デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

食物アレルギーの経口免疫療法 「超微量」から食べると安全で効果的

食物アレルギーの原因になる食物を毎日少しずつ取ることで、食べられるようにする「経口免疫療法」。アナフィラキシーと呼ばれる重篤な副反応が起こる場合があるため、日本では一般診療として推奨されていないが、国立成育医療研究センターのチームが「安全で効果の高い方法」を開発した。専門誌に論文が発表された。

 食物アレルギーを発症するのは小さな子どもが多い。小学生になるまでに自然に治る人が多いが、なかなか治らなかったり、ごく微量でも激しい症状が出たりする人もおり、安全で有効な治療法が模索されていた。

 また、かつては原因となる食物を一切取らない「完全除去」しか対処法がなかったが、近年はその弊害が指摘されている。そこで、医師の指導の下、食物を繰り返し食べ、アレルギーを起こさない状態(免疫寛容)に持っていく経口免疫療法が注目されている。

 2021年に改定された食物アレルギー診療ガイドラインでは「完全除去の継続と比較すると有用」と明記された。一方でアナフィラキシーが起こるケースが後を絶たず、安全に実施できる方法が模索されていた。

 研究チームは、鶏卵または牛乳の食物アレルギーがあると診断された4~18歳の子ども217人を対象に、アレルギーを起こさずに食べられる最大の量(閾値(いきち))をもとに五つの方法を試し、治療経過を分析した。

 その結果、閾値の1万分の1(A群)、100分の1(B群)、10分の1(C群)から食べ始め、10分の1の量で維持した場合は、7~9割の人が食べられる量の閾値が上がったことが確認できた。副反応は1~3割が経験したが、いずれも口がかゆくなるなどの軽い症状で、アナフィラキシーはなかった。

■5つの方法の中で最も安全で効果的な方法は…

 中でもB群は副反応が14%と最も少なく、食べられる量が増えた割合は88%と最も多かった。治療前は、平均で全卵3グラムほど、牛乳は1ミリリットルほどしか取れなかったが、その2倍以上を取れるようになった。

 一方、閾値に近い量(D群)から食べ始め、量を増やしていく従来の方法だと、食べられる量が増えた人は5割超いたが、7割が副反応を経験し、15%はアナフィラキシーだった。完全除去(E群)では、食べられる量が増えた人は3割弱で、もともとの閾値より減った人も多かった。

 これらの結果から、「閾値の100分の1量で食べ始め、10分の1量で維持する方法が最も安全で効果が高い」と結論を出した。

 同センターの大矢幸弘アレルギーセンター長は「20年ほど研究し、やっと安全に行える方法を確認できた」と話す。

 経口免疫療法を行う際には、アトピー性皮膚炎やぜんそくなど、合併しているアレルギー疾患を十分にケアしながら行うことも大切だ。また、アレルギーの治療に精通した専門医がいる医療機関で、救急対応に十分配慮して行うことがのぞましいという。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/cea.14400