デルマニアのブログ

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インセンティブで減量達成率が上昇 米・低所得地域の肥満者を対象としたRCT

 減量に向けた運動などの行動目標の達成状況に応じて金銭的報酬を支払う目標指向型(goal-directed design)、または達成できた体重減少率に応じて金銭的報酬を支払うアウトカムベース型(outcome-based design)のインセンティブが、肥満者の減量に有効である可能性がランダム化比較試験(RCT)Financial Incentives for Weight Reduction(FIReWoRk)で示された。低所得地域の肥満者を対象とした同試験では、減量プログラムの利用権や教育、資料などを提供した群と比べて、それらに加えて目標指向型またはアウトカムベース型の金銭的インセンティブを用いた群では6カ月後に体重が5%以上減少した者の割合が多かった。米・University of FloridaのJoseph A. Ladapo氏らがJAMA Intern Med2022年12月5日オンライン版)に報告した。

NYとLAの低所得地域住民668例が対象

 米国では1999~2018年に肥満率が30.5%から42.4%に上昇。特に人種的または民族的なマイノリティーでの肥満率が高いことが明らかになっている。また、肥満者は就職や教育の場などで社会的なスティグマの対象となりやすく、低所得層での肥満率の上昇により健康や社会経済的な格差が拡大する傾向にある。

 エビデンスのある減量法は体重管理プログラムへの参加など幾つかあるが、いずれの減量法も十分に活用されていないのが現状だ。こうした状況は、金銭的なインセンティブを用いることで改善できる可能性があるが、目標指向型とアウトカムベース型のどちらを用いるのがよいかについては不明だった。そこでLadapo氏らは、FIReWoRkで6カ月間の金銭的インセンティブを用いた目標指向型またはアウトカムベース型の介入による減量効果を比較した。

 対象は、2017年11月~21年5月に米・ニューヨーク市およびロサンゼルス市の3つのプライマリケア施設で登録した低所得地域に在住する18~70歳の肥満者668例(平均年齢47.7歳、女性81.0%、ヒスパニック系72.6%、黒人14.8%、平均体重98.98kg、平均BMI 37.95)。全ての参加者に民間の減量プログラム(WW Freestyle)の1年間の利用権、活動量計(Fitbit)および体重計、食事や運動に関する教育、資料など減量のためのリソースを提供した。その上で、対象を①減量プログラムへの参加率や運動、食事日誌などの行動面の目標達成率に応じて金銭的な報酬を支払う群(目標指向型群222例)、②体重の減少率に応じて金銭的な報酬を支払う群(アウトカムベース型群225例)、③金銭的な報酬はなく、リソースのみを提供する群(リソース単独群221例)にランダムに割り付けた。

 6カ月の試験期間中の金銭的な報酬は、目標指向型群とアウトカムベース型群とも最大で750ドルになるよう設定した。主要評価項目は6カ月後時点におけるベースラインからの体重減少(5%以上)とした。

目標指向型、アウトカムベース型両群の約4~5割が達成

 検討の結果、6カ月後時点でベースラインから5%以上の減量を達成した者の割合は、リソース単独群の22.1%に対して目標指向型群で39.0%、アウトカムベース型群で49.1%と多かった。体重減少量の中央値は目標指向型群とアウトカムベース型群で同程度だった。試験期間中に獲得した報酬の平均額は目標指向型群で440.44ドル、アウトカムベース型群で303.56ドルだった。

 また、12カ月後時点でベースラインから5%以上の減量を達成した者の割合も、リソース単独群の31.3%に対して目標指向型群で41.9%、アウトカムベース型群で41.4%と多かった。

 Ladapo氏らは「今回のRCTでは低所得層の肥満者が臨床的に意義のある減量を達成する上で、目標指向型とアウトカムベース型いずれの金銭的インセンティブも、リソースのみを提供する場合と比べて同程度に有効性が高いことが示された」と結論。「今後さらなる研究で費用効果と長期アウトカムを評価する必要がある」と付言している。