デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

アトピーに伴う瘙痒に期待の新経口薬 difelikefalinの第Ⅱ相RCT

 米・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのEmma Guttman-Yassky氏らは、アトピー性皮膚炎(AD)に伴う瘙痒(AD-related pruritus)に対する経口選択的κ-オピオイド受容体作動薬difelikefalin(DFK)の有効性を検討した第Ⅱ相プラセボ対照ランダム化試験(RCT)の結果をJ Allergy Clin Immunol(2023年7月13日オンライン版)に報告。「DFKはADに伴う中等度~重度の瘙痒を改善するとともに、瘙痒に関連したマーカーの発現も抑制した」と述べている。

軽症/中等症ADでも瘙痒の強い患者がいる

 瘙痒はADにおける最も厄介な症状の1つだが、瘙痒症状が優勢のAD(Itch-dominant AD)をターゲットとした治療薬はまだ存在しない。κ-オピオイド受容体作動薬であるDFKは慢性腎臓病(CKD)や透析患者の瘙痒に対し、静注での有効性が報告されているが(関連記事:「透析患者の痒み、新薬候補で有意に改善」)、Guttman-Yassky氏らは今回、AD患者に対し経口薬としてDFKを投与した。

 同氏らは、活動性AD患者401例をDFK 0.25mg群(77例)、同0.5mg群(124例)、同1.0mg群(77例)、プラセボ群(123例)にランダムに割り付け、1日2回12週間投与した。平均年齢は40~42歳、平均AD罹病期間は20~25年、女性は65~70%だった。

 ADの皮疹面積(BSA)が10%未満の軽症~中等症例が257例(64.1%)、10%以上の重症例が144例(35.9%)だった。

 軽症~中等症AD例の皮膚症状〔平均BSAは4.6%±2.5、Eczema Area and Severity Index(EASI) スコアは4.0±2.9〕は重症例よりも軽度であったが、瘙痒Numerical Rating Scale(I-NRS)スコア (0~10、0:全く痒みがない状態、10:最もひどい痒み)とDermatology Life Quality Index (DLQI)は、それぞれ7.7±1.3、11.7±6.6と高値であった。

I-NRSスコアが改善

 試験の結果、主要評価項目である12週時点のI-NRSスコアは、プラセボ群と比べ全てのDFK群で数値的な改善が見られたものの、有意差は示されなかった。DFK 1.0mg群では、12週以前まで(1、2、3、4、5、6、7、10、11週時点)はプラセボ群と比べ、I-NRSスコアの有意な改善が維持されていた。軽症~中等症AD例では、DFK投与によるI-NRSスコアの改善が1週目から明らかであった。

 I-NRSスコアが4ポイント以上改善した患者の割合(副次評価項目の1つ)は、プラセボ群と比べDFK 0.5mg群で有意に多かった(19% vs. 33%、P=0.046)。

 EASIで評価したAD病変の重症度(探索的評価項目)は、全てのDFK群で若干の改善が見られた。

 安全性に関しては治療中に発現した有害事象がDKF 0.25mg群の36例(46.8%)、同0.5mg群の49例(39.5%)、同1.0mg群の42例(54.5%)、プラセボ群の54例(43.9%)に見られたが、ほとんどが軽症~中等症であった。頻度の高かった(5%以上に発現)ものは腹痛/腹部不快感、悪心、口喝、頭痛、めまい、高血圧だった。

瘙痒関連マーカーの遺伝子発現低下を確認

 最後にGuttman-Yassky氏らは、42例(DFK 0.25mg群 9例、同0.5mg群11例、同1.0mg群10例、プラセボ群12例)の皮膚病変と病変隣接部から採取した検体を用いてRNAシークエンス解析を実施。ベースラインと12週後のトランスクリプトーム(transcriptome)を検討した(DFK 3群をまとめてプラセボ群と比較)。

 詳細な解析の結果、プラセボ群と比べDFK群では、瘙痒に関連するマーカー(IL-31、Oncostatin Mなど)や炎症に関連するTh2パスウェイがダウンレギュレート(下方制御)されていること、Claudin(CLDN23、CLDN1、P<0.05)やギャップ結合蛋白(GJB)3(P<0.1)、GJB5(P<0.1)、タイト結合蛋白(TJP)B3(P<0.1)、カドヘリン22(P<0.1)の発現がアップレギュレート(上方制御)されていることが確認された。

 以上の知見を踏まえ、同氏らは「今回の試験で臨床的改善が得られたこと、瘙痒に関連したマーカーのダウンレギュレーションが確認されたことは、DFK治療がADに伴う瘙痒感に影響を及ぼすことを示唆するものである」と結論。「ADに伴う瘙痒治療薬としての経口DFKの検討を継続すべきである」と付言している。