性を探索

 大正製薬は、頭髪の脱毛症の一種である休止期脱毛症を対象とした臨床試験(治験)を開始した。壮年性脱毛症の治療薬であるミノキシジルを含む製剤の有効性を探索する。休止期脱毛症は急性的な身体的負担の増加によって発症するとされ、新型コロナウイルス感染症後遺症としても指摘されている。患者のQOL(生活の質)にも大きく関わるが、治療法は確立されていない。今回の治験で有効性を確認できれば大規模試験を実施し、既存のOTC医薬品の効能効果として追加承認の取得を目指す。

 毛髪は、毛が伸びる成長期(2~6年)、退行期(2~3週間)、毛の成長が止まる休止期(3~4カ月)のサイクルに分類され、休止期から成長期の間に生え変わると考えられている。通常、全毛髪に占める比率は成長期毛が9割以上、休止期毛は5~10%。休止期脱毛症は成長期の毛髪が短期間に休止期に移行する脱毛症で、熱性疾患罹患後、手術や出産後、極度の心身ストレスなどの事象発現から数カ月後に異常な抜け毛が発生し、休止期毛の割合が25%以上に増加するとされる。

 今回の治験で有効性を検証するミノキシジルは、毛包を活性化し、細胞増殖やたんぱく質の合成を促進することで発毛作用を示す壮年性脱毛症の治療薬。同社の医学アドバイザーで毛髪疾患治療の権威である大山学杏林大学教授の助言の下、日本人成人男性患者35人にミノキシジル5%と、頭皮環境を整える6種の有効成分を配合した外用製剤を1日2回、6カ月にわたり塗布する。約2平方センチメートルの毛髪を0・8~1ミリメートルの長さに刈り、画像解析で休止期毛を特定し、変化を調べる。休止期脱毛症は要因となっている身体的負担が除去されると3~6カ月で自然回復が期待できるが、1年以上続く場合もあるなど個人差が大きい。同社ではこの期間の短縮がミノキシジルの有効性の一つの指標になるとみている。

 治験後に有効性を確認できれば、PMDA(医薬品医療機器総合機構)と連携して大規模臨床試験を2023年度以降に実施し、既存ダイレクトOTCの効能効果の追加承認取得を目指す。休止期脱毛症は、コロナ罹患後の後遺症としての脱毛症の大部分を占めるとの指摘も増えている。感染症との戦いはコロナ収束後も続くと見込まれるなか、治療法として確立できれば、患者のQOL維持に貢献できる。

 同社は99年に日本で初めてミノキシジル製剤をダイレクトOTCの発毛剤として承認取得した先駆的企業。毛髪数や毛髪の太さの改善などの臨床試験をはじめ、豊富なエビデンスを蓄積している。国内初となる休止期脱毛症については、「治験を通じ、まだよく知られていない病態を啓発するとともに、専門医がミノキシジル製剤をより安心して推奨できるようにしていきたい」としている。