デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

ファイザー日本法人、皮膚科領域開拓に本腰 JAK阻害剤に強み

 ファイザー日本法人(東京都渋谷区)は皮膚科領域の開拓に力を注ぐ。アトピー性皮膚炎に対しては経口剤と外用剤の双方で新薬を準備し、これまで有効な治療法がなかった円形脱毛症の経口剤開発も進める。皮膚科はファイザーの重点領域ではないものの、炎症に関わるシグナル伝達を遮断する「JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤のリーディングカンパニー」(炎症・免疫部門長のサビーネ・ジリアム取締役)としての地位を取り戻すことに主眼を置く。

 アトピー性皮膚炎の治療薬は現状、ステロイド剤が主流だが、近年は病態が解明されるにつれて新薬開発が加速。高額な抗体医薬を含めて治療選択肢が増え、激戦区と化しつつある。

 ファイザーはこの分野に、得意のJAK阻害剤で参入を狙う。昨年末に経口剤「アブロシチニブ」を承認申請したのに続き、外用剤「ブレポシチニブ」が第2相臨床試験(P2)まで進んだ。

 JAK阻害剤の経口剤は日本イーライリリーの「オルミエント」、外用剤は日本たばこ産業の「コレクチム」が先行しているものの、国内で両剤形をともに開発しているのはファイザーのみ。外用剤は局所に塗布できるなど、病態に応じたすみ分けが見込める。

 また円形脱毛症向けの経口剤「リトレシチニブ」も第3相臨床試験(P3)の段階。さらにブレポシチニブは外用剤だけでなく経口剤としても開発しており、炎症・免疫領域における後期パイプラインの大半をJAK阻害剤が占めている。

 JAKは炎症にかかわる酵素で複数ある。どれを阻害するかの違いはあるとはいえ、これほど多様なJAK阻害剤を同時開発する企業は珍しい。しかもアブロシチニブ、ブレポシチニブ、リトレシチニブの3剤とも自社創製だ。

 ファイザーは2013年発売の関節リウマチ薬「ゼルヤンツ」でJAK阻害剤の時代を切り開いたものの、ここ数年でリリーやアステラス製薬らが追走。今やリウマチでのJAK阻害剤の新規性は薄れてきた。

 そこで「強みを生かすべく、皮膚科という新しいチャレンジに取り組んだ」(同)。アトピー性皮膚炎に炎症性サイトカインが影響していることは分かっており、そのシグナル伝達を遮断するJAK阻害剤が有効な可能性はもともと示唆されていた。

 皮膚科の専門医は「JAK阻害剤のような分子標的薬をアトピー性皮膚炎に使うのは、以前なら抵抗を感じたはず。リウマチなどほかの疾患で実績があることは臨床現場にとって安心だ」と語る。

 アトピー性皮膚炎は小児患者が多いが、アブロシチニブの治験は12歳以上が対象。承認時に患者の範囲が限られる可能性が高い。本領発揮にはさらなる年少者への適応拡大も課題だ。