デルマニアのブログ

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とある皮膚科医のブログです。

悪性黒色腫への個別化mRNAワクチン+ペムブロリズマブの効果は?(KEYNOTE-942)/Lancet

 完全切除後の高リスク悪性黒色腫に対する術後補助療法として、個別化mRNAがんワクチンmRNA-4157(V940)とペムブロリズマブの併用療法は、ペムブロリズマブ単剤療法と比較し、無再発生存期間(RFS)を延長し、安全性プロファイルは管理可能であった。米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center at NYU Langone HealthのJeffrey S. Weber氏らが、米国およびオーストラリアで実施した第IIb相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-942試験」の結果を報告した。免疫チェックポイント阻害薬は、切除後のIIB~IV期悪性黒色腫に対する標準的な術後補助療法であるが、多くの患者が再発する。mRNA-4157は、脂質ナノ粒子製剤中に最大34個のネオアンチゲンをコードするmRNAを含む個別化ワクチンで、個人の腫瘍mutanomeとヒト白血球抗原(HLA)タイプに特異的に合わせて調製されている。著者は、「今回の結果は、mRNAに基づく個別化ネオアンチゲン療法の術後補助療法における有益性を示すエビデンスとなる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月18日号掲載の報告。

主要評価項目は無再発生存期間(RFS)

 研究グループは、切除可能なIIIB~IV期(IIIB期は前回の手術から3ヵ月以内の再発のみ適格)の悪性黒色腫を有する18歳以上で、ペムブロリズマブ初回投与の13週間前までに完全切除術を受け、試験開始時に臨床的および放射線学的に無病であり、ECOG PSが0または1の患者を、mRNA-4157+ペムブロリズマブ併用療法(併用療法群)またはペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)に、病期で層別化して2対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。mRNA-4157は1mgを3週間間隔で最大9回筋肉内投与、ペムブロリズマブは200mgを3週間間隔で最大18回静脈内投与した。

 主要評価項目は、ITT集団におけるRFS、副次評価項目は無遠隔転移生存、安全性などであった。

ペムブロリズマブ単剤に対するmRNA-4157併用のハザード比は0.561

 2019年7月18日~2021年9月30日に、157例が併用療法群(107例)および単剤療法群(50例)に割り付けられた。追跡期間中央値は、それぞれ23ヵ月および24ヵ月であった。

 データカットオフ時点(2022年11月14日)で、再発または死亡のイベントは併用療法群で24例(22%)、単剤療法群で20例(40%)に発生し、RFSは併用療法群が単剤療法群と比べて延長し(再発または死亡のハザード比[HR]:0.561、95%信頼区間[CI]:0.309~1.017、両側p=0.053)、18ヵ月RFS率はそれぞれ79%(95%CI:69.0~85.6)、62%(95%CI:46.9~74.3)であった。

 治療関連有害事象の多くはGrare1または2であり、Grare3以上は併用療法群でmRNA-4157関連事象12例(12%)、ペムブロリズマブ関連事象24例(23%)、単剤療法群でペムブロリズマブ関連事象9例(18%)であった。

 有害事象によりペムブロリズマブの投与を中止した患者は、併用療法群で26例(25%)、単剤療法群で9例(18%)であった。免疫関連有害事象は、併用療法群で37例(36%)、単剤療法群で18例(36%)に認められた。

 

 

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GLP-1作動薬で甲状腺がんリスク上昇 RCT 64件のメタ解析

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は2型糖尿病の治療薬として広く使用され、最近では肥満症を適応とする新薬も登場するなど注目を集めているが、以前から甲状腺がんリスクの存在が指摘されている。イタリア・University of FlorenceのGiovanni A. Silverii氏らは、GLP-1受容体作動薬投与と甲状腺がんリスクの関連を検討するため、ランダム化比較試験(RCT) 64件のシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、GLP-1受容体作動薬が中等度のリスク上昇と関連していたとDiabetes Obes Metab2023年11月29日オンライン版)に報告した。

52週以上追跡した全RCTが対象

 GLP-1受容体作動薬に関しては、これまで複数の後ろ向き観察研究において甲状腺がんのリスク上昇が報告されている。今回、Silverii氏らはGLP-1受容体作動薬の使用と甲状腺がんとの関連性を明らかにするため、システマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 解析対象は、GLP-1受容体作動薬の有効性と安全性を18歳以上の患者においてプラセボまたは対照薬との比較により52週以上の追跡で検討した全RCTとした。MEDLINE、EMBASE、Clinicaltrials.gov、Cochrane CENTRAL Databaseで全てのGLP-1受容体作動薬の薬剤名をキーワードとして2023年8月20日までに収載されたRCTを検索した。

 主要評価項目は研究期間中の甲状腺がんの発生率、副次評価項目は甲状腺乳頭がん、甲状腺髄様がん、甲状腺濾胞がん、分化型甲状腺がん全体の発生率とした。

オッズ比1.5のリスク上昇

 対象となったRCTは64件で、GLP-1受容体作動薬投与群は4万6,228例、プラセボまたは対照薬群は3万8,399例だった。64件のうち、2型糖尿病に関するRCTは48件、肥満症は16件だった。使用されたGLP-1受容体作動薬は、リラグルチドが26件、セマグルチドが17件、エキセナチドが16件、デュラグルチドが9件で、対照薬はプラセボが36件、インスリンが12件、DPP-4阻害薬が6件、スルホニル尿素(SU)薬が4件、SGLT2阻害薬が3件、無治療が2件、治験責任医師が選択した治療薬が1件だった。

 追跡期間中央値は53週、年齢中央値は56歳、BMI中央値は32、女性の割合の中央値は50.3%だった。

 64件の研究のうち、26件(6万9,909例)で少なくとも1例の甲状腺がんの発生が報告された。特定された甲状腺がん86例(GLP-1受容体作動薬群60例、対照群26例)のうち、25例(同19例、6例)が甲状腺乳頭がん、3例(同2例、1例)が甲状腺髄様がん、残りは甲状腺悪性新生物またはがんとして報告された。

 固定効果解析の結果、GLP-1受容体作動薬の投与は甲状腺がんのリスク上昇と有意に関連しており〔Mantel-Haenszelオッズ比(MH-OR)1.52、95%CI 1.01〜2.29、P=0.04、I2=0%〕、脆弱性指数は1で、5年における害必要数は1,349だった。この関連は、104週以上追跡した研究のみを解析し場合も同様だった(同1.76、1.00〜3.12、P=0.05)。

 甲状腺乳頭がん(MH-OR 1.54、95%CI 0.77〜3.06、P=0.22)、甲状腺髄様がん(同1.44、0.23〜9.16、P=0.55)はいずれもGLP-1受容体作動薬との有意な関連は認められなかった。

 以上を踏まえ、Silverii氏は「臨床研究においてGLP-1受容体作動薬は甲状腺がんの相対リスクの中等度の上昇と関連していることが示され、これは最近の観察研究結果と同様であった。この知見の臨床的意味を評価するには、より長期の研究が必要である」と結論している。

開発中の外用PDE4阻害薬、アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬に有望

 軽症~中等症アトピー性皮膚炎または尋常性乾癬患者において、開発中の外用PDE4阻害薬PF-07038124は、忍容性が良好で有効性に優れることが示された。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のLawrence F. Eichenfield氏らが海外第IIa相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬は、外用治療薬についてアンメットニーズが存在する。外用PF-07038124は、オキサボロール骨格を有するPDE4阻害薬で、T細胞ベースアッセイにおいて免疫調節活性が確認されており、IL-4およびIL-13に対する阻害活性を有している。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。

 試験は2020年12月21日~2021年8月18日に、4ヵ国の34施設で行われた(データ解析は2021年12月15日まで)。対象は、軽症~中等症アトピー性皮膚炎(病変が体表面積の5~20%)または尋常性乾癬(体表面積の5~15%)を有する18~70歳の患者とした。対象患者を1対1の割合で、PF-07038124(0.01%外用軟膏)群または溶媒群に無作為に割り付け、1日1回6週間塗布した。

 主要エンドポイントは、アトピー性皮膚炎患者についてはEczema Area and Severity Index(EASI)総スコアのベースラインからの変化率、尋常性乾癬患者についてはPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアのベースラインからの変化で、いずれも6週時点で評価した。安全性は、治療中に発現した有害事象や塗布部位の反応などを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・全体で104例が無作為化された(年齢[平均値±標準偏差]:43.0±15.4歳、女性:55例[52.9%]、アジア人:4例[3.8%]、黒人:13例[12.5%]、白人:87例[83.7%])。
・内訳は、アトピー性皮膚炎患者70例、尋常性乾癬患者34例であった。
・ベースラインの患者背景は、概してバランスが取れていた。
・6週時点において、PF-07038124群は溶媒群と比較して、EASI総スコアのベースラインからの変化率(最小二乗平均値:-74.9% vs.-35.5%、群間差:-39.4%[90%信頼区間[CI]:-58.8~-20.1]、p<0.001)が有意に改善した。
・同様に、PASIスコアのベースラインからの変化(-4.8 vs.0.1、群間差:-4.9[90%CI:-7.0~-2.8]、p<0.001)もPF-07038124群が有意に改善した。
・治療中に有害事象が発現した患者数は、アトピー性皮膚炎患者の治療群間(PF-07038124群9例[25.0%]vs.溶媒群9例[26.5%])、尋常性乾癬患者の治療群間(3例[17.6%]vs.6例[35.3%])のいずれも同等であった。
・PF-07038124の塗布部位反応は報告されなかった。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

リンヴォック錠で日本リウマチ学会が注意喚起 全例市販後調査でニューモシスチス・イロベチイ肺炎および間質性肺炎の死亡例

 日本リウマチ学会はこのほど、関節リウマチ患者における「ウパダシチニブ」(販売名:リンヴォック錠)使用中のニューモシスチス肺炎PCP)および間質性肺炎(IP)発症に関して注意喚起する文書をホームページに掲載した。市販後全例調査により重篤有害事象および複数の死亡例に関する報告があったとし、適正使用の遵守を改めて呼びかけている。

 同調査(対象症例2732例)で、24週間の観察期間中に重篤有害事象として報告されたPCPは11例(0.40%)、IPは11例(0.40%)だった。さらに、登録のみに移行した2021年6月以降の自発報告では、23年8月15日時点でPCPを発現した症例は14例、IPを発現した症例は10例。そのうち、PCPによる死亡が5例、IPによる死亡が6例確認されたという。

 同学会は、「全例市販後調査のためのウパダシチニブ適正使用ガイド」でも触れられていたPCPおよびIPに関する注意事項を改めて周知するとともに、「必要に応じて予防療法を講じること」「疑わしい症状が出現した際は早期に精査を行うこと」としている。

食物アレルギーの経口免疫療法 「超微量」から食べると安全で効果的

食物アレルギーの原因になる食物を毎日少しずつ取ることで、食べられるようにする「経口免疫療法」。アナフィラキシーと呼ばれる重篤な副反応が起こる場合があるため、日本では一般診療として推奨されていないが、国立成育医療研究センターのチームが「安全で効果の高い方法」を開発した。専門誌に論文が発表された。

 食物アレルギーを発症するのは小さな子どもが多い。小学生になるまでに自然に治る人が多いが、なかなか治らなかったり、ごく微量でも激しい症状が出たりする人もおり、安全で有効な治療法が模索されていた。

 また、かつては原因となる食物を一切取らない「完全除去」しか対処法がなかったが、近年はその弊害が指摘されている。そこで、医師の指導の下、食物を繰り返し食べ、アレルギーを起こさない状態(免疫寛容)に持っていく経口免疫療法が注目されている。

 2021年に改定された食物アレルギー診療ガイドラインでは「完全除去の継続と比較すると有用」と明記された。一方でアナフィラキシーが起こるケースが後を絶たず、安全に実施できる方法が模索されていた。

 研究チームは、鶏卵または牛乳の食物アレルギーがあると診断された4~18歳の子ども217人を対象に、アレルギーを起こさずに食べられる最大の量(閾値(いきち))をもとに五つの方法を試し、治療経過を分析した。

 その結果、閾値の1万分の1(A群)、100分の1(B群)、10分の1(C群)から食べ始め、10分の1の量で維持した場合は、7~9割の人が食べられる量の閾値が上がったことが確認できた。副反応は1~3割が経験したが、いずれも口がかゆくなるなどの軽い症状で、アナフィラキシーはなかった。

■5つの方法の中で最も安全で効果的な方法は…

 中でもB群は副反応が14%と最も少なく、食べられる量が増えた割合は88%と最も多かった。治療前は、平均で全卵3グラムほど、牛乳は1ミリリットルほどしか取れなかったが、その2倍以上を取れるようになった。

 一方、閾値に近い量(D群)から食べ始め、量を増やしていく従来の方法だと、食べられる量が増えた人は5割超いたが、7割が副反応を経験し、15%はアナフィラキシーだった。完全除去(E群)では、食べられる量が増えた人は3割弱で、もともとの閾値より減った人も多かった。

 これらの結果から、「閾値の100分の1量で食べ始め、10分の1量で維持する方法が最も安全で効果が高い」と結論を出した。

 同センターの大矢幸弘アレルギーセンター長は「20年ほど研究し、やっと安全に行える方法を確認できた」と話す。

 経口免疫療法を行う際には、アトピー性皮膚炎やぜんそくなど、合併しているアレルギー疾患を十分にケアしながら行うことも大切だ。また、アレルギーの治療に精通した専門医がいる医療機関で、救急対応に十分配慮して行うことがのぞましいという。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/cea.14400

 

胃酸抑制薬の長期使用が酒皶発症に関連 韓国・国民健康保険請求データの解析

 韓国・Kangwon National University HospitalのJi Hyun Kim氏らは、同国の国民健康保険サービス・全国サンプルコホート(NHIS-NSC)のデータを用い、胃酸抑制薬として広く用いられているプロトンポンプ阻害薬PPI)およびH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)と酒皶との関連を後ろ向きに検討。その結果、これらの胃酸抑制薬の使用期間が長くなるほど酒皶の発症と強く関連したとJ Korean Med Sci2023; 38: e402)に発表した。

1日規定量120日超の使用で酒皶のオッズ比1.55

 胃酸抑制薬を長期間使用すると、腸内pHの変化により腸内細菌叢が乱れる恐れがある。腸内細菌叢の乱れは小腸内細菌異常増殖症やClostridioides difficile感染症などの消化管疾患に関連することが知られており、最近の研究では炎症性皮膚疾患との関連も報告されている。

 Kim氏らは今回、NHIS-NSCの2001~13年のデータを用い、韓国人集団における胃酸抑制薬の使用と炎症性皮膚疾患である酒皶との関連を検討した。対象は、2003年以降に胃酸抑制薬(PPIまたはH2ブロッカー)を90日超にわたり処方された20歳以上の上部消化管疾患の患者。胃酸抑制薬の使用開始から1年超経過後に酒皶と診断された症例1例に対し、年齢、性、収入をマッチングした酒皶を発症していない対照4例を選出し、計3,460例(症例群692例、対照群2,768例)を解析に組み入れた。

 ロジスティック回帰分析の結果、胃酸抑制薬の1日規定量(DDD)の使用が30日未満の場合と比べ、30日以上120日以下で酒皶との関連が見られ〔オッズ比(OR)1.43、95%CI 1.19~1.72〕、120日超ではさらに強い関連が見られた(同1.68、1.32~2.13)。交絡因子の調整後も結果は同様で、30日以上120日以下(調整後OR 1.41、95%CI 1.17~1.71)および120日超(同1.55、1.20~2.00)の長期使用は酒皶と関連していた(全てP<0.001)。

農村部居住、併存疾患も有意な危険因子に

 その他の因子では、農村部居住(調整後OR 2.70、95%CI 2.26~3.22、P<0.001)、併存疾患のCharlson Comorbidity Index(CCI)スコア2以上(同1.57、1.21~2.04、P=0.001)が酒皶と有意に関連していた。前者については、農村部居住者は都市部居住者と比べ、酒皶の発症・悪化に関与するとされる日光曝露の頻度が高いことが原因であると考えられた。

 以上の結果から、Kim氏らは「消化管疾患を有する韓国人集団において、H2ブロッカーおよびPPIの使用は酒皶の発症に関連し、発症リスクは用量依存性に上昇することが示された。臨床医は胃酸抑制薬の長期使用に伴う酒皶のリスクに注意すべきである」と結論している。

 また、胃酸抑制薬の使用期間を1年未満に限定した解析でも同様の結果が認められたことから、同氏らは「胃酸抑制薬による腸内細菌叢の乱れは短期間のうちに引き起こされ、長期にわたり持続する可能性が示唆された」と付言している。

尋常性ざ瘡へのisotretinoin、自殺・精神疾患リスクと関連せず

 isotretinoinは、海外では重症の尋常性ざ瘡(にきび)に対して用いられており、本邦では未承認であるが自由診療での処方やインターネット販売で入手が可能である。isotretinoinは、尋常性ざ瘡に対する有効性が示されている一方、自殺やうつ病などさまざまな精神疾患との関連が報告されている。しかし、isotretinoinと精神疾患の関連について、文献によって相反する結果が報告されており、議論の的となっている。そこで、シンガポール国立大学のNicole Kye Wen Tan氏らは、両者の関連を明らかにすることを目的として、システマティック・レビューおよびメタ解析を実施した。その結果、住民レベルではisotretinoin使用と自殺などとの関連はみられず、治療2~4年時点の自殺企図のリスクを低下させる可能性が示された。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年11月29日号掲載の報告。

 2023年1月24日までにPubMed、Embase、Web of Science、Scopusに登録された文献を検索し、isotretinoin使用者における自殺および精神疾患の絶対リスク、相対リスク、リスク因子を報告している無作為化試験および観察研究に関する文献を抽出した。関連データを逆分散加重メタ解析法により統合し、バイアスリスクはNewcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。メタ回帰分析を行い、不均一性はI2統計量で評価した。

 主要アウトカムは、isotretinoin使用者における自殺および精神疾患の絶対リスク(%)、相対リスク(リスク比[RR])、リスク因子であった。

 主な結果は以下のとおり。

・システマティック・レビューにより、合計25研究(162万5,891例)が特定され、そのうち24研究がメタ解析に含まれた。
・全25件が観察研究で、内訳は前向きコホート研究10件、後ろ向きコホート研究13件、ケースクロスオーバー研究1件、ケースコントロール研究1件であった。各研究の対象患者の平均年齢の範囲は16~38歳、男性の割合は0~100%であった。
・1年絶対リスクは、自殺既遂0.07%(95%信頼区間[CI]:0.02~0.31、I2=91%、対象:7研究8コホートの78万6,498例)、自殺企図0.14%(同:0.04~0.49、I2=99%、7研究88万5,925例)、自殺念慮0.47%(同:0.07~3.12、I2=100%、5研究52万773例)、自傷行為0.35%(同:0.29~0.42、I2=0%、2研究3万2,805例)であったのに対し、うつ病は3.83%(同:2.45~5.93、I2=77%、11研究8万485例)であった。
・isotretinoin使用者は、非使用者と比べて自殺企図のリスクが、治療2年時点(RR:0.92、95%CI:0.84~1.00、I2=0%)、3年時点(同:0.86、0.77~0.95、I2=0%)、4年時点(同:0.85、0.72~1.00、I2=23%)のいずれにおいても低い傾向がみられた(いずれも対象は2研究44万9,570例)。
・isotretinoin使用と全精神疾患との関連はみられなかった(RR:1.08、95%CI:0.99~1.19、I2=0%、対象:4研究5万9,247例)。
・試験レベルのメタ回帰分析において、高齢であるほどうつ病の1年絶対リスクが低い傾向にあった。一方、男性は自殺既遂の1年絶対リスクが高い傾向にあった。

 著者は、「今回の所見は心強いものだが、引き続き臨床医は統合的な精神皮膚科ケア(holistic psychodermatologic care)を実践し、isotretinoin治療中に精神的ストレスの徴候がみられないか観察する必要がある」とまとめている。

 

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